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幼馴染が魔王/勇者でした。  作者: 夕藤さわな
09.処刑編

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09-01 執行の時間だ。

「……っ」


 額に痛みを感じてジーはハッと赤い瞳を見開いた。ぎこちない動きでゆっくりとあたりを見まわす。


 今、ジーは木材で組まれた〝舞台〟の上に立っている。絞首台という〝舞台〟の中央に作られた落とし戸の上に立っている。

 藁縄わらなわのチクチクとした感触が首に当たって痛い。

 眼下には大勢の人たちが集まっている。足元よりも低い位置に群衆の頭があるからジーが群衆を見下ろす形、群衆がジーをにらみ上げる形だ。

 落とし戸は今は閉じられているけれど処刑執行人の合図でパカッと開く。開いた瞬間にジーの体は落下して、かけられた太い藁縄が首に食い込む。落とし戸から落ちても地面に足はつかず、首にかけられた藁縄で体は宙にぶらりと浮くことになる。

 だから、やっぱり群衆がジーをにらみ上げる形になる。


「よくもまぁ、のうのうと人族《俺たち》の前に姿を現わせたもんだな!」


「とっととくたばれ、魔族!」


「あたしたちから家族も友人も奪ったんだ! 楽になんて死ねると思うんじゃないよ!」


 怒声とともに再び飛んできた石にびっくりしてジーは固まった。先ほど額に感じた痛みも投げつけられた石が当たった痛みだ。

 そんなジーの様子を見て〝舞台〟のすみに控えている処刑執行人たちはひそひそと言葉を交わした。


「兵士共から引き渡されたときにアイツは魔王だ、一応は警戒しておけと言われたが……」


「聞いたときは何をバカなって鼻で笑っちまったがあり得るかもしれないな」


「石を投げつけられても顔を背けたり目をつむったりするどころか、まばたき一つしねえで平然としてんだもんなぁ。腐っても、絞首台で首に縄かけられても、魔族の長、魔族の王ってか?」


 男たちの会話を聞いたらオリーとバラハ、ラレンはため息をついていただろうし、リカはニッコニコの笑顔で殺気をダダ洩れさせつつ神剣を抜いていただろう。

 いつも通りの淡々とした表情のせいで今回も盛大にかん違いされているだけ。心の中ではギャン泣きだし、驚き過ぎてまばたきすら忘れてるだけだし、なんならついさっきまで目を開けたまま気を失っていたのだ。

 というか、〝舞台〟にあげられる前から目を開けたまま気を失って、石がぶつかった痛みでハッとまばたきをして……を繰り返している。


 ジーの体は見えるところも見えないところも石をぶつけられたせいであちこち傷になっているし血も流れている。魔族で体が丈夫だからこの程度、大したことはない――というわけでもない。魔族は長命だが特別に体が頑丈というわけではない。体の頑丈さは人族と変わらない。

 石が当たればケガをするし、血も出るし、いずれ死ぬし、当たり所が悪ければ即死する。

 それを知っているのか、いないのか。わかっているのか、いないのか。


「お前だけじゃない! お前ら魔族、みんな、殺してやる!」


「皆殺しにしてやる!」


「あの人を返せ!」


「息子の仇!」


「死ね!」


「しね! しね!」


「シネ! シネ! シネ!」


 死ね、しね、シネ、死ねしねシネ、シネシネシネシネシネシネ………!


 絞首台を取り囲む群衆からの殺意にジーはあいかわらず淡々とした表情のまま。でも、頭の中は真っ白になっていた。

 人族と魔族のハーフだからと冷遇されることも悪意にさらされることも今までにたくさんあった。だけど、ここまで露骨に大勢から憎悪や殺意を向けられたことはなかった。命の危険を、殺されるかもしれないという恐怖を感じたことはなかった。


「……リカ」


 震える声で幼馴染で親友の名前を呼んでみたけれどもちろん返事はない。

 と――。


「ああ、夕刻の鐘だ」


 街中に響く鐘の音に男たちが空を見上げた。ジーに向かって罵声や石を投げつけていた群衆も同じように空を見上げる。


「さて、執行の時間だ」


 そう言って処刑執行人の一人がすっと手をあげるのを見て、群衆がワッ! と歓声をあげた。

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