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幼馴染が魔王/勇者でした。  作者: 夕藤さわな
09.処刑編

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09-09 人族を守るため?

 兵士や群衆に広がる困惑や悲しみ、落胆や絶望を察したのはラレンだけではなかったらしい。


「女神アルマリアから加護を授けられていると言っても勇者様も人の子。完璧なわけじゃない。だから、仲間とともに旅をしていたんだ。一人ではなく、仲間とともに」


 神剣をにぎりしめた左腕をだらりと垂らして青白い顔をしているリカを真っ直ぐに見つめてルグは落ち着いた調子だがよく通る声で言った。


「……人の子?」


 リカがぼそりとつぶやく。

 リカは人族と魔族のハーフだ。半分は人族の血を引いているけれど、もう半分は魔族の血を引いている。第二王子であるルグはそれを知っているはずなのにあえて〝人の子〟と言った。その事実にリカは顔をしかめ、不快感と不信感をあらわにした。


「みんなも子供の頃に読み聞かせてもらっただろう。〝ネヌシボラ平野の戦い〟。あの話にも出て来るじゃないか。魔族は美しい姿で誘惑し、魅了の呪いをかけ、兵士の生気を奪い、同士討ちをさせるって」


 リカの表情に気が付いていながらルグは知らぬふりで話を続ける。


「勇者様も勇者パーティの皆さんもそこの魔族に魅了の呪いをかけられて利用されているんだ。できることなら呪いを解いて勇者様たちを助けたいところだけど……王宮魔術師にも魔族がかけた魅了の呪いを解ける者はいない」


 そう言ってルグは暗い表情で肩を落としてみせた。でも、覚悟を決めたかのようにゆっくりと顔をあげるとあいかわらず淡々とした表情をしているけれど心の中ではおろおろしているジーに向き直った。


「そこの魔族と勇者様を含む勇者パーティの四名を捕らえよ。生死は問わない。魔族は改めて絞首刑に処し、死体が腐り落ちて骨になるまでつるす。そして、勇者パーティの方々は――」


 ルグはジーからリカとオリー、バラハ、そしてラレンへと顔を向けるとよく通る声で宣言した。


「呪いを解くことができない以上、殺すしかない」


「そんな……! 勇者様も僕たちは魅了の呪いになんてかかっていません! 魔族は――少なくとも魔王コイツは人族を滅ぼそうともしていない! それなのに、どうしてそんなことを……!」


 ラレンからすればルグの言葉にびっくりして思わず口をついて出ただけだ。

 でも――。


「ダメだ、ルグ様の言う通りだ」


「勇者様もお仲間様も魔族の魅了の呪いにすっかりかかっちまってる」


「そんな……!」


 兵士や群衆からもれた落胆のため息にラレンは青ざめた。


「勇者様にまで魅了の呪いをかけ、手駒として利用しようとするなんて……」


「魔族も魔王もなんて狡猾なんだ。なんて怖ろしいんだ」


「もしも、ここで魔族を逃がしたら私たちも魅了の呪いをかけられて手駒にされてしまうかもしれないってこと?」


「女神アルマリアのに加護を受けた勇者様でもダメだったんだ。俺らなんて簡単に呪いをかけられていいように使われちまう。それか、面白半分に殺されちまうに違いない」


 兵士や群衆の視線がゆっくりとジーに、そしてジーをかばうように立つリカに集まっていく。殺意と狂気が混じる怯えた目にオリーとバラハ、ラレンは戸惑いながらも斧と杖を構えた。


「恐れるな! 女神アルマリアが我らを見捨てるはずがない! いずれまた、勇者となるべき者が現れれば人族を守るため、魔族を滅ぼすために加護を授けてくださるはずだ! そのときまで我ら自身の手で魔族から家族や友人を守るんだ!」


「……っ」


 ジーは剣を高く掲げて叫ぶルグと、それに応えるように雄たけびをあげる兵士や群衆の圧に怯えてあいかわらず淡々とした表情のまま凍り付いている。

 そして、リカは――。


「人族を守るため?」


 それらしいことを言って兵士や群衆を扇動しようとするルグを鼻で笑いながら冷ややかな声で言った。


「〝人族を守るために神剣を振るえ、力を使え〟なんてアルマリアは言わなかったですよ」


 と――。

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