人に教えるのって、案外難しい
加藤母「ねえアンタ。今週の日曜日って暇??」
加藤「はあ??なんで??」
母「あのね、いとこの田中君に勉強を教えて欲しいんだけど…」
加藤「いとこの田中…??あー、中学1年生の??」
母「そうそう。で、彼のお母さんが「どーしてもこの子の成績が上がらない。誰か助けて」って言ってくるもんだから、アンタちょっと勉強見てきてよ」
加藤「はあ!?なんで俺が!?」
母「一番最近、中学生の勉強したのアンタでしょうが!!」
加藤「そんな理由!?母さんだって親父だって、中学の範囲くらいわかるだろ!?」
母「いや、実は私とお父さんは、一緒にミュージカル見に行くの♡」
加藤「おいコラ!!息子を置いて、なに2人で出かけてんだ!!」
母「だってアンタ、ミュージカルなんて興味ないでしょ??」
加藤「うん、まあ、それはそう(笑)」
母「じゃ、よろしくねー!!(笑)」
加藤「おいコラ!!」
バタン
加藤「…………………」
加藤「畜生…なんで俺がこんな目に…」
加藤「そうだ!!俺の妹にこの仕事を押しつけよう!!」
妹「私もまだ中1なんですけど!?」
加藤「いーじゃん。同い年だからこそ教えられることあるだろ」
妹「ねーよ!!」
加藤「あ、そうか。そういえばお前も成績悪かったな(笑)」
妹「やかましい!!」
加藤「うわー、マジでめんどくせえ…」
prrrrrrrrr(電話の音)
加藤「あれ??母さん??」
母「あ、言い忘れたけど、時給2000円あげるわよ(笑)」
加藤「やりますやります!!」
~日曜日~
加藤「今日はよろしく」
田中「どうも」
加藤「なんか君のお母さんに、君の勉強を見てくれって頼まれたんだけど…」
田中「そうみたいですね。」
加藤「なに??成績悪いの??」
田中「まあ親は納得いってないみたいなんスよね…」
加藤「どれどれ…は??」
『数学92点 国語88点 英語90点 理科85点 社会94点』
加藤「えーーと…全部バカ高くね??」
田中「お母さんは、全教科100点じゃないと納得しないです」
加藤「毒親!?」
田中「で、今日は天才高校生の加藤さんに教われ、と言われました」
加藤「え、えーーと…天才?(笑)」
田中「よろしくお願いします。加藤さん」
加藤「あ、ああ…」
加藤(ま、まあ、たかだか中1の勉強だろ??余裕余裕…のはず…)
加藤「は??ムッズ…」
田中「まあ一応、都内で一番偏差値の高い中学なんで。」
加藤「そうだったの!?」
田中「でも、その1問目くらいは解けますよね??」
加藤「え!?ま、まあな!!この程度はな!!」
田中「じゃあ、答え教えてください」
加藤「いや、まあ、すぐに答えを聞くのは良くないぞ??」
田中「いや、俺はもう解けてるんで。早く先生の実力を教えてください」
加藤「こっわ!?」
田中「早く答え言ってくださいよ。この程度の問題、一瞬で解けなきゃダメですよ」
加藤「…………………」
田中「え…??もしかしてですけど、解けないんですか??高校生なのに??」
加藤「はい…しゅいましぇん…」
田中「はあ…マジで使えねーな、このゴミ…」
加藤「え??」
田中「俺、自分より頭が良い奴には敬語使うけど、バカには使わねーから」
加藤「え??田中君??」
田中「この程度の問題も解けないとか、ホントバカだなお前」
加藤「口悪!?なんだコイツ!?」
田中「アンタに教わることなんてないから、ゲームしまーす(笑)」
加藤「なんだとこのクソガキ!?」
田中「でも、先生もサボれていーじゃん(笑)」
加藤「それは確かに!!」
田中「じゃ、授業は終わりで」
加藤「じゃ、俺もここにある漫画読んでていい!?」
田中「どうぞ。」
〜1ヶ月後〜
田中母「どういうことですか??息子の成績がさらに下がってるんですが!?」
加藤「いや、たかだか全教科1点ずつ下がっただけじゃないですか(笑)」
田中母「たかだか1点ですって!?アナタは息子の成績を1点でもあげるために雇ったんですよ!?それが逆に下がってどうするんですか!?」
加藤「いえ、それはその…お宅の息子さん、あんまり勉強のやる気がなくてデスネ…」
田中母「それをなんとかするのがアナタの役目でしょ!?給料0にしますよ!?」
加藤「は、はいいいい!!お任せください!!」
〜田中の部屋〜
