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幼馴染が魔王/勇者でした。  作者: 夕藤さわな
03.空気編

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03-01 ……頼む。

「ジラウザ様、本日のお夕食をお持ちしました」


 黒い執事服を着た老紳士がテーブルに次々と皿を並べていく。いつも通りの美しい盛り付けと美味しそうな匂いに目を細めてジーは老紳士を見上げた。


「ありがとう、ジーキル。料理人たちにもお礼を言っておいてくれ」


「かしこまりました、ジラウザ様」


 胸に手を当てて一礼すると老紳士――ジーキルはテーブルの横に立った。ジーが夕食を口に運ぶのを実の祖父のように優しい眼差しで見守る。

 しかし、その目が不意に曇る。


「そういえば、ジラウザ様。勇者一行を生かして帰したそうですね」


 ジーキルは心配そうな顔で尋ねた。表情には出ないけれど美味しい料理に夢中のジーはそんなジーキルの表情の変化に気が付かない。


「ああ、勇者が私の幼馴染で親友だったのだ。リカも私と同じ、魔族と人族のハーフだ。だから……」


「つまり、半分は人族の血が混じっているということですよね」


 だから、心配しなくていい。

 そう言う前に言葉をさえぎられてジーは顔をあげた。そこでようやくジーキルの表情が暗いことに気が付いてナイフとフォークを持つ手を止めた。


「……ジーキル」


「じいはまだ十才になるかならないかの頃からジラウザ様のお世話をさせていただいております。だからこそ、ジラウザ様がお優しい方だとよく存じ上げております」


「……」


「ジラウザ様が前魔王様の御世から魔王城に仕える者たちはもちろん、町で暮らす者たちのことも気にかけ、良くしてくださっていることも皆、わかっています。ですが、それでも魔族の多くはジラウザ様を今でも恐れています。ジラウザ様に流れる人族の血を、恐れているのです」


 ジーキルの言葉にジーは目を伏せた。

 魔王城で暮らすようになって知ったのは魔族が人族が思っているような暴力的な種族ではないということ。魔族は本来、臆病で争いを恐れる。魔族よりもよっぽど好戦的な人族のことも魔族たちは恐れ、避け、近寄らないようにしていた。

 半分は人族の血を引くジーのことも、だ。


「ジラウザ様のお立場をこれ以上、危ういものにしないためにも次にこの魔王領で勇者一行を見かけることがあったなら一切の甘さを捨て厳正に処分していただきたいのです。魔王として。魔族の長として」


 ジーキルの表情が辛そうなのは優しい性格だとよく知っているジーにむごいことを頼んでいるとわかっているから。魔族と人族のハーフであるジーにとって幼馴染で親友と呼べる存在がどれほど得難えがたいものかをよくわかっているからだ。


「……わかった」


 ジーキルの気持ちをわかっているからこそ、ジーは素直にうなずいた。感情が出にくい自身の顔にこのときばかりは感謝する。

 こっそりとため息を一つ。夕飯の続きに戻ろうとニンジンをフォークで刺したところでジーは手を止めた。


「だが、しかし……どうしても確認しておきたいことがあるのだ。リカが……私の幼馴染が魔王城を再び訪れることがあったら追い返さずに魔王の間まで連れてきてもらえないだろうか。他の者の目には触れぬように、こっそりと。……頼む」


 そう言ってじっと目を見つめるジーにジーキルはゆっくりとまばたきを一つ。


「かしこまりました、ジラウザ様」


 胸に手を当てるとうやうやしく一礼したのだった。

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