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幼馴染が魔王/勇者でした。  作者: 夕藤さわな
09.処刑編

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09-04 約束、した……もの……。

「足だ! 足をつかんで引きずりおろせ! 体重をかけて首を絞めちまえ!」


 誰かの怒鳴り声を合図に群衆が絞首台へと駆け出す。宙にぶらりとぶら下がっているジーの足に次から次へとしがみつく。


「……!」


「ジーく……っ」


 ジーに引きずられるようにしてリカの体もズリズリと落ちて行く。脇が落とし戸のふちに脇がかかってそこで踏みとどまったけれど、これ以上、引きずり下ろされないようにするのが精いっぱいでジーを引っ張り上げるどころではなくなってしまった。

 落とし戸をのぞきこんで見える光景に背筋がゾクリとする。引きずり下ろそうとジーにしがみつく群衆の顔、顔、顔。すき間なく、みっちりと見える憎悪と殺意をあらわにした顔たちに吐き気をもよおしていたリカだったがその表情が一変した。


「う……ぁぁぁぁああああ~~~っ!!!」


 処刑執行人がリカの上腕部目がけて斧を振り下ろしたのだ。二度、三度と振り下ろされる斧にリカの顔が苦痛に歪む。


「……っ」


 血しぶきを顔面に受けてジーはのどを引きつらせて声にならない悲鳴をあげた。

 リカの血だ。着ている服を赤く染め、リカの腕を伝って落ちてくる血。処刑執行人が振り上げ、振り下ろす斧から飛ぶ血。皮膚が、肉が、腱が、骨が斧で切られ、砕かれ、ジーとジーを引きずり下ろそうとする群衆の重みで千切れ、折れる音がする。

 音と光景に目を見開いたまま気を失いそうになるジーだったけれど血が出るほど強く唇を噛んでどうにか踏みとどまる。


「リカ、私のことはいい! 手を離せ!」


「……イヤ、だ」


「ダメだ、離せ! このままではリカの腕が……リカ自身が……!」


 大量に血を失って死んでしまうかもしれない。

 ジーは今にもどこかに飛んで行ってしまいそうな意識のしっぽをどうにかこうにかふんづかまえてリカに向かって怒鳴るように言った。物静かな幼馴染で親友の大声に目を丸くしたリカだったけれど、すぐに微笑みを浮かべると首を横に振った。


「ジー、君が……死んじゃ、うって、わかって……て……僕が、手を……離すと、……っ、思う……?」


「リカ……!」


「離さない……約束、した……もの……絶対に、この手を……離したり、は……」


「リカ!」


 物腰が柔らかそうに見えて実は頑固な幼馴染で親友の返事にジーは怒鳴った。だけど、それ以上、リカを怒ることも説得することもできなかった。

 なぜなら――。


「~~~~~っ!!!」


 リカが痛みに声にならない悲鳴をあげたからだ。

 年かさの処刑執行人が再び振り下ろした斧のせいか、ジーの足にしがみついて引っ張る群衆のせいか。リカの右の袖が肩口から破れてジーの体がガクッと落ちた。

 ジーの二の腕をつかんでいたリカの両手のうち、左手は重みに耐えきれずに爪でひっかき傷を作りながら離れていってしまった。でも、リカの右手はジーの二の腕をつかんだまま離れない。腕の長さを考えるとあり得ないほどに離れても――離れない。

 その意味に気が付いた瞬間――。


「……リ、カ……? リカぁぁぁあああ……!!!」

 

 ジーは絶叫していた。

 そして――。


「ジー……くぅぅぅうううーーーん!!!」


 リカもまた絶叫した。縄がピン! と張り、ジーの首に食い込むのが見えたから。このままでは窒息してジーが死んでしまうから。

 落とし戸から身を乗り出して残った左腕をジーへと伸ばそうとしたリカは――。


「〝全能力強化〟!」


「〝狂戦士化バーサーク〟!」


「〝歌い叫べ、風鶏かぜどり〟!」


 聞き覚えのある声にハッと目を見開き――。


「……っ」


 くしゃりと泣き笑い顔になった。

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