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幼馴染が魔王/勇者でした。  作者: 夕藤さわな
05.究明編

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05-02 魔王の首より孫の顔。

「ちょっと……ちょっと、ちょっと、ちょっと……!」


「どうした、どうした! ちょっと、どうしたんだ……って、こりゃあ!」


「何? どうしたの? ……って、まあまあ! 大変! オリーとバラハじゃない!」


「誰か! 誰かーーー! ポーウェリーとブンナルの家に行って誰か呼んできて! おたくの行方不明だったタコ息子が帰ってきたわよって!」


「……タコ」


「そうだ、そうだ! 糸が切れたタコ息子が帰ってきたって大急ぎで伝えてやれ! 喜ぶぞ! たぶん、きっと!」


「……たぶん……きっと」


 第一村人に見つかったかと思うと一瞬で大騒ぎになった。麦のあいだやら小屋の窓やらドアやらから次々と顔を出す村人たちにオリーとバラハはもちろんのこと、リカもラレンも目を丸くする。

 フードを目深にかぶって顔を隠しているジーはあいかわらず淡々とした表情だ。でも、どこかから大声があがるたびに肩をビクッ! と震わせているから心の中では目を丸くしているのかもしれない。


「オリーが帰ってきたって!?」


「……!」


「バラハが帰ってきたっていうのは本当!!?」


「……!!!」


 あるいはビックリし過ぎて気を失う一歩手前かもしれない。ただ、そんなジーに気が付いたのは心配そうな顔をしているリカと〝魔王のクセに肝が小さすぎるだろ〟とあきれ顔のラレンだけだ。

 オリーとバラハ、村人たちの視線はあぜ道を駆け下りてくる四、五十代の恰幅かっぷくのいい女性二人と、そのあとを追いかけてくる同年代の男性二人に向けられていた。


「オリー!」


「バラハ!」


 オリーとバラハの姿を見た二人の女性は涙を浮かべながら両腕を広げ、抱擁ほうようを――。


「〝魔王を倒してくる〟なんてとち狂った手紙だけ寄こして五年以上も音沙汰なしってどういうことだい! そろそろアンタたちの墓を作っちまうかって話してたとこだよ、このバカ息子が!」


「魔法の才能があるって言うから修行に行かせたっていうのにオリーといっしょになってどこぞをふらふら、ふらふらとほっつき歩いて! お金かき集めて王都に行かせたのは水魔法で畑に水をまいて、風魔法で麦を刈ってもらうためだよ、このバカタレが!」


「イッテェ!」


「……!!!」


 ……抱擁をするなんてことはせず。一切の迷いなく、高く高く飛び上がると自分たちよりもずっと背の高くなった息子たちにジャンピング拳骨を落とした。


「長男のバラハ(アンタ)がふらふらしてるあいだに妹たちはみんな、結婚して、村を出て、子供産んで、お母さんになってるよ!」


「そら、聞いたことか! まわりはみんな、お祖母ちゃん、お祖父ちゃんになってるって言うのにうちは一人息子のオリー(アンタ)がふらふら、ふらふらしてるせいでいまだに孫どころか嫁の顔すら拝めてない!」


「いや、あの、なんて言うか……」


「その件については大変もうしわけなく……」


「あーあー、魔王の首より孫の顔を見せてもらいたいもんだよ!」


「魔王の首……!」


 オリーの母親の言葉にまず真っ先に反応したのは当の魔王であるジーだ。目深にかぶったフードの中であいかわらずの淡々とした表情をしているけれど、よく見れば青ざめている。

 ジーが凍り付いたことに真っ先に気が付いたのはすぐ隣にいたリカだ。


「ジー君の敵は僕の敵。ジー君を傷付けようとするのなら僕は全力でジー君を守るし、全力でジー君を傷付けようとする者たちを排除する。というわけで排除する? 排除する???」


 ニコニコの笑顔で殺気をダダ洩れさせるリカに青ざめたのはオリーとバラハ、ラレンの勇者パーティの面々だ。


「か、かかか母ちゃん、ちょっと黙って! 排除されるから! 排除されちゃうから!」


「リカも落ち着いてください! 魔王の首より孫の顔が見たいんです! オリーのオバサンは孫の顔が見たいだけで魔王の首にはまったく! 全然! 少しも! 興味はないんです!」


「孫の顔を見せてくれるついでに魔王の首を見せてくれたって構やしないよ!」


「魔王の首を持ってこれるもんならね!」


「よし、排除――!」


「母さん、オバさぁぁぁあああーーーん!!!」


「母ちゃんもオバチャンもホント黙って! 命、大事に!! 命、大事に!!!」


 腰に手をあててフン! と鼻を鳴らすオリーと自分の母親を前に髪をかきむしるバラハと。ニッコニコの笑顔で鞘から神剣を抜こうとするリカを後ろから羽交い絞めにするオリーと。この騒ぎであいかわらずの淡々とした表情、かつ立ったまま気を失っているらしいジーと。ついでにわけもわからずにやんややんやとはやし立てている村人たちをぐるりと見まわして――。


「事情をなんにも知らないとは言え、勇者様のこの殺気に気が付かないなんて……なんて怖いもの知らずなんだ……」


 ラレンは震える声でつぶやいたのだった。

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