05-01 空間転移とは。
空間転移とは魔法使いや白魔導士といった魔力を扱う職業の者たちが覚えられるスキルの一つだ。事前に特定の場所を〝覚えて〟おくと、その場所につながる〝扉〟を開けるようになるのだ。
覚えておける場所は一か所から、最大で四か所。術者の魔力量、スキルとの相性で覚えておける場所の数は変わる。ちなみにバラハは三か所、ラレンは二か所、覚えることができる。
〝覚えている場所〟で一番多いのが目的地から一番近くて安全な村や町だ。
例えばダンジョンや危険な森に入ったとき。仲間が致命的な傷を負ったり、パーティが壊滅しかねない状況に陥ったら、そのときこそ空間転移の出番。
空間転移を使ってパーティ全員で一番近くて安全な村や町に緊急避難。そのあとは傷を癒して態勢を立て直し、再挑戦するもよし。あきらめて撤退するもよし。
命あっての物種。何がなんでも生きて帰るための手段。
それが多くの術者が〝目的地から一番近くて安全な村や町〟を覚えておく理由だ。
次に覚えておくことが多い場所は王都だろうか。
王都には様々な物や人、情報が集まる。目的地から一番近くて安全な村や町に緊急避難したあと、一度、王都に戻って必要な物を買い足したり、情報を仕入れてから再挑戦したり――なんてことができるのだ。
そして、さらにその次に覚えておくことが多い場所が――。
「帰ってきたぞーーー!」
「……帰ってきてしまいましたね」
家族や恋人が待つ場所。我が家とか故郷とか呼ばれる場所だ。
生まれた村が魔族に襲われて焼け落ちたあと、村人全員で引っ越し、協力して拓いた村のはしっこに空間転移で出現したオリーは両腕を振り上げ、バラハは引きつった笑みを浮かべた。
「ここがオリーとバラハの故郷かぁ」
「ここがオリーとバラハの育った村? ……え、村? 人が住んでるの?」
黄金色の麦が風に揺れる光景にリカは目を細めて微笑み、世間知らずな王子様のラレンはぽかんと口を開ける。
そして――。
「……」
黒いマントについているフードを目深にかぶったジーはいつもどおりの淡々とした表情であたりを見まわした。心の中では緊張した面持ちなのだろう。十五年振りの人族の村にごくりとつばを飲み込むジーをちらりと見てリカは手を差し出した。
「ほら、ジー君」
「すまない。……ありがとう、リカ」
そう言ってジーは震える手を伸ばした。
微笑み返すリカに手を引かれてジーはゆっくりと、オリーとバラハの後を追いかけ、彼らが育った村の中央へと歩き始めた。
彼らの生まれた村を襲った魔族について、村人たちから話を聞くために。




