表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染が魔王/勇者でした。  作者: 夕藤さわな
10.団円編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/94

10-06 しっかりしろ、クソ魔王!

「早く止血しないとリカが死んでしまう! そんなことよりも先に治療をしないとリカが……リカが……!」


「そんな……こと……?」


 ジーの言葉をオウム返しにしてリカはポカンと口を開けた。


 リカが今、やろうとしていることは王都の破壊。王都にいる人々の大量虐殺。いずれは人族すべてを虐殺しようとしているのだ。

 それをジーは〝そんなこと〟と言った。言い切った。〝そんなこと〟と言い切ってリカの右腕へと――二の腕の途中から千切れてなくなってしまった腕へと手を伸ばした。

 ラレンが魔力切れを起こすまでかけまくった治癒魔法ヒールのおかげで一度はふさがりかけた傷がまた開いていた。


「……僕はジー君から左目を奪ったヤツに腹を立ててるよ」


 あいかわらず淡々とした表情をしているけれど血がにじむ右腕におろおろとしているらしいジーを見てリカはぽつりとつぶやいた。


「困っているジー君を助けず、ジー君からお母さんを奪ったヤツらに腹が立つ」


 リカの右腕に手を伸ばし、触れようとしては引っ込め、それでもまた伸ばし……と、ジーはおろおろし続けている。


「ジー君を殺そうとして、僕からジー君を奪おうとしたヤツらに腹が立つ。ジー君は腹が立たないの? 僕の右腕がこんな風になったのはアイツらのせいなのに腹を立ててはくれないの?」


「腹を……? いや、ちょ、ちょっと待ってくれ……それよりも先にリカの腕の傷を……!」


 おろおろとさまよう手と動揺に揺れるジーの瞳を見返してリカは困ったように微笑んだ。ふっと息を吐き出して、笑っているようにもため息をついているようにも聞こえる声をもらしたあと――。


「そういえば、そうだったね。……ジー君は、そういう……性格……だった」


「リカ!」


 にぎりしめていた神剣が光を失った。


「子供のときも、そう……だったよね」


 リカの顔色はみるみる青白くなっていく。それを見てジーの顔色もみるみるうちに青ざめた。


「いじめっ子たちにいじめ、られて……ジー君がケガをする、と……僕は怒って……」


「リカ、もう喋るな」


「僕、が……ケガをすると……ジー君は、心配……するん、だ……」


「リカ!」


 息が切れ、目の焦点が合わない。緊張の糸が切れて大量出血の影響が出始めたのだろう。


「僕は、何よりも……真っ先に……怒り、を……覚え、る……。ジー君、は……何より、も……真っ先に……僕の、心配を……して、くれる……。自分の、じゃなくて……僕の……」


「リカ!」


 左手をにぎりしめ、目に涙を浮かべ、怒ったように、叱りつけるように名前を呼ぶジーを見上げてリカはくすりと微笑んだ。まぶしそうに、あるいはうれしそうに金色の瞳を細める。


「ジー君、の……そういうとこ……が、僕に、とっては……勇者で……憧れ、だった……んだ……。……ずっと……ずっ、と……そういう、風に……なりたい、って……、……」


「リカ? ……リカ!?」


 重たそうにまばたきを繰り返していたリカの瞳はついに閉じたまま、開かなくなった。言葉も途切れ、名前を呼んでも、にぎりしめていた左手を強く揺さぶってもなんの反応も返ってこなくなった。


「リカ……リカ……リカ……!」


 あいかわらず淡々とした表情をしているけれど、心の中ではすっかりパニックを起こしてしまっているらしい。リカの手をにぎりしめ、ただ名前を呼び続けるジーの頭を――。


「しっかりしろ、クソ魔王!」


 ラレンはスパーン! とはたいたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