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幼馴染が魔王/勇者でした。  作者: 夕藤さわな
10.団円編

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10-07 魔王城を〝覚えて〟いたのか。

「しっかりしろ、クソ魔王!」


 スパーン! と頭をはたいたラレンは仁王立ちでジーをにらみつけた。

 あいかわらず淡々とした表情をしているけれど心の中では大パニックを起こしているのだろう。赤い瞳を不安げに揺らしているジーを見て、ジーがパニックを起こしている原因のリカの様子を見て、ラレンは唇を噛んだ。

 でも――。


「おろおろおろおろしやがって! それでも魔王か!」


 フン! と鼻を鳴らすと杖をにぎりしめて掲げた。


「ヒール! ヒール、ヒール、ヒーーール!!!」


 治癒魔法を連発して魔力切れを起こしたのだろう。リカの攻撃でボコボコのボロボロになっている教会の床に座り込んだラレンは肩で息をしながらジーをにらみつけた。


「ほら、見ろ! ヒールで傷はふさがった! 血も止まった! 医者に診せないといけない状態なのは変わらないけど、とにかく一旦、落ち着け! ……わかったら返事!」


「あ、ああ……えっと……はい!」


 ラレンに叱られてジーは反射的に背筋を伸ばした。

 あいかわらずの淡々とした表情だけれどリカの右腕の傷と顔色が良くなっているのを見て心の中ではほっと安堵の笑みをもらしているのだろう。ジーの肩から力が抜けていくのを見てラレンはフン! と再び鼻を鳴らした。

 そして――。


「おい、魔王。魔族に勇者様のケガを治せるくらい腕のいい医者はいるか」


 グイッと顔を近付けるとジーの赤い瞳を凝視して尋ねた。にらむような目で見つめられてジーは右に左にと首をかしげながら頭をフル回転させる。


「魔王城の医務室には魔王領で一、二を争う腕のいい医者がそろっている……と、ジーキルから聞いている。ない腕を生やすことはできないがリカの右腕の傷をきれいにふさぎ、体力を回復させるには十分な腕前だ……と思う」


「よし。それなら魔王城への空間転移ワープポータルを開いてやるから今すぐ勇者様を連れて行け」


 そうラレンに言われてジーは目を丸くした。 


「魔王城を〝覚えて〟いたのか」


 空間転移ワープポータルは魔力を扱う職業の者たちが覚えられるスキルの一つ。事前に特定の場所を〝覚えて〟おくと、その場所につながる〝扉〟を開くことができるスキルだ。

 覚えておける場所は術者の魔力量やスキルとの相性で変わってくるがバラハは三か所、ラレンは二か所を覚えることができる。


 そう――。

 ラレンは二か所しか覚えることができない。それなのに魔王であるジーや魔族を快く思っていない様子だったラレンが貴重な一枠ひとわくを使って魔王城を〝覚えて〟いたことにジーは目を丸くしたのだ。


「こんな状況でものんきなヤツだな。魔族を滅ぼそうとしている勇者パーティの一人として敵の本拠地を〝覚えて〟おいただけだって考えないのかよ」


「あ……」


「少しも考えてなかったんだな」


 ジーの反応を見てラレンは苦笑いする。ジーはと言えばラレンが苦笑いしている理由がわからないらしい。不思議そうに首をかしげていたけれど、〝そんなことよりも……〟とつぶやいて身を乗り出した。


「わかった。リカを連れて魔王城に避難しよう。ラレンも、オリーとバラハもいっしょに来るだろう?」


 ジーを絞首台から助け出すためにリカに協力しているところを多くの人たちに見られている。人族を滅ぼすと叫んで王都の街を破壊してまわったリカの仲間だと知られている以上、オリーとバラハ、ラレンも危険にさらされる。ラレンの父と兄であるアルマリア神聖帝国現国王も第一、第二王子も三人を捕らえて口封じに殺そうとしているのだ。

 王都に三人を置いていくという選択肢はジーの頭にはなかった。


 でも――。


「大丈夫だ。魔族の長である魔王として、責任をもって魔王城に仕える魔族たちを説得する。安心して避難を……」


「いや、いい」


 きっぱりと言ってラレンは首を横に振ったのだった。

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