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幼馴染が魔王/勇者でした。  作者: 夕藤さわな
07.王都編

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07-10 みんな、お前たち魔族に殺されたんだ。

 ジーから奪った串焼きの牛肉はさっさと胃袋に納め、串の方はどこかに隠し持っていたらしい。


「……っ」


 反射的に顔を背けたジーの首の脇をアルヴィが振り下ろした串がかすめた。赤い線になっているけれどただの引っかき傷だ。串は木製で細いし、振り下ろしたのも子供の細腕だ。致命傷にはなることはそうそうない。

 ただ――。


「……! ……!!!」


 怖いものは怖い。

 あいかわらず淡々とした表情をしているけれどジーの体はガクガクブルブルと震えているし、赤い瞳は涙でうるうるしている。心の中では完全にギャン泣きだ。


「ジー君!」


 そんなジーの元に神剣片手に殺気ダダ洩れ状態で駆け寄ろうとするリカの前にヴァレッドが立ちふさがった。手に持っているのは古い小振りのナイフだ。武器の長さも耐久性も、持ち主の腕前だってリカと神剣には到底、敵わない。

 それはヴァレッド本人もよくわかっているのだろう。リカの金色の瞳に冷ややかに見つめられてヴァレッドの体は本人の意思とは関係なく震え出す。


「ア、アルヴィのじゃ、じゃじゃじゃ……邪魔はさせない……!」


 それでも退こうとしないヴァレッドを見てリカは眉をひそめた。ジーの串焼きと母親の形見である銅貨を盗んだことに怒って剣を向けたときには秒で悲鳴をあげていた。それが今は怯えながらもリカにナイフを向け続けている。


「コイツは魔族だけど勇者様が使役テイムしている魔族だ。だから……!」


「だから、大丈夫?」


 アルヴィとヴァレッドを落ち着かせようと口を開いたのだろうラレンをさえぎってアルヴィはギリッ! と奥歯を噛んだ。


「大丈夫ってなんだよ! 何が大丈夫なんだよ! 魔族の味方するようなヤツを信じろってのかよ! 大体……」


 ラレンをにらみつけていたアルヴィはそのまま視線をリカに向けた。


「〝勇者様〟なんて言ってるけど銀色の髪に金色の瞳をしてるってだけで本当の勇者様かわかんねえだろ! もし、仮に、本当に勇者様だったとしても女神アルマリアの加護を受けたなんてうそっぱちで、人族の中に入り込んで、仲間のフリして滅ぼそうとしてる魔族かもしれねえじゃねえか!」


「……んなっ!? 勇者様を……僕の推しを疑うのか! 疑うのかぁぁぁーーー!」


 勇者崇拝過激派のラレンが地団駄踏んでるのをよそにジーとリカは目配せし、肩をすくめた。実際、ジーもリカも人族と魔族のハーフで、しっかり魔族の血を引いている。アルヴィの言葉を全部、否定することはできない。

 ただ――。


「斬られても、殺されたってここは動かない! アルヴィが魔族アイツを殺すのを……じゃ、邪魔なんてさせないんだからな!」


 アルヴィとヴァレッドがジーとリカに向ける感情は〝人族を滅ぼそうとしている魔族〟に対する怯えや恐怖とは違う。憎悪や殺意。それも〝一人でも多く、刺し違えてでも、魔族を殺す〟という十才になるかならないかの少年が抱くにはあまりにも強烈な殺意だ。個人的な恨みがあるとしか思えない。


「どうして……そんな……」


 ジーが震える声でつぶやいた疑問に答えるアルヴィの声もまた震えていた。


「決まってるだろ。俺やヴァレッド、孤児院にいる連中の親兄弟はみんな、お前たち魔族に殺されたんだ」


 ただし、アルヴィの場合は怒りから来る震えのようだ。


「父さんも母さんも僕たちを魔族から守るために戦争に行って死んだんだ。だったら、僕たちだって……!」


 泣きながら突進してくるヴァレッドとジーの顔面へと拳を振り下ろすアルヴィを見つめてオリーとバラハ、ラレンは青ざめた、ジーはあいかわらず淡々とした表情で心の中ではギャン泣きしている。

 そして――。


「……さて。これはどういうことなんだろうね」


 リカは冷ややかな声でつぶやいて神剣を構えたのだった。

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