命大事に(しすぎ)おじさん
〜土曜日〜
加藤「げえ…」
志村「なんで古手川が学校に…」
古手川「いや、この学校の生徒なんだから、別にいてもいいでしょうが!!」
加藤「いや、なんで休日にいるんだよ」
志村「そうだよ。お前部活ないだろ?」
古手川「自習よ自習。ずっと家にこもってると気分が悪いからね。気分転換」
加藤「休日も学校来て勉強って、なんて暇なやつだ…」
古手川「いや暇ではないけど!?勉強してるんだし!!」
加藤「普通誰かと遊ぶだろ…」
志村「おいやめろよ加藤。古手川は友達いないんだよ」
加藤「あ、そっか…悪いこと言った…」
古手川「そこ、やかましい!!いるわ友達くらい!!ただ勉強が好きなだけよ!!」
加藤「勉強が好き?正気じゃねえ…」
志村「ああ。同じ人間として恥ずかしい」
古手川「それほど!?勉強が好きなだけで!?」
志村「ま、とにかく俺らは帰るから。古手川はまだまだ勉強頑張ってくれ(笑)」
古手川「いや、私もちょうど帰るとこだけど」
志村「いや、ついてくんなよ!!」
古手川「ついていってねえわ!!」
〜帰り道〜
志村「ついてきてんじゃん!!」
古手川「たまたま方向が同じなだけだわやかましい!!」
古手川「それとも何かしら?私がいるとしづらい話でもあるのかしら?(笑)」
志村「いや、そ、そそそそんなわけねえだろ!!」
古手川「めっちゃそんなわけありそう!!」
加藤「チックショー、アイツがいたら下品なエロい下ネタ話ができねえ…」
志村「それな…昨日みたAVの話とかしたいのに…」
加藤「もうやっちまうか?逆に聞かせて追い払うか?(笑)」
志村「いや待て。もし聞かれて後日新垣さんとかに話されたら、俺達の人生は終わる…」
加藤「確かに!!畜生!!早くどっかいけ!!」
古手川「何をゴニョゴニョ話してんのかしら、あのバカども…」
オッサン「ああああああああああ!!」
加藤「なに!?」
志村「ビックリした…」
オッサン「君、足を動かさないで!!」
加藤「はあ??」
志村「なんだこのオッサン」
オッサン「いいから足を動かすな!!」
加藤「なに!?」
オッサン「今からそこを、アリが通る」
加藤「は??」
オッサン「よく見ろ。アリが歩いてるだろ?」
加藤「ええまあ…」
志村「はい…」
オッサン「だから、そこを通るな」
加藤「いやダッル!!」
志村「乗り越えればいいだろうが!!」
オッサン「いやまて!!その先を見ろ!!」
加藤「え??」
オッサン「アカムシがいる」
加藤「え?どこ?」
オッサン「ここだ」
加藤「え?どこ?」
オッサン「ここだ。この虫眼鏡で見ろ」
加藤「ちっっさ!!」
志村「こんなもん気づくか!!」
オッサン「小さくても踏むな。命だ」
加藤「ならどうしろと!?」
志村「動けねえじゃん!!」
オッサン「だから、歩くな」
加藤「無茶言うな!!」
古手川「なんなの?このオジサン」
加藤「いや、俺らも知らん」
志村「なんか急に絡んできた」
オッサン「おい!!何を普通に歩いてんだ!!」
古手川「え??なに??」
オッサン「アンタが今歩いたせいで、この道にいた生き物の命が失われた!!」
古手川「はあ??」
オッサン「アンタの足元にアリがいたんだ!!アンタはそれを踏んだんだ!!」
古手川「え?ウソ!?」
オッサン「間違いない。今踏みつぶした。足をどけて見てみろ」
古手川「ええ…」
古手川「って生きてるじゃない」
オッサン「…………………」
加藤「…………………」
古手川「…………………」
オッサン「ま、とにかく、地面には様々な生き物が歩いて生活しているんだ」
古手川「何事もなかったかのように話を進めるな!!」
オッサン「つまり、お前達に伝えたいのは、この道を歩くな、ということだ」
加藤「じゃあどの道を歩けばいいんだよ」
オッサン「生き物が住んでない道だ」
加藤「それ、どこ?」
オッサン「そんなものはない!!」
加藤「マジなんなのコイツ!?」
古手川「ならどうしろと!?」
オッサン「つまり、どの道も歩くなと言うことだ」
加藤「何いってんだこのオッサン…」
志村「マジ意味不明」
古手川「別にアリを避けて歩けばいいでしょ。それじゃ」
オッサン 「ちょっと待てやゴルアアア!!」
古手川「なに!?」
オッサン「よく見ろ!!」
古手川「え?」
オッサン「そこに草が生えるだろう!!」
古手川「え?うん」
オッサン「踏めばどうなる?」
