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幼馴染が魔王/勇者でした。  作者: 夕藤さわな
07.王都編

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07-02 むしろ、ヤルから。

「それじゃあ、僕はアーロン男爵を牢に連れて行きます」


 城の兵士数名とアーロン男爵を先に行かせてラレンは勇者パーティの面々とジー、元は乳母で今はメイドの老婦人・サリアを振り返った。


 オリーとバラハの故郷を含むアルマリア神聖帝国最果ての領地を治めるアーロン・ユーバンク男爵。ラレンが王族の権限でアーロン男爵の身柄を拘束し、幽閉するのは彼が二つの罪を犯しているとわかったからだ。

 一つは指揮官として魔族と戦ったとうその報告をした罪。もう一つは魔族に襲われたとうそをついて領内にある村一つを焼いた罪だ。


 リカが女神アルマリアから授けられた神剣の力〝女神の懺悔〟によってアーロン男爵のうそは暴かれている。でも、それを無条件で信じるのはリカと長いあいだ旅をしてきた勇者パーティの面々と幼馴染で親友のジーくらいだ。

 第三王子を含む勇者パーティの面々が〝アーロン男爵はうそをついていた〟と言ったとしてもアルマリア神聖帝国現国王も貴族も民衆も簡単には信じないだろう。〝指揮官殿〟と呼ばれ、魔族討伐の英雄とされるアーロン男爵は貴族、民衆問わず人気があるのだ。

 実際、ラレンの指示でアーロン男爵を地下牢へと連行する城の兵士たちの表情は複雑だ。戸惑っている者、懐疑的な者。ラレンの言うことを全面的に信じている者は一人としていない。


「アーロン男爵を牢に連れて行ったあと、そのまま父と兄たちにこの件を報告しに行ってきます」


 だからこそ、正式な手順にのっとって調査を行い、アーロン男爵の処遇も決定しないといけない。そうでなければ貴族も民衆も、ラレンの実の父や兄ですらも納得しないだろうから。

 父と兄への報告も、その後の調査も、時間も手間もかかるだろうとわかっているラレンはため息を一つ。


「そのあいだに勇者様たちはお風呂に入ってきてください」


 羽織っているマントはもちろんのこと、髪も肌も砂やら泥やら埃やらで薄汚れているリカたちをぐるりと見回し、ラレンは最後にジーを見つめた。


「明日か明後日か。会って話ができるように父に時間を作ってもらうから。魔王おまえも身ぎれいにしておけ」


 魔族の長であり魔王であるジーに向かってラレンはうなずいてみせた。サリアの手前、フードを目深にかぶって顔を隠しているジーだったがラレンの目配せに口元に笑みを浮かべると小さくうなずき返した。


「それじゃあ、サリア。勇者様たちのことをお願いするよ」


「承知いたしました、ラレン様。……それじゃあ、皆さま。入浴の準備をしてまいりますからこちらでおくつろぎになってお待ちくださいね」


 ロイヤルキャット様なエリザベスの部屋を出ていくラレンを見送ったあと、サリアも部屋を出て行った。ドアが閉まった気配を感じてジーはフードをほんの少し持ち上げるとだだっ広い部屋を改めて見回した。

 部屋の造りも家具も何もかも立派なのはここが王城だから。魔族と長年、敵対している人族の王が暮らす城だからだ。それを実感して自然とジーの表情も強張る。


「大丈夫だよ、ジー君」


 震えるジーの手を取ってリカがニコリと微笑んだ。


「約束したでしょ? ジー君の不安や恐怖がすっかり消えてしまうまで僕は絶対にジー君のそばを離れないし、絶対にこの手を離したりしない」


「……リカ」


 リカのいつも通りの穏やかな微笑みと力強い言葉にジーはほっと息をついた。


「それに……」


 でも――。


「ジー君の敵は僕の敵。ジー君を傷付けようとする者がいるなら僕は全力でジー君を守るし、傷付けようとする者たちを全力で排除するよ。……全力で、排除する!」


「リカ、排除はしなくていい。排除しないでくれ、リカ」


 殺気をダダ洩れさせつつ神剣をすらりと鞘から抜くリカにジーはあいかわらずの淡々とした表情だけれど全力で首を横に振った。心の中はギャン泣き寸前だろうジーのことなんてお構いなしにリカはニッコリニコニコと微笑む。


「僕が前に国王と謁見したときには片膝ついて頭も下げたんだけどね、僕はこの国の国民だし、ただの人族と魔族のハーフだから構わないんだけど、もしも、僕の幼馴染にして親友にして魔族の長にして魔王にして推しのジー君にまで片膝ついて頭をさげろとか言い出したとしてもやらなくていいから」


「めちゃくちゃ早口だな、リカ」


「大好きな勇者様について話すときのラレンと同じくらい早口ですね、リカ」


「ジー君にまで片膝ついて頭をさげろとかそんなこと言い出すようだったらやらなくていいから。むしろ、ヤルから」


「ヤル?」


「ヤルとはどういう意味ですか、リカ」


 殺気ダダ洩れの状態で神剣をなでなでなでなでするリカに聞き返してオリーとバラハが表情を強張らせる。


「決まってるじゃない。この剣で片膝をつかせて頭をさげさせるって意味だよ」


「……!」


 リカはと言えばオリーとバラハ、それからジーも表情を強張らせていることなんて、これまたお構いなしにニッコリニコニコと微笑んで言う。


「け、剣で脅すような真似はやめてくれ、リカ」


「脅したりなんてしないよ、ジー君。膝の裏と首の後ろの腱を切って物理的に片膝つかせて頭をさげさせるだけだから。……だけだから!」


「……!」


「ストップ! ストップだ、リカ!」


「膝の裏と首の後ろの腱を切って物理的に片膝つかせて頭をさげさせるなんてショッキングな映像をリカが想像させるから心の中はギャン泣きどころか、心が耐えきれなくて気を失ってますよ、ジーが」


「ジー君……!?」


 オリーに止められ、バラハにため息まじりに言われたリカはハッと目を見開くとジーの肩をつかんだ。リカに肩をつかまれたジーは淡々とした表情のまま。


「ジーくぅぅぅうううーーーん!!!」


 重力に逆らうことなく後ろに引っくり返ったのだった。

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