夜明けの光
窓の外は深い闇に包まれていた。夜が明ける少し前の時間だ。
倉庫の片隅で、ジャンは目を覚ました。身体の節々が痛み、頭がズンズンと鈍い痛みを放っていた。ここ数日間、ほとんど眠れずにいたせいだろう。慌ただしく立ち上がり、懐中電灯のスイッチを入れた。
「こんな所に隠れてられるのも、もう限界だ」
ジャンは呟いた。逃げ延びて三日が経とうとしていた。最初の一日は、傷の痛みと空腹に耐えるだけで手いっぱいだった。二日目に少し立ち直ったが、外に出る勇気がなかった。鬼と化した彼らに見つかれば、確実に殺される。
ジャンは懐中電灯の明かりで辺りを照らし、倉庫内を歩き始めた。何か出口を見つけなければならない。
棚と棚の間を抜けながら、鉄の扉が視界に入った。施錠されているが、ジャンはすぐに気づいた。内側からは開けられる構造になっている。しかし開けた先は果たして安全なのだろうか。自分を追っている連中の罠かもしれない。
ジャンはしばらく扉から離れた場所で考え込んだ。しかし次第に、時間が無くなってきていることに気づいた。追手が迫ってくる前に決断する必要があった。
ジャンはようやく決心をし、扉に向かって歩み寄った。手にしていた火薬とライターで錠をくずし、ゆっくりと扉を開けた。外は真っ暗だった。懐中電灯を手に、ジャンはその暗闇に飲みこまれるように、倉庫の外へと出た。
暗闇の中を歩きながら、遠くから光が見え始めた。夜が明けようとしているのだ。しかしそれと同時に、チラチラと動く影も目に入ってきた。ジャンの胸が高鳴った。追手の気配だ。
ジャンはすぐに走り始めた。視界の先に見えた建物の影に向かって、全速力で走った。しかし翌刻、銃声が背中につき刺さるように聞こえた。
「くそっ、こっちに来るなよ...!」
ジャンは懐中電灯の明かりで前方を照らし続けた。建物が間近に迫ってきた。ジャンはその扉を蹴り開け、建物の中に飛び込んだ。
部屋の中は明かりが付いていた。工場の事務所のようだった。ジャンは部屋を見渡し、物陰に隠れることにした。
しばらくして、外から気になる音が聞こえた。足音が迫ってくる。ジャンは懐中電灯を手にしっかりと握り締めた。
突然、扉が蹴破られ、大勢の男たちがわらわらと押し入ってきた。ジャンはその気配に体を硬直させた。数人の男たちがこちらを向いた。
「おい、あそこだ!」
ジャンは男たちに気付かれた。躊躇なく銃撃が放たれた。ジャンはすばやく物陰に隠れ、応戦を開始した。銃声が室内に響き渡った。
しかし徐々に、ジャンの体力は失われていった。追手の人数は多すぎた。ついに、ジャンは射殺され、床に崩れ落ちた。
男たちの気配が近づいてきた。ジャンは顔を上げると、目の前に立つ男の顔が見えた。その男が口を開いた。
「お前がジャン・クロジェか?綺麗に始末させてもらうぜ」
男が拳銃を取り出し、ジャンの額に銃口を押し付けた。ジャンはこの男に殺される運命なのだ。だがそこに答えはない。逃げ切ることができなかった自分に対する後悔しか。
だがその刹那、太陽が昇り始めた、ジャンの心に突如、新たな光が満ちた。これほど追い詰められながらも、未だに小さな望みが生きていたのだ。
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