古手川「どうもならない」
オッサン「違う。死ぬんだ」
古手川「死なねーよ!!草ナメんな!!」
オッサン「違う。その草に住んでいる虫たちが死ぬんだ!!」
古手川「は??虫??」
オッサン「その草にもなあ、沢山の虫が住んでて幸せに生きてんだよ!!」
古手川「そうなの?」
オッサン「ああ。虫眼鏡で見ればわかる」
古手川「ダル!!持ってねえわ!!」
オッサン「ほれ、虫眼鏡」
古手川「なんで持ってんの!?」
オッサン「常に持ち歩いている」
古手川「こわ!!」
オッサン「とにかく、それで見てみろ。大量の虫たちがそこにくっついているはずだ!!」
オッサン「いいか?我々が一歩歩くたびに、多くの命が失われてしまっているんだ!!それを理解しろ!!」
古手川「あの、何も見えませんけど」
オッサン「そんなわけはない。貸してみろ」
古手川「どうぞ」
オッサン「…………………」
古手川「…………………」
加藤「…………………」
オッサン「…………………」
オッサン「まあとにかく、命は大事ということだ」
加藤「だから無理矢理話を進めんな!!」
古手川「全然いなかったじゃねーか!!」
オッサン「えーいやかましい!!だったら俺の家から超高性能顕微鏡を持ってきてやる!!そこで待ってろ!!」
ダダダダダダダダ
加藤・古手川「「いや、アンタはめっちゃ歩くんかい!!」」
〜10分後〜
加藤「なんだあのジジイ…」
志村「てかもう帰らね?」
加藤「それな」
古手川「律儀に待ってる必要ないわよね」
ダダダダダダダダダ
加藤「げ!?帰ってきた…」
オッサン「ゼエゼエ…」
オッサン「なかった」
加藤「いやなかったんかい!!」
志村「時間返せクソジジイ!!」
オッサン「まあとにかく、そこにはいくつもの命があるんだ」
加藤「それはもうわかったから」
オッサン「いいか!?これからの時代、命を大事にだ!!」
加藤「ハイハイ」
古手川「わかりましたから」
オッサン「だからこれからは、何も殺しちゃいかん」
オッサン「豚肉や牛などの食べ物も食べるな。口にしていいのは植物のみ」
古手川「いやビーガンか!!」
志村「てか、植物も生き物じゃね?」
オッサン「…………………」
志村「…………………」
加藤「…………………」
古手川「…………………」
オッサン「なら、植物も食べちゃいかん」
志村「つまり死ねと!?」
オッサン「そういうことじゃ」
志村「そういうことじゃ、じゃねーよ!!」
加藤「自分の命を大事にさせろ!!」
オッサン「ジョーダンじゃ」
加藤「どっから!?」
古手川「もう疲れた。帰る」
志村「それじゃ」
オッサン「だから、歩くなっつーの!!」
加藤「無茶言うなっつーの!!」
志村「大体テメエは、歩くどころかさっき走っていたじゃねえか!!」
オッサン「まったくバカだなお前達は。ワシはしっかりつま先立ちをして、できる限り地面に触れないようにしてたんだ!!」
古手川「嘘つけ!!私見てたけど、ガッツリ地面を踏みしめてたぞ!?」
オッサン「いいや。あまりの足の速さにお前の目が追いついてなかっただけだ」
古手川「そんな速くなかったわ!!50メートル10秒レベルの速さだった!!」
オッサン「はい残念。ワシの50メートルの最速記録は、9.8秒じゃ」
古手川「いやどうでもよ!!変わんねえし!!」
オッサン「あれはそう、わしが小学6年の時のことじゃ…」
古手川「太古の昔の話じゃねえか!!」
加藤「あーもういい。警察呼ぼうぜ」
志村「それな。不審者として突きだそう」
オッサン「どうぞ。お通りください」
古手川「解決した!?」
オッサン「ワシは、生き物の命の大事さをわかってもらいたかっただけじゃ。迷惑をかけるつもりはない」
加藤「いやもう既にだいぶ迷惑だったけど!?」
志村「命大事にとはいっても限度があるわ!!」
オッサン「とにかく、これからは路上にいる小さな虫にも気を配って歩いてくれ」
加藤「はあ…」
古手川「ダル…」
オッサン「ワシのように、しっかり下を見て歩くんじゃ。下を見てると、色んな虫がいて」
ドライバー「危なああああい!!」
ブレーキキイイイイイイ
オッサン「ひいいいい!!」
ドライバー「おいどこ見て歩いてんだこのクソジジイ!!しっかり前見て歩けやゴルア!!」
オッサン「しゅいましぇんでした!!前を見ましゅ!!」
加藤「みんなは、しっかり前を見て歩こうね!!」
〜完〜