加藤「おい。というわけで勉強するぞ!!」
田中「嫌だ。」
加藤「ダダこねんじゃねえ!!」
田中「だって、アンタに聞いても何もわかんないじゃん(笑)」
加藤「そんなわけねえだろ!?高校生を舐めんじゃねえ!!」
田中「じゃあこの問題解ける??」
加藤「解けない!!」
田中「やっぱダメじゃん(笑)」
加藤「いいから勉強しろ!!」
田中「先生みたいな、尊敬すべきポイントが一切ない人にとやかく言われても、まっったく勉強する気が起きねえんだよな(笑)」
加藤「尊敬すべきポイントがねえだと!?」
田中「うん。だって実際、俺より頭悪いし(笑)」
加藤「確かにそうかもしれん…だがなあ、人生経験は俺のほうが上だ!!」
田中「は??」
加藤「だから、勉強以外のことなら色々教えられるぞ!?」
田中「それもう、家庭教師じゃねえじゃん!!」
加藤「運動とか恋愛とか、高校生活とか、好きなこと聞いてみろ!!教えてやるよ!!」
田中「いや、いらな!!勉強を教えろよ!!」
加藤「やかましい!!勉強は自分でやれ!!」
田中「おーい母さん。コイツ、さっさとクビにしたほうがいいよ(笑)」
加藤「大体、そんな頭のいい中学行く奴はほっといても勉強できるんだから、それ以外の生活面をこの俺様が教えてやるよ!!」
田中「でも別に、生活面もいらないんだよなあ…」
加藤「は??」
田中「だって俺別に、運動も得意だし」
加藤「はああ!?お前、ただのガリ勉だろ!?嘘つくんじゃねえ!!勉強ばっかやってたガリ勉が運動得意なワケがない!!」(※偏見です)
田中「いや、俺今サッカー部のスタメンだよ??1年生なのに(ドヤ顔)」
加藤「うるせえ!!サッカーだけできればいいってもんじゃねえ!!」
田中「それに小学校の頃は野球も水泳もやってたし、賞も取ったこともあるし、体育の授業は最高評価しかもらったことないけど??(笑)」
加藤「…………………」
田中「あれ??どーしたの??(笑)」
加藤「い、いや??まあそんくらい別に普通だが、まあ、運動面では問題無さそうだな…」
田中「恋愛面もいらないよ。彼女いるし」
加藤「は??」
田中「彼女いるし」
加藤「は??誰が??」
田中「俺が」
加藤「架空の??」
田中「いや、現実の」
加藤「妄想じゃなくて??」
田中「だから現実だってば」
加藤「へ、へえーー…や、やるじゃん…」
田中「ちなみに先生はいるの??(笑)」
加藤「せ、先生か!?い、いるに決まってるじゃないかー!!こら高校生をナメちゃいけないよ??青春ど真ん中よ??高校生は。モテモテよ」
田中「へえ。じゃあ彼女見せてよ(笑)」
加藤「い、いやー、見せたいのはヤマヤマなんだけど、じゅ、授業中はほら、ケータイいじっちゃダメだからさー!!」
田中「急に真面目ぶるなよ!?さっきまで勉強教える気無かっただろうが!!」
加藤「だからねー無理なんだー。本当はね、俺の超絶美人彼女を見せたいんだけどさー、残念残念!!」
田中「へえ。先生いるんだ。めっっちゃ彼女いなさそうなのに…(笑)」
加藤「ああん!?」
田中「てゆーか、できたことなさそうなのに(笑)」
加藤「おい。シバくぞクソガキ!!」
田中「マジでモテなさそう(笑)」
加藤「なんだと!?」
田中「というわけで、彼女もいないできたことない頭も悪い運動神経もなさそうな先生に、教わることなんて何一つないので。お疲れ様でした(笑)」
加藤「ああん!?マジでぶち殺すコイツ!!」
田中「あまり強い言葉を使うなよ。弱く見えるぞ(笑)」
加藤「おいテメエ!!」
田中「なんすか??」
加藤「だったら俺と勝負しろ」
田中「はい??なにで??」
加藤「バドミントンだ!!これならお互い初心者だろ!!」
田中「いーすよ。なら公園行きましょ」
加藤「公園行ってきます!!お母さん!!」
田中母「ちょっと、勉強は!?」
加藤「公園でしてきます!!」
田中母「いや正気!?」
〜公園〜
田中「ゲームセット。21対1で、俺の勝ち」
加藤「…………………」
田中「チクショー、ネットに一本かかっちゃったわ。ラブゲームできずに悔しい」
加藤「ま、バドミントンは苦手だからな。仕方ない」
田中「先に言えよ!!」
加藤「次は卓球だ!!体育館行くぞ!!」
〜5分後〜
田中「ゲームセット。11対1で俺の勝ち」
加藤「…………………」
