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幼馴染が魔王/勇者でした。  作者: 夕藤さわな
08.拘束編

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08-03 それでは行こうか、ジラウザ殿。

「……?」


 誰かに呼ばれた気がして振り返ったけれどそこにはだだっ広いし長いし柱も飾ってある絵も花瓶もなんだかものすごーく豪華で豪勢な廊下が続いているだけだった。


「お時間です、ジラウザ様」


 首をかしげているジーにアルマリア神聖帝国国王の秘書だという男が声をかけた。

 魔族の長、魔王としてアルマリア神聖帝国国王に面会するのだ。いつもはフードを目深にかぶって隠している雄牛のような黒い角も赤い瞳も今日は隠していない。

 オリーのようにガタイがいいわけではないがジーも背はかなり高い。黒くつややかな髪も黒いマントを羽織った姿も、心の中はさておき常に淡々とした表情も見る人が見れば怖ろしいし身構えるはずだ。

 しかし、さすがは国王付きの秘書。魔族で魔王なジーを前にしても物腰柔らかな微笑みを少しも崩さない。そんな秘書の笑顔を見つめ、もう一度、歩いてきた方向を見つめ、ジーは一見すると淡々とした表情と声音で尋ねた。


「ラレンも同席すると聞いた。まだ来ていないようだが」


「リレマー様との話が長引いているのかもしれません。陛下はこのあとも予定が詰まっております。もうしわけありませんが……」


 物腰柔らかそうな微笑みを浮かべていた秘書がもうしわけなさそうに眉を下げるのを見てジーはあいかわらず淡々とした表情で、しかし、ジー的には大慌てで首を横に振った。


「そうか、わかった。では、始めてくれ」


 ラレンにとっては三年ぶりの故郷だ。数日前にも会っているとはいえ積もる話がまだまだあるのだろう。それならば兄弟水入らずの時間をゆっくり過ごしてもらいたい。

 そんなことを考えながらジーがうなずくと秘書は胸に手を当てて感謝の意を示し、大きくて豪華な装飾が施された扉をノックした。


「陛下、ジラウザ様をお連れしました」


 てっきり〝どうぞ〟とか〝入れ〟とか返事があるものと思って待っていたジーは――。


「お待たせしてしまいもうしわけない、ジラウザ殿!」


「……!」


 豪華な装飾が施された重そうな扉が勢いよく開いたのを見て心臓バックバク状態になった。部屋から勢いよく出てきた張本人はと言うとジーが驚いていることに気づいた様子はない。まあ、ジーの顔が一見すると驚いているようには見えない、あいかわらずの淡々とした顔だからというのも大きいのだろうけれど。


「実はこのあと市中の視察をしに行く予定でね。急ぎ作らせていた舞台が完成したと知らせがあったんだ。そこで、どうだろう。話は馬車の中でゆっくりするとして、良ければジラウザ殿も視察に同行しないか」


 年のせいで白くなった髪とひげ、猛禽類を思わせる高い鼻と鋭い眼光。一国の王にふさわしい貫禄のある顔をくしゃりとさせて笑うと国王は言った。

 ジーは心の中では困り顔になって廊下を振り返った。ラレンが来る様子はまだない。でも、多忙な中、やりくりして時間を作ってくれた国王をこれ以上、引き留めるのも気が引けた。


「わかった。同行させていただく」


 ジーの返事に国王は顔をさらにくしゃりとさせて笑った。


「ありがとう。それでは行こうか、ジラウザ殿」

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