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幼馴染が魔王/勇者でした。  作者: 夕藤さわな
08.拘束編

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08-07 そこで合流しよう。

「説明しよう!!!」


 地下牢のすみっこで体育座りしてぼんやりと虚空を見つめていたリカが突然、クワッ! と目を見開いて叫ぶもんだからオリーとバラハの肩はビクリと跳ねあがった。


「何をだ!?」


「急になんなんですか、リカ!!」


 うっかり地下牢に閉じ込められて何時間が経っただろうか。

 オリーはこじ開けられそうなところはないかと石の壁をなでてまわっていたし、バラハは地下牢全体にかけられている魔力封じの術を解く方法はないかと石の床に手のひらを当てて目をつむっていた。

 重苦しい沈黙を切り裂いたリカの叫びにオリーとバラハはバクバクと言っている心臓をなでなでなでなでなでまわしてなだめる。


「〝女神の執着〟とは世界を見渡すことができる女神アルマリアの力の一端を借りて加護を与えた相手の状況を逐一、詳細に、知ることができるという力である!」


 そんな心臓バックバク状態の二人なんてお構いなしでリカは早口でまくし立てながらすっくと立ちあがった。


「加護を与えた相手の状況を逐一、詳細に知ることができるって……つまるところ離れていながらにしてジーのやつをストーキングしてたってことだよな!?」


「能力も怖いですが執着って命名も怖いんですよ! もうちょっとオブラートに包んだ名前にできなかったんですか、リカ!?」


「ジー君の危機である! ジー君が危ない!」


「都合が悪いからって無視するなよ、リカ!」


「……いいえ、オリー。都合がいいとか悪いとか関係なしに私たちの声が届いていないんだと思います。まったく、全然、少っっっしも聞いていないんだと思います!」


 ジーの身に迫る危機にガシッ! とにぎりしめた拳を突き上げるリカを見つめてオリーとバラハはそろってため息をついた。


「でも、リカの神剣も、俺の斧も、バラハの杖もない今の状態じゃあなぁ」


「まずはこの地下牢を抜け出す方法を見つけないと……」


「来い、神剣!」


「……は?」


「……え?」


 突き上げた拳をグワッ! と開いて神剣を呼ぶリカにオリーとバラハはすっとんきょうな声をあげた。

 そして――。


「よし、来た!」


「どこからともなく神剣が現れた!」


「天井やら壁やらの物理的な障害も距離も無視ですか! 呼ぶだけで来るんですか! なら、最初から呼んでください、リカ!」


 リカの頭上に一瞬にして現れた神剣に――というか、神剣を呼べるのに今の今まで呼ばなかったリカにブチギレ気味にツッコんだ。

 でも、当のリカはお構いなし。まったく聞いちゃいない。


「それ行け、神剣! 〝女神の翼〟!」


「無視か! 完全に無視か!」


「もう頭の中はジーのことでいっぱいなんでしょうね! だが、しかし! 私と筋肉バカを地中深くに置き去りにしていくことは許しませんよ、リカ!」


 神剣を鞘から抜いて叫ぶリカの腰にオリーとバラハはガシッ! としがみつく。神剣の刀身は淡く白い光を放っているし、リカの背中に現れた光の翼はバッサバッサとはばたいている。どう考えても地下牢から脱出するために女神アルマリアから授かった力を使おうとしているのだ。

 今のリカならジーを助けるためにすっ飛んで行ってしまう。オリーとバラハのことなんてすーっかり忘れ、置き去りにしてすっ飛んで行ってしまう。

 そんなわけでオリーとバラハは何はさておき、リカの腰にガシッ! としがみついたのだ。


 二人が腰にしがみついたのを確認して、というわけでは一切なく。翼をバッサバッサと羽ばたかせて飛べそうなことを確認したリカは再び神剣の剣先を天井に向けた。


「〝女神の梯子はしご〟!」


「それって……天使の梯子的な!?」


「天使の梯子ってアレですよね! 雲の切れ間から光の柱が降り注いで見える幻想的なアレですよね! どちらかというとコレはライトニングボルトですよ!? 雷属性の攻撃魔法ですよ!!?」


 リカが高く掲げた神剣目がけて降り注いだ光の柱が地下牢の天井に大穴を開けた。石造りの頑丈な地下牢の天井も、細くせまく急な石の階段も跡形もない。丸く切り取られた青空がはるか頭上にのぞいているのを見てオリーとバラハは真顔で、ますますガッシリとリカの腰にしがみついた。

 置き去りにされたら地上に這い上がる前に餓死してしまうかもしれない。周囲が崩れて石やら土やらに押しつぶされてしまうかもしれない。


「絶対に置き去りにされるわけにはいかない」


「ええ、絶対に置き去りにされるわけにはいきま……ぶひゅっ!」


 バラハが決意を口にし終えるよりも早く、オリーとバラハをぶら下げたリカの体がバビュン! とくうを切った。ふわりと宙に浮くとかの予備動作は一切なし。


「ぶひゅ! ぶひゅひゅ……ばっ! つ、ついたのか!?」


「ついたよ」


 一瞬で地上にたどり着いたリカはオリーとバラハを背丈の低い柔らかな草の上に下ろすと再び空をにらみつけた。


「ちょっと待て、リカ!」


 このままジーを助けにすっ飛んで行くつもりなのだろうと察して草の上にへたり込んでいたオリーがあわてて立ち上がる。


「俺たちもいっしょに行くに決まってんだろ!」


 連れて行けと言わんばかりに手を伸ばすオリーをチラッと見たあと。


「丸腰じゃあ、まずいでしょ。先に西の広場に向かっているから、そこで合流しよう」


 リカは再び翼を広げた。

 そして――。


「それとラレンも探してきて!」

 

 そう言い残すとあっという間に広場がある方角へと飛んで行ってしまった。残されたオリーとバラハは顔を見合わせた。


「そうですよね、まずはラレンと自分たちの武器を見つけないと」


「リカの神剣みたいに呼んだら飛んできてくれたらいいのになー」


「そうですね、ラレンも武器も飛んできてくれたら楽なんですけどね」


「いや、ラレンならリカが呼べば飛んで来るかも」


「そうですね、ありえますね」


 なんて言い合いながらオリーとバラハは王城に向かって駆け出したのだった。

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