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幼馴染が魔王/勇者でした。  作者: 夕藤さわな
09.処刑編

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09-06 行かない方がいい。

「細い路地を曲がりに曲がって追手をまくのは常套手段でしょう。見通しのいい大通りを真っ直ぐに突っ走るなんて筋肉バカですか、オリー。……あ、筋肉バカでしたね。まごうことなく筋肉バカでしたね!」


「筋肉バカ、筋肉バカって連呼するなよ、バラハ。悲しくなってくるだろ」


 腰に手をあてて怒るバラハを前にオリーはガックリと肩を落とした。

 ここは王都の中央にあるさびれた教会だ。絞首台のあった西の広場からはちょっと離れたところに建っている。かつては多くの人が訪れ、女神アルマリアに祈りを捧げていたけれど、近くに新しくて立派な教会が建って以来、この古い教会を訪れる人は少なくなった。

 近くの教会から朝早くに掃除をしに来る者がいる以外は誰も訪れない場所だ。


 古くはあるがしっかりとした作りの長椅子がずらりと並んでいる。その一つに横たえられたリカは目を閉じたまま。


「ヒール……ヒール、ヒール……!」


 リカの枕元に立つラレンは杖をにぎりしめてさっきからずっと回復魔法を唱えている。ジーは床にひざをつき、手をにぎりしめてリカの青白い顔を見つめている。あいかわらず淡々とした表情をしているけれど心の中ではおろおろしているのだろう。赤い瞳が不安げに揺れていた。


「……傷口はふさいだから、すぐに死ぬようなことは……ないと思うんだけど」


「大丈夫か、ラレン」


 杖をにぎりしめたまま、ラレンが床に座り込んだのは魔力切れを起こしたからだ。表情には出ないけれど心配しているらしいジーにラレンは大丈夫だと言うようにひらりと手を振ってみせた。


「切られた腕があればくっつけられたかもしれないのに」


「……すまない」


「今から探しに行ってくるか?」


「やめてください、オリー。ジーもです」


 ラレンにじろりとにらまれて肩を落とすジーと、もうしわけなさそうに眉を下げて尋ねるオリーをバラハはあわてて止めた。


「広場に戻るのは危険です。というか、ここに長居するのも王都に長居するのも危険だと思います」


「それなら俺たちの故郷に一旦、避難するか?」


「それもやめておいた方がいいと思う」


 オリーの提案をラレンは力ない声で否定した。


「父様も兄様たちも僕たちの口を封じるつもりで動いてた。僕は幽閉だけで済んだかもしれないけど魔王コイツのことは完全に殺す気だったし、オリーやバラハ、勇者様のことだってどうするつもりだったのか」


 魔力切れだけが力ない声の理由ではないらしい。うつむいて今にも泣き出しそうな顔になるラレンの金色の髪をオリーは黙ってくしゃくしゃとなでまわした。いつもならオリーの手を払いのけて怒鳴るところだけどその気力もないらしい。


「僕たちが逃げ込むことで村の人たちも口封じに殺される可能性がある。行かない方がいい」


 ラレンの言葉にえり首をガリガリとかいてオリーはため息をついた。


「……そうか、わかった」


「かと言って、このままここにいるというわけにもいかないでしょう。これだけの大ケガでは回復魔法ヒールだって応急手当程度にしかならないでしょうし、ちゃんとした医者にリカを診せないと」


「それは……」


「うーん、どうしたもんかぁ」


 腕組みをし、眉間にしわを寄せて考え込むバラハとラレン、オリーの顔をジーはあいかわらずの淡々とした表情で見上げた。心の中ではおろおろしているのだろう。


「オリー、バラハ……ラレン……それなら……」


 手を伸ばしたり引っ込めたり、また手を伸ばしたりして何か言いかけていたジーだったが――。


「ジー……君……?」


 かすれた弱々しい声にハッと赤い瞳を見開くとにぎっていた手を強くにぎり直して叫んだ。


「リカ……!」


 と――。

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