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幼馴染が魔王/勇者でした。  作者: 夕藤さわな
07.王都編

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07-11 白は白だと思うぞ、リカ。

「孤児院の子供たちや神父から話を聞いてきたぞ」


 えり首を掻き掻き、オリーがそう言いながら王城内の客室に戻ってきたのはとっぷりと日が暮れて窓の外が暗くなった頃だった。オリーとバラハは眠ってしまった二人の少年――アルヴィとヴァレッドを孤児院に送り届けに行っていたのだ。

 ラレンとリカ、ジーは一足先に王城に戻ってきていた。王族や、人族と魔族のハーフである勇者と魔王があの場に長居するのは危険と判断したのだ。


 アルヴィとヴァレッドを寝かしつけたのはリカだった。女神アルマリアに授けられた力の一つ〝女神の子守歌〟でアルヴィとヴァレッドはあっという間にパタンキューのスヤスヤだ。


「……」


「……」


「……」


「……」


 ジーとラレン、オリーとバラハが無言で、ジトリとリカを見つめたのはそんなに良い手があるなら殺気ダダ洩れで神剣振り回してないで最初からさっさと使えよと思ったからだけれども。

 それはさておき――。


「アイツらが言ってた通りだ。孤児院に預けられてる子供たちの家族はみんな、三年前に兵士に取られてる」


 アルヴィとヴァレッドが魔族に敵意――というより殺意をむき出しにした理由についてだ。

 オリーの言葉にふっかふかのソファに腰かけたリカとラレンは露骨に、ジーは心の中で眉をひそめた。


「あの街には子供たちしかいないように見えた。男性だけじゃなく女性も連れて行ったってこと?」


「料理や洗濯、看護。戦場で女性がやれることもたくさんあると言って連れて行ったようです」


 リカの疑問にバラハがこみかめをぽりぽりと掻きながら答える。


「それにしても子供だけ残して街の大人たち全員を連れて行くというのは……抵抗した者も相当数いたんじゃないか?」


 ジーの疑問に今度はオリーが首を横に振って答えた。


「あのあたりは移民街でアルマリア(この国)の国籍を持ってない人たちばっかり暮らしてたらしい。兵士や後方支援として着いて来れば本人と十三才以下の家族に国籍を与えるって言われてみんな、着いてったそうだ」


 南方諸国では七十年に渡って断続的に内戦外戦問わず武力衝突が起こっている。戦禍せんかから逃れるために他国に移り住んだ者たちもかなりの数になる。

 移民先で職にありつけなかった者、あるいは低賃金で雇える移民たちに職を奪われた者。そういう者たちが集まって貧民街を形成し、犯罪が横行し――。

 貧困、治安悪化、その他諸々。移民問題は多くの国が抱える問題で、移民たちはどの国でも厄介者扱いされている。

 でも、国籍があれば――その国の国民だと認められれば真っ当な職と賃金を得られる可能性がグッとあがる。その国で育ち、親たちとは違って言葉に不自由のない移民二世・三世ともなればなおのこと。


 子供や弟・妹のため、彼ら彼女らが国籍を得られるようにと、あの街で暮らしていた移民たちは戦場へとおもむいたのだろう。


「兵士と言っても物資の補給やケガ人を後方に運ぶとか、魔族と直接、戦うわけではないと言われていた人たちもいたようです。子供たちの話では、ですが」


「子供たちの話では?」


 バラハが強調した一言にジーとリカはそろって首をかしげ、ラレンは険しい表情でオウム返しにした。


「子供たちを世話してる神父から聞いた話じゃあ、国籍を与えるのは戦果をあげた者だけ、戦場なんだから魔族と遭遇することも命を落とすこともあるって子供たちの家族を連れてった軍連中は言ってたらしいんだよ」


「言葉が不自由で上手く伝わらなかったという可能性もありますが……」


 歯切れ悪く言ってバラハはこみかめをぽりぽりと、オリーもえり首をガリガリと掻いた。


「人族と魔族が戦争をしている事実なんてないのに兵士として取られた移民たちはどこに消えたんだろうね」


「お言葉ですが、勇者様。人族と魔族が戦争をしていないというのは魔王ソイツとジーキルさんがそう言っているだけです! 忘れかけてたけどソイツは魔王で、勇者様は勇者様なんです! だから、もう少し……もう少し……こう!!!」


「ジー君は僕の幼馴染で親友で憧れで勇者様で崇め奉る存在だよ。ジー君はうそなんてつかないし、ジー君が黒と言えば白も黒なんだよ。……黒なんだよ!」


「私が黒と言っても白は白だと思うぞ、リカ」


「僕の推しが澄んだ瞳で曇り切ったことをめっちゃオタク的早口で言っている! 言っているぅぅぅーーー!!!」


 澄み切った金色の瞳でまばたき一つせずに言うリカを前にラレンは金色の髪をガリガリとかきむしった。


「まあ、実際、私たちが話を聞いたのはアーロン男爵だけです。アーロン男爵は魔族と戦ってないけれど三年前に王都を発った指揮官や他の指揮官たちは魔族と戦った可能性はないわけではないですからね」


「それにしたって連れて行った兵が一人も帰って来ないってのは異常だろ」


 オリーのため息に金髪をかきむしっていたラレンはラレンはピタリと動きを止めるとふっかふかのソファの背もたれにドサッと寄り掛かった。ラレンにつられるようにオリーもバラハも、リカもジーもソファの背もたれに寄りかかり、背もたれに背を預けて天井を仰ぎ見た。


 と――。


「ラレン様、皆様、失礼いたしますね」


 部屋のドアをノックして、元はラレンの乳母で今はメイドの老婦人・サリアがひょっこりと顔を出した。


「皆様にお手紙ですよ。ラレン様にはリレマー様から。ジラウザ様には国王陛下から。勇者様と戦士様、魔法使い様には第二王子のルグ様からです」


 しわだらけの顔をさらにしわくちゃにしてニコニコと微笑みながらサリアは二つ折りにした紙をそれぞれに差し出したのだった。

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