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幼馴染が魔王/勇者でした。  作者: 夕藤さわな
08.拘束編

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08-08 たった一人のための勇者。

 幼い頃から何度となく、大小さまざまなパーティに出ている。いまだに慣れない……ということはないけれど、それでも人疲れというか人酔いをしてしまうことくらいある。

 テキトーないいわけをしてパーティ会場から離れたバルコニーに出たラレンは目を丸くした。


「こんなところで何をしていらっしゃるんですか、リカルド様」


 父であるアルマリア神聖帝国国王から今日、勇者の称号を授かった〝勇者〟リカルド・ウィンバリーが神剣を手に夜の空を眺めていた。

 今まさに開かれているパーティの主役であるはずの青年が人気ひとけのないバルコニーでひっそりと星空を眺めているのだ。

 何をしているのかと聞いてはみたけれどすぐに理由に思い当たった。


「……失礼しました」


 ラレンと同じように人疲れ、人酔いしてひっそりこっそり休憩していたのだろう。

 そのことに気が付いて慌てて引き返そうとするラレンをリカはにこりと微笑んで手招きした。


「いいえ、気にしないでください。たしか、第三王子のラレン様……でしたよね。ラレン様も休憩しにいらしたんでしょう?」


「はい……でも……」


 ためらったラレンだったけれど――。


「誰か来たみたいですね」


「……!」


 どこぞのご婦人だろう。近付いてくる甲高い笑い声に慌てふためいて結局、バルコニーに飛び出した。暗幕のようにぶ厚いカーテンをピッタリと閉めて一瞬、考えたあと、結局、いそいそとリカの隣に立った。


「子供の頃、幼馴染とよく夜更かしして星空を眺めたんです。王都ここから見える空は幼馴染と見た空よりも星が少ないけれど、それでも眺めていると落ち着くんですよ」


 だから、人気ひとけがなくて星空が見える場所を探して一息ついていたのだろう。バルコニーの手すりに寄りかかって空を見上げるリカの横顔を見ているうちにラレンの表情はみるみるとくもった。

 女神アルマリアと同じ、銀色の髪に金色の瞳。ラレンの容姿はまるで勇者になるべくしてなったような容姿だ。

 だけど――。


「リカルド様は平民の出身……なんですよね」


 そう、リカは平民の出身。特別な出生というわけではないのだ。


「ええ。もう何年も帰っていないですが家族は今も畑を耕したりヤギを育てたりして暮らしているはずですよ」


 他人事のように家族の話をするのはリカが人族と魔族のハーフで、人族である父や祖母に冷遇されて育ったからだ。でも、そのことをラレンが知るのは勇者パーティに加わったあとのこと。

 このとき(・・・・)のラレンはリカの表情の変化にも気付くことはなかった。


「すごいです、リカルド様は。魔王を討伐のためにたった一人で旅に出て、女神アルマリアから加護と神剣を授かって、仲間を増やして、ついには勇者に……自分の意志と力で勇者にまでなった。すごいです」


 このときのラレンにとってはリカが自分自身の力で勇者になったという事実の方が重要だった。


「それに比べて僕は……」


「僕が〝勇者様〟ならラレン様は〝王子様〟じゃないですか」


 うなだれるラレンにリカはニッコリと勇者スマイルで微笑みかける。しかし、ラレンはうなだれたまま。ゆるゆると首を横に振った。


「僕はたまたまアルマリア神聖帝国の現国王の息子として生まれただけです。リレマー兄様のように頭がいいわけでも、ルグ兄様のように剣術が得意なわけでもない。僕自身は何もしていないし、何も持っていないのに……それでもまわりは僕を王族として、王子として扱ってくれるんです」


 そう言って肩を落とすラレンの横顔を今度はリカがじっと見つめる番だった。


「僕もたまたま勇者になっただけですよ」


 しばらくラレンの横顔を見つめたあと、リカは再び星空を見上げてポツリとつぶやいた。言葉を咀嚼そしゃくして呑み込んで、ラレンはきょとんと隣に立つリカを見上げた。


「本当のところ魔族が人族を滅ぼそうとしているとか、そんなことはどうでもいいんです。魔王が人族を滅ぼそうとしているから魔王を討伐しようとしているわけじゃないんです」


「そんなこと……!」


「ありますよ。僕が魔王を討伐しようとしている理由はたった一人のため。なりたいのも魔王を倒す勇者なんかじゃなくてたった一人のための勇者。たった一人のための何者かなんです。勇者になったのは旅をするのに何かと都合がいいからで、ついでのようなものなんです」


「……ついで」


 国王から与えられた勇者の称号を都合がいいから、ついでなどと言ったら聞く者が聞けば不敬罪だと騒ぎかねない。しかも、目の前にいるラレンは現国王の息子で、王子で、王族なのだ。

 でも――。


「ええ、ついでです」


 リカはラレンを真っ直ぐに見つめて穏やかに微笑んでいる。現国王の息子でも、王子でも、王族でもないラレン自身に微笑みかけている。その微笑みにラレンは唇をきゅっと噛みしめた。

 そして――。


勇者様・・・、王都を発つのはいつ頃の予定ですか?」


 そう尋ねた。


 その後――。

 ラレンはリカとオリー、バラハが王都を発つまでの一か月の間に白魔導士の資格を取得し、のちに勇者パーティと呼ばれることになる面々の旅の仲間に加わったのだった。

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