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幼馴染が魔王/勇者でした。  作者: 夕藤さわな
06.真相編

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06-04 今も〝かわいい王子様〟ですね。

 魔族と人族のハーフであり、銀色の髪と金色の瞳という人族にはない外見を持つリカが恐れられることがないのは女神アルマリアが銀色の髪と金色の瞳をしていると言い伝えられているから。

 銀色の髪と金色の瞳をした青年が女神アルマリアから神剣を授けられ、アルマリア神聖帝国現国王から勇者の称号を与えられたと広く知れ渡っているからだ。

 でも――。


「あなたは本当に勇者なのか」


 月の光のような銀色の髪からのぞく顔は怖いほどに整っていて、ときに人間離れして見える。月そのもののような金色の瞳で冷ややかに、刺すように見つめられると空恐ろしい。


「本当に……魔族や魔王の手から人族を守る勇者なのか」


 震える声で尋ねるアーロン男爵を見下ろしてリカは無表情のまま、あきれたように鼻を鳴らした。

 リカが勇者として旅をしてきた目的はジーを守るため。人族にいるだろうと思っていたジーを守るためだ。


「勇者という称号はキミたち人族が勝手に与えたもの。勇者なんだから魔族や魔王から人族を守ってくれるだろうなんていうのもキミたち人族の勝手な思い込み。僕の目的は旅の始まりから今日、そしてこれから先もずっと大切な幼馴染で親友を守ること。ただ、それだけ」


「……っ」


「勇者様……!」


 アーロン男爵の喉元に突きつけられた剣先の先端からツー……と一筋、血が流れた。苦痛と恐怖に顔を歪めるアーロン男爵を冷ややかに見下ろしていたリカだったが――。


「リ……リカ……」


 目の前に差し出された手が震えているのを見てハッと顔をあげた。

 ジーの赤い瞳がじっとリカを見つめている。顔を隠すために深々とかぶっていたフードはリカとアーロン男爵とのあいだにあわてて割って入ったときにうっかり脱げてしまった。黒くつややかな髪も、雄牛のように立派な黒い角もあらわになっている。

 それに震えているのは手だけではない。


「手を……」


 声も、大きな体も小さく震えている。子供の頃に自分を襲い、目をえぐり取り、母が死ぬ原因を作った犯人を前に赤い瞳には涙がにじんでいる。

 と――。


「頭に角が……!」


「魔族……!?」


 事の成り行きを呆然と見守っていた執事やメイドたちが悲鳴をあげた。ジーの姿を見てようやく事態の一片いっぺんを理解したらしい。


「赤い瞳……それに、隻眼。あのときの魔族の子供か。まさか生きていたとはな」


 口元に笑みを浮かべ、鋭い視線を向けるアーロン男爵にジーの肩がビクリと跳ねる。


「黙れ。ジー君が怖がってる」


「……っ」


「リカ……!」


 剣先をさらに深く押し込むリカにアーロン男爵だけでなくジーも、三人を見守るラレンやオリー、バラハも表情を強張らせた。

 でも――。


「……リカ」


 震えながらももう一度、手を差し出すジーを見て、リカはゆっくりとため息をつくと剣を下ろした。


「わかってるよ、ジー君。約束、でしょ?」


 震える手を取るとそのまま腕を引いてジーを背中にかばった。


「勇者が魔族を守り、魔族の言いなりになっているとはね。しかも、国王陛下からたまわった称号を勝手に与えられただけとは。不遜な態度だ」


 リカがジーをかばい、身構えたのはアーロン男爵が喉元を押さえながら立ち上がったからだ。神剣の柄にこそ手をかけていないが殺気がダダ洩れるリカの正面にラレンが立つ。


「勇者様、この件については僕から父に――アルマリア神聖帝国現国王に報告します。何らかの罰が下されるでしょうが最低でも爵位ははく奪、領地は没収となるはずです。それと……」


 リカの金色の瞳と、その後ろにいるジーの赤い瞳をラレンは真っ直ぐに見つめた。 


魔王ソイツに対する謝罪も必ず……王族ぼくの権限で必ずさせます」


 たかが謝罪でリカの溜飲が下がるわけがない。

 でも――。


「……そうか」


 ジーがそう言ってほっと肩の力を抜き、〝こう言っていることだし〟と言わんばかりにつないでいる手を強く握り返されれば毒気というか殺気というかも抜かれる。


「わかったよ、ジー君」


 アーロン男爵から顔を背けてソファにどさりと座るリカの隣にジーも大きな体でちょこんと座った。

 どうやら血や肉塊にくかいが飛び散る感じの大惨事は回避できたらしいことにほっと息をついたあと――。


「アーロン男爵。もう一つ、聞いてもいいですか」


 バラハの氷魔法で両手に手錠をかけられ、オリーに腕と肩をつかまれて拘束されたアーロン男爵にラレンは向き直った。


「子供の頃に聞かせてもらった話も……〝指揮官殿〟が魔族と戦ったときの話もすべてうそだったのですか。魔族と戦ったことなんてなかったんですか」


 ラレンが何を尋ねるのかと身構えていたアーロン男爵だったが、質問の内容に目を丸くした。

 かと思うと――。


「ええ……ええ、ええ! すべて作り話でしたよ。魔族となんて一度も戦ったことはありません!」


 豪快な笑い声をあげながらあっけらかんと肯定するアーロン男爵を前にラレンは顔をしかめた。


「指揮官だった頃から嘘をついていたんですね。その件も父に報告しておきます」


 吐き捨てるように言うラレンをきょとんと見つめたあと、アーロン男爵はあざけるように笑った。 


「すっかり大きくなったと思っていましたが……あなたはやはり、今も〝かわいい王子様〟ですね、ラレン様」

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