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幼馴染が魔王/勇者でした。  作者: 夕藤さわな
09.処刑編

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09-08 だけど……魔王は……。

 リカとオリーたちの手によって絞首台からジーが奪還された後。

 ルグが教会に現れるよりも少し前。


「あの中で王都に一番、詳しいのはラレンだ」


 アルマリア神聖帝国現国王である父の執務室で第一王子であるリレマーはそう言った。後ろ手に組んで話をする兄をソファに腰かける第二王子のルグは黙って見上げた。その手は無意識に腰に差した剣の柄をなでている。


「戦士様と魔法使い様は魔王領に一番近い我が国最果ての村の出身。勇者様も王都よりも魔王領に近い田舎の出身。魔王にいたっては論外。王都のどこかに隠れているとすれば、その隠れ先はラレンが提案する可能性が高い。そして――」


 リレマーの目配せにルグはこくりとうなずいて答えた。


「勇者様の神剣、戦士様の斧、魔法使い様とラレンの杖。全員の武器に王宮魔術師に命じて空間魔法をかけてある。王都を離れればすぐに術者が気が付くし、報告がある。つまり――」


「ラレンたちはまだ王都から出ていない……ということになるかと思います、陛下」


 リレマーの言葉の後半はルグに向けたものではない。広い執務室の奥に置かれた大きな執務席にゆったりと腰かけ、猛禽類を思わせる鋭い眼光を向けている父親に対してのものだ。


「それならば、魔王と勇者パーティの面々が――ラレンが王都のどこに隠れているか容易に推理できます」


「んじゃあ、俺はリレマー兄様が推理した場所に兵士たちを連れて行ってきますね」


 背筋を伸ばし、父親譲りの青い瞳で真っ直ぐに見つめる二人の息子をアルマリア神聖帝国国王は静かに見返した。


 そして、今――教会。


「リレマー兄様の予想的中」


 木の扉を蹴破って古く寂れた教会へを押し入ったルグを前にリカは残っている左腕をあげ、手のひらを天井に向けた。


 絞首台の落とし戸から落ちようとしているジーを助けるために手放したきり。拾う暇も探す暇もなくてリカが女神アルマリアから授けられた神剣は行方知れずになっていた。


「……来い、神剣」


 その神剣をリカは冷ややかな声で呼んだ――瞬間。


「……!」


 細身の白い剣が神々しいほどの光を放ちながらリカの頭上に現れた。ルグの後ろで剣や槍を構えている兵士たちが息を呑む。


 アルマリア神聖帝国の国民は信心深い。女神アルマリアを愛し、信仰している。

 だから、女神アルマリアと同じ銀色の髪と金色の瞳を持ち、女神アルマリアから加護と神剣を授けられたとされるリカのことも勇者として信頼し、崇拝した。

 その容姿から魔族の血を引いていることは容易たやすく想像できる。警戒されそうなものだが、それでも女神アルマリアへの信仰が勝ってリカを勇者として崇拝する空気、妄信する空気ができあがったのだ。

 神々しいほどの光を放ち、ゆっくりと教会の天井から降りてくる神剣をつかみ、女神アルマリアの像の前で冷ややかな怒りの表情を浮かべるリカに武器を向けることにためらいや恐れを抱くのも当然のこと。


 そして、それは兵士たちの後ろ、教会の外で包丁やくわ、木を切るための斧なんかを構えている群衆も同じ。彼ら彼女らは兵士たちのすき間からのぞき見える光景に息を呑んだ。

 同時に――。


「どうして……」


「どうして勇者様が魔族を助けたりするの」


「女神アルマリアから加護を授けられ、魔族を滅ぼし、人族を守ってくださるはずの勇者様がどうして……」


 魔族であるジーを背中にかばい、ルグと兵士、さらにはその後ろに立つ群衆を怒りに満ちた目で見つめるリカの姿に困惑し、嘆きの声をあげた。

 自分たちを取り囲む人々の表情が困惑や悲しみ、落胆や絶望に変わるのを見てラレンは杖をぎゅっとにぎりしめた。

 魔王城にたどり着き、魔王と対峙し、いざ最終決戦というときになって神剣をおっ放り出したリカを見たときの自分と同じ。目の前にいる魔王は幼馴染で親友だから戦わないと宣言したリカを前に困惑し、落胆した自分と同じに見えた。


「……でも」


 たった数日ではあるけれどいっしょに旅をしたジーの顔をちらっと見てラレンは唇を噛む。


「だけど……魔王コイツは……」

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