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幼馴染が魔王/勇者でした。  作者: 夕藤さわな
07.王都編

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07-08 推しが見境なくなる!

「小さな強奪犯さん、お名前は?」


「……アルヴィ」


「ヴァ、ヴァレッドです!」


 オリーにえり首をつかまれたままの少年二人はバラハに尋ねられてそう答えた。アルヴィと名乗った少年はツンと顔を背けながら、ヴァレッドは震えながらではあるけれどすんなりと答えた。

 その理由は――。


「アルヴィとヴァレッド。それがキミたちの……ジー君の大切な物を奪った、僕が全力で排除すべきキミたちの名前だね。……一生忘れない。排除するまではもちろん、排除したあとも一生、決して、その名前と顔を忘れない」


「……!!!」


「ヒ……ッ、魔王! 魔王だ、ヒィィィーーー!!!」


 バラハの後ろでリカが神剣を鞘から抜いたり納めたりしているからだ。ニッコニコの笑顔で神剣をなでなでなでなでしているからだ。

 ちなみにリカのセリフは冗談でも脅しでもなく心の底からのセリフだ。


「勇者様が……僕の推しが魔王扱いされている……」


「なんだか……すまない……」


 リカの笑顔にすっかり怯えている少年二人を見てラレンは明後日の方向を見つめた。全力で現実逃避しているラレンにジーは体を小さくしてあやまりつつ、リカの腕を引っ張って下がらせた。このままでは少年たちが怯えて話が進まない。急に神剣でバッサリやられても困る。


「んで、ガキ共。串焼きはどうした?」


 リカに代わって少年たちに尋ねたのはオリーだ。村にいた頃、まだ子供だった時分には同年代を束ね、大きくなってからも年下たちの世話を焼いていただけのことはある。怒っているオーラを出しながらも少年たちが委縮して黙り込んでしまわない程度の調子で尋ねる。

 実際――。


「とっくに食っちまったよ」


「お腹が空いてたんだ。……ご、ごめんなさい」


 アルヴィはバツが悪そうにそっぽを向き、ヴァレッドはボロボロと泣きながら答えた。仕方のないやつらだな、と言わんばかりにため息をついて顔をあげたオリーの表情が苦笑いに変わる。


「そんなにガッカリすんなって、ジー。また買ってやるからさ」


 リカの腕をつかんでバラハのはるか後方に下がっていたジーがわかりやすく肩を落としていたからだ。フードで顔を隠してはいるけれど見るからに落ち込んでいる黒いマント姿のジーを見てアルヴィの顔には動揺が、ヴァレッドの顔には罪悪感が浮かんだ。


「銅貨はどうしたんですか。ジーが持っていた銅貨三枚も奪って行ったでしょう?」


 うなだれる二人の顔をのぞきこんで今度はバラハが尋ねる。顔を見合わせたアルヴィとヴァレッドはそろって首を横に振った。


「あの銅貨じゃあ、何枚集めても串焼きの一本も買えないじゃない」


「何の価値もないあんなゴミ、逃げてる途中で捨てちゃっ……!?」


「リカ!」


 アルヴィが言い終わるよりも、ジーが気が付いて止めるよりも速く――。


「あれはジー君のお母さんの形見だ。それ以上の価値も説明も必要ないだろ」


 リカはアルヴィの喉に剣を突き付けた。

 アルヴィはもちろんのこと、隣にいるヴァレッドも、少年二人を母猫のようにふんづかまえているオリーも青ざめる。何か言おうとしても、ほんのわずか身じろぐだけでもリカの神剣はアルヴィの喉を貫きそうだった。


「やめるんだ、リカ」


 少年二人も、勇者パーティであるオリーもバラハもラレンもが身動き一つできない膠着こうちゃく状態の中、リカの手首を掴んだのはジーだった。


「たしかにあの銅貨は母が遺してくれたものだが、串焼きを買うのに使うつもりだったんだ。怒らなくていい。そこまでしなくていい」


 フードを深々とかぶって隠しているリカの金色の瞳は怒りに満ちている。その瞳をのぞきこんでジーはゆっくりと、言い聞かせるように言った。


「だから、剣を下ろすんだ、リカ」


 リカの手首をつかむジーの手は小刻みに震えている。リカの殺気に怯えているというのもあるけれど、何よりもアルヴィが傷付くかもしれない、場合によっては死ぬことになるかもしれないということが怖いのだ。

 ジーの赤い瞳にじっと見つめられ、手首に伝わる手の震えに目を閉じ、リカはゆっくりと息を吐き出してどうにか怒りと殺気を押さえ込むと神剣をおろした。


「ジー君がそう言うのなら」


 瞬間――。


魔王アイツのことになると……推しが見境なくなる! 豹変する!!!」


 ラレンはガックリと肩を落とし、オリーとバラハ、アルヴィとヴァレッドはブハァーーー! と安堵の息をもらしてその場にへたりこんだのだった。

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