田中「チクショー、ネットに一本かかっちゃったわ。ラブゲームできずに悔しい」
加藤「ま、卓球も苦手だからな。仕方ない」
田中「アンタが得意なのどれだよ!!」
加藤「えーと、跳び箱とか??」
田中「地味!!」
田中「…だけどいいよ、跳び箱やる??(笑)」
加藤「いや、つまんないんでいいです♨」
田中「なんなのコイツ!?」
加藤「あー、なんかいい競技ねえかな〜」
田中「だったらいいよ、アンタが習ってた奴で(笑)」
加藤「え??」
田中「アンタ、何部??」
加藤「い、いやー、流石に悪いよ。それはフェアじゃないし…」
田中「だからいいってば。アンタの得意競技でやろーよ。それで負けたら勉強するって」
加藤「い、いやー、そういうフェアじゃない勝負はちょっと…」
田中「俺がいいって言ってんだからいいじゃん」
加藤「い、いやー、ボコボコにしちゃったら、流石に可哀想だからさ…」
田中「別にいいよ」
加藤「い、いやー、フェアじゃないからなあ…」
田中「しつこいわ!!さっさとやるぞ!!お前は何部だっつーの!!」
〜近所のテニスコートにて〜
田中「うわー、テニスマジで久しぶりだわ!!」
加藤「……………………」
加藤(久しぶりだと!?これなら、マジで勝てるかも!?こっちは週5でやってるからな!!死んでも負けられねえぞクソが!!)
田中「早くやろーぜ」
加藤「おい!!お前マジで、この試合に負けたら勉強するんだな!?」
田中「うん」
加藤「よし!!なら3ゲーム先取だ!!」
〜10分後〜
田中「ゲームセット。3ー0。俺の勝ち」
加藤「…………………」
田中「え、本当にテニス部??もしかして嘘??(笑)」
加藤「…………………」
田中「相手にならなかったなあ…(笑)」
加藤「実は、嘘なんだよね!!」
田中「は??」
加藤「俺、テニス部じゃないんだよね!!」
田中「へぇ。じゃあ何部だったの??」
加藤「えーーと…カバディ部!!」
田中「あ、そう。じゃあカバディで勝負しようか?(笑)」
加藤「なんで知ってんの!?」
田中「この前動画で見た」
加藤「やっぱ違う!!射撃部だった!!」
田中「いーよそれでも別に」
加藤「やっぱ違う!!ブレブブメンロード部だ!!」
田中「あー、あれね。いいよ、やる??(笑)」
加藤「正気かコイツ!?てかなんで知ってんの!?」
高木「何をしてんだ??加藤(笑)」
加藤「げ!?高木!?」
田中「誰ですか?あれ」
加藤「俺の友達の、高木だ…」
高木「誰?ソイツ」
加藤「実は、俺のいとこのゴニョゴニョ…」
高木「へえ。何かの運動競技で勝てば言う事を聞かせられんの??(笑)」
加藤「まあ、そういうことだ」
田中「俺に勝てばね??(笑)」
高木「今暇だし、いっちょやるか(笑)」
田中「マジすか!?お願いしまーす(笑)」
〜10分後〜
加藤「ゲ、ゲームセット…3対0で、高木の勝ち…」
田中「ま、負けた…嘘だ…」
高木「でも普通にうまかったよ。初心者でしょ??センスあるわマジで」
加藤「…………………」
田中「次、別の競技お願いします!!」
高木「いーよ、何でも(笑)」
〜しばらく後〜
田中「卓球もバドミントンも野球もサッカー(PK)も負けた…スゴイわこの人…」
高木「いやいや。どれもギリギリだったよ。流石はサッカー部のスタメンだぜ」
加藤「…………………」
田中「師匠!!」
高木「し、師匠!?」
田中「俺に、勉強を教えてください!!」
高木「ええ…??まあいいけど、俺別にそこまで頭良くねえぞ??(笑)」
加藤「そうそう。コイツは難関中学に通うトップエリートだからな。お前じゃ無r」
田中「いえ、高木先輩ならいけます!!絶対勉強もできるオーラがするんで!!」
加藤「おい!!どういうことだそれは!?俺にはオーラがないとでも言うのか!?」
田中「雑魚の加藤は黙ってろ」
加藤「ああん!?なんだその、俺との扱いの差は!?」
高木「まあ、教えられる範囲で教えるわ」
田中「ホントですか!?」
高木「うん」
田中「嬉しいです!!高木さん、これからよろしくお願いします!!」
加藤「おい!!何だその態度は!?俺の時はあんだけ口が悪かっただろうが!!」
田中「当たり前だろ。加藤のゴミなんて、リスペクトする所ねーもん(笑)」
加藤「こんなクズいとこ、一生関わりたくねえ!!」
~完~




