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幼馴染が魔王/勇者でした。  作者: 夕藤さわな
10.団円編

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10-08 それまで勇者様を頼んだぞ。

「大丈夫だ。魔族の長である魔王として、責任をもって魔王城に仕える魔族たちを説得する。安心して避難を……」


「いや、いい」


 きっぱりと言ってラレンは首を横に振った。

 事前に三人で話し合っていたのかもしれない。


「……」


「……」


 いつの間にかラレンの後ろにやってきていたオリーとバラハも同意するように無言で深くうなずいた。


「……でも」


 あいかわらず淡々とした表情だけれど心の中ではおろおろしているのだろう。不安と心配で赤い瞳を揺らすジーを見てオリーとバラハはケラケラと笑ってみせた。


「心配すんなって、ジー」


「ほら、リカをトリモチから解放してあげてください。……これ、ジーが土魔法で作ったものなんですから消すこともできるんですよね?」


 そして、ラレンはと言えば――。


「こっちのことはこっちでどうにかする。魔王に心配されるほど僕たち勇者パーティは落ちぶれちゃいないよ。だから、お前は勇者様を助けることだけ考えろ」


 腰に手を当てて胸を張るとフン! と鼻を鳴らした。

 三人にそう言われてもためらっていたジーだったが、ラレンが足元にワープポータルを出現させるのを見てようやく覚悟を決めたらしい。


「〝我が命に従い、あるべき姿に戻れ。自動泥人形ゴーレム〟」


 ジーがそう唱えるとリカを捕らえていたトリモチも、巨大鏡も、包丁を両手に持ったネコ型ゴーレムたちも、色を失い、ボロボロと崩れてただの土に戻った。きっと矢を射た兵士を追いかけていった口裂け令嬢もどこかで土に戻っていることだろう。


「魔王《お前》のおかげで兵士にも一般の人々にも大きな被害は出なかった。勇者様が大量虐殺者にならずに済んだんだ」


 軽々と横抱きにしてリカを抱えあげるジーをラレンは真っ直ぐに見つめた。


「勇者様は僕の憧れで、崇め奉る存在で、推しだ。推しの安全と笑顔はどんなことをしても守らなきゃいけない。だから、僕はここに残ってこの国に広がっただろう勇者様への誤解を解く。それが勇者様の安全を守るために必要なことだから」


 ジーの腕の中でリカは青白い顔で浅く荒い呼吸を繰り返している。リカの冷たい頬をラレンはそっと指でなでた。

 そして――。


「あと、推しの笑顔を守るためには推しの推しの安全と笑顔も守る必要があるからな」


 ぼそりと、ぶっきらぼうな調子でつぶやくとラレンはジーをじろりとにらんで叫んだ。


「だから、勇者様への誤解を解くついでに……つ・い・で・に! この国や人族の世界に広がっている魔王(お前)や魔族への誤解も解いてやる!」


「……ラレン」


「お前のためじゃないからな! 魔王領に避難する勇者様の安全を確保するため! 幼馴染で親友のお前のこととなると無茶しがちな推しの安全と笑顔を守るためだからな!」


「ラレン……!」


「だぁぁぁあああーーー! 涙ぐむな、目を潤ませるなぁぁぁあああーーー!!!」 


 あいかわらずの淡々とした表情だけれど心の中ではギャン泣きしているのだろう、ジーの頭をオリーはくしゃくしゃとなでまわす。バラハはと言えばあぶら汗の浮かぶリカの額をそっとぬぐった。

 そして、ラレンは――。


「魔族に対する人族の誤解が解けたら、そのときはジーキルさんが言っていたみたいに……何百年だか前みたいに、人族と魔族が交流できるように交渉しに行くよ。勇者様に――推しに会いに行けるようにするために。……ついでにお前にも会いに行ってやらないこともない!」


 フン! と鼻を鳴らしてそっぽを向いたあと、くすりと微笑んで手を差し出した。


「……待ってろ、魔王」


 魔族の長である魔王に――ジーに向かって。


「ああ、待っているぞ、ラレン」


 軽々と片腕でリカを抱きかかえたまま、ジーはラレンの手を取った。


「だから、それまで勇者様を頼んだぞ」


 前衛職ではないラレンなりに力いっぱい、にぎりしめたのだろう手をにぎり返してジーはこくりとうなずいた。あいかわらず淡々とした表情だけれど心の中では満面の笑顔を浮かべているのだろう。


「必ず、守る」


 そう言い残してジーはワープポータルへと飛び込んだ。あっという間に光の中に消えたジーとリカの後ろ姿を見送ってラレンは握手を交わした右手をそっと胸に抱きしめた。


「ついでに……お前も元気でいろよ、魔王」


 ぽつりとつぶやくラレンの金色の髪をオリーはくしゃくしゃとなでまわし、バラハは肩をそっとなでたのだった。

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