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幼馴染が魔王/勇者でした。  作者: 夕藤さわな
02.野宿編

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02-03 初めてだったんだ。

 足音を立てないようにそっと近付いたつもりだったけど、あっさりと気付かれてしまった。


「突っ立っていないで隣に座りなよ、ラレン」


 川のほとりに腰かけたリカは振り返るとラレンを見上げてにこりと微笑んだ。少し迷ったラレンだったがリカが隣をポンポン……と叩くのを見て、結局、腰を下ろした。

 そして――。


「ゆ、ゆゆゆ! ゆゆゆうしゃさまのとなり……ゆうしゃさまのとなりぃぃぃーーー!!!」


 ガクガクブルブルと小刻みに震え出した。


「ラレンはいつまで経っても僕の隣に座ると震えるね」


 隣で震えるラレンを見てリカはくすくすと笑いながらスープを口に運ぶ。


「……ごめんね、ラレン」


 不意に聞こえた小さな声にラレンをガクガクブルブルと震えるのをピタリとやめるとリカの横顔を見つめた。


「気を遣わせてしまってる。ラレンにも、オリーとバラハにも」


「あ、いえ……」


「それに……頭に血が昇っていたとはいえ、ずっといっしょに旅をしてきたみんなに剣を向けるなんてどうかしてた。本当に……ごめん」


「いえ……いいえ! いいんです! だって……」


 正気を取り戻してくれたのなら。いつもの勇者様に戻ってくれたのなら。あれくらい構わない。全然、大した問題じゃない。

 そう言おうとしていたラレンは――。


「でも、ごめん。僕はやっぱり魔王を倒せない。ジー君に剣を向けるなんてできないんだ」


 あとに続くリカの言葉にみるみるうちに肩を落とした。


「勇者、様……」


「だから、僕の魔王を倒す旅はここでおしまい。みんなともここでお別れだ」


 別れたあとはどうするつもりなのか。どこに行くつもりなのか。

 聞きたいことはいろいろと浮かぶけど、月の光にキラキラと輝く川面かわもを見つめて微笑むリカの横顔を見つめているうちにラレンの口から出た問いはジーについて。リカの過去についてだった。


「勇者様はどうしてそんなにも魔王アイツを信用するんですか。子供の頃、いじめっ子からかばってもらったからですか」


「それもあるけどそれだけではないかな。いじめっ子からかばってもらったっていうのはジー君と出会ったきっかけでしかないから」


 ラレンの目に浮かぶ感情は暗く、重苦しく、冷たい。それに気が付いているのか、いないのか。気が付いていて見て見ぬふりをしているのか。

 リカは口元に静かな微笑みを浮かべて話を続けた。


「ジー君がいじめっ子からかばってくれたあともジー君のいないところで僕はいじめられてた。それに気が付いたから……というわけではないだろうけど、ジー君は言ってくれたんだ」


 ――リカの銀色の髪も金色の瞳もとても綺麗だ。

 ――恥じたり隠したりするなんてもったいない。

 ――そのままのリカでいい。


「そのままの僕でいい。そんなこと……村の連中はもちろん、僕を生んですぐに姿を消した魔族の母も、僕を育ててくれた人族の父も祖母も言ってくれたことはなかった。この髪もこの瞳も魔族の血が混じっているという証拠で、隠すべきものだったから」


 月の光のような銀色の髪をなでながらリカは自嘲気味に笑う。見ている方まで胸が苦しくなるような微笑みにラレンは自身の胸を押さえた。

 でも――。


「ジー君にそう言われたとき、すごくうれしかったんだ。顔をあげることができた。自然と背筋が伸びた。僕は僕のままでいいんだと思えた。それから僕は強くなれたんだ」


 〝そう言われたとき〟と同じように顔をあげ、背筋を伸ばし、月そのもののような金色の瞳をキラキラと輝かせるリカを見て、ラレンはさらに強い力でぎゅっと自身の胸を押さえた。


「そんなこと……勇者様は勇者様でいいなんてそんな当たり前のこと、僕もオリーもバラハも、誰だって言います! いくらだって言いますよ! 魔王アイツが特別なわけじゃ……!」


「ジー君と出会って、過ごした全部の時間、僕はただのリカルド・ウィンバリーだった。女神アルマリアから神剣を授かってもいなければ勇者でもなかったんだよ」


 リカがあえて口にしなかった事実を想像してラレンは唇を噛んだ。

 オリーとバラハはリカが女神アルマリアから神剣を授かってから。ラレンは神剣を手に入れたあと、アルマリア神聖帝国王宮で勇者の称号を授かるときに初対面を果たしている。

 ただのリカルド・ウィンバリーには会ったことがないのだ。


「そんなこと……」


「そうだね。ラレンもオリーもバラハも僕が女神アルマリアから神剣を授けられた勇者じゃなくても〝僕のままでいい〟と言ってくれたかもしれない」


 リカの穏やかな微笑みに他意が含まれているようには見えない。


「だけど、〝かもしれない〟ではなく〝僕のままでいい〟と言ってくれたのはジー君だった」


 だからこそ、ラレンはきつくきつく自身の胸を押さえた。


「ジー君が、初めてだったんだよ」

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