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幼馴染が魔王/勇者でした。  作者: 夕藤さわな
05.究明編

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05-09 犯人はリカだ。

「過去に犯した罪悪を告白できずにいる人々を救い出すのが女神アルマリアの慈愛なら、告白した人々を許し、抱擁ほうようするのが俺の慈愛ぃぃぃいいいーーー!!!」


「ぅぶぷくくく……!」


「ほどほどにしてくださいね、オリー。戦士による愛の全力抱擁なんて筋肉バカじゃない大多数の人間は背骨バッキバキで半死状態になりますから」


「ほどほどって言うかやめなよ! 今すぐ、やめなよ! オッサンたち、白目むいてるじゃん! 泡吹いてるじゃん! ヒール! ヒール、ヒーーール!」


 戦士なオリーのバッキバキの胸筋と腕に抱きしめられてカニのように口から泡をブクブクさせているアンブリーとゲイブリー、ゴードルフとモーリップに白魔導士なラレンは大慌てで治癒魔法ヒールをかけた。

 そんな面々を冷ややかな目で眺めるバラハはテーブルにほおづえをつき、ジョッキについだブドウ酒をなかなかのハイペースで消費している。やけ酒だ。


「村が魔族に襲われたなんて大嘘。ろくに税もしぼり取れなくて、貴族たちがお遊びで狩りをするのにちょうどいい森が近くにある村に立ち退いてもらおうと領主様とその従者たちが私たちの村に火を放った、というのが真実だったんですね」


「許せない……が! 許し、抱擁ほうようするのが俺の慈愛ぃぃぃいいいーーー!!!」


「ぅぶぶぶぷくくくぅ……!」


「ヒール!」


「アンブリーたちは働き口を融通ゆうずうしてもらう代わりに協力した、と」


「許し、抱擁ほうようするのが俺の慈愛ぃぃぃいいいーーー!!!」


「ぅぶぶぶぷくくくぅぅぅうううーーー!」


「ヒール! ヒーーール!」


 やけ酒をあおりながらも状況を整理したバラハはくしゃりと前髪をかきあげて舌打ちした。


「そういうわけです、ジー。私たちの村を襲ったのは魔族ではありませんでした。完全な濡れ衣でした。もうしわけありません」


「いや、いいんだ。その件に関して魔族側こちらに実被害はない。誤解が一つとけてよかった」


 あいかわらず淡々とした表情をしているけれど心の中では安堵の笑みを浮かべているのだろう。肩の力を抜くジーにつられてリカは微笑み、ラレンも苦笑いした。

 でも――。


「この十五年間、魔族に濡れ衣を着せて、恨んで、厳しい修行に耐えて、魔王と魔族を倒すために長くてつらい旅をしてきただなんて……本当にバカみたいです」


 バラハにとっては相当にショックな真実だったのだろう。この十五年間の根底を揺るがすような真実だったのだろう。


「家族や村の人たちが望むとおりに水魔法で畑に水をやって、風魔法で麦を刈って……その方がどれだけ村の役に立ったか。十五年を私たちはムダにしたんです」


「……バラハ」


「オリーだってそうですよ。その筋肉バカっぷりがあれば小屋を建てたり修理するための資材を運ぶのも、刈り終えた麦を運ぶのもどれほど楽だったか。どれほど有意義に筋肉バカを活用できたか」


「……筋肉バカ」


 なぐさめようとバラハの肩に手を伸ばしかけたオリーだったが流れるように悪口らしきものを垂れ流されてガックリとうなだれた。

 でも――。


「まあ、そう言うな。濡れ衣を着せてしまったジーや魔族には悪いが、それでも、俺たちのこの十五年がムダだったなんてことはない」


 気を取り直して顔をあげるとニカッと歯を見せて笑った。


「この十五年がなければリカやラレンといっしょに旅をすることもなかった。ジーと出会うこともなかったんだ。ほら、全然、ムダなんかじゃないだろ?」


「……」


 オリーの言葉に思うところがあったのだろう。バラハがハッと目を見開いたあと、うつむいて黙り込む――。


「〝女神の懺悔〟」


 その横でリカがぼそりとつぶやいたのに気が付いたのはラレンとジーだけだった。


「実に筋肉バカらしい能天気な考え方ですね」


 しばらく黙り込んだあと、バラハは苦笑いをもらした。


「でも、オリーらしい考え方です。そういうところに憧れていたから子供の頃にはオー君、オー君といつも後ろをくっついてまわってましたし、そういうところが大好きだから魔王を倒しに行くと言い出したときもいっしょに、行く……と……んんーーー!?」


 しゃべっているうちにみるみる青ざめ、それでも止まらない口に最後には両手で押さえてうめき声をあげたバラハにオリーは目を丸くした。かと思うとにっこにこの笑顔で両腕を広げた。


「そうか、俺に憧れてたのか。俺のことが大好きなのか。歓喜のほうよぅ……っぷ!」


「~~~っ!!!」


 両腕をガバッと広げて抱きついてこようとするオリーのみぞおちをバラハが杖でどついて遠ざけた。口を押さえたまま、顔を真っ赤にしたままで、である。そして、周囲を鬼の形相でにらみつける。目にはちょっとだけ涙がにじんでいる。羞恥の涙だ。

 バラハの表情に危険を感じたラレンとジーはピン! と背筋を伸ばすとビシッ! と同じ方向を指さした。


「犯人はリカだ」


「犯人は勇者様です」


「リカぁぁぁあああーーー!!!」


 杖を手に怒鳴るバラハを前にリカは勇者スマイルを浮かべたまま、あっけらかんと答えた。


「〝女神の懺悔〟の力を身をもって体験しておいた方がいいかな、と思って」


 そして――。


「歓喜のほうよ……!」


「うるさい、この筋肉バカがぁぁぁあああーーー!!!」


 こりずにバラハに抱きつこうとしたオリーは両腕を広げた姿で氷像と化したのだった。

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