私は蒼薔薇の縁に触れる
縁
心の拠り所っぽいのいいですよね
縁もいいけど縁もね
異世界転生の乙女ゲームの婚約破棄モノですがちょっとした味変だと思ってください
私は此度寿退社することになった
相手は見合い相手という色気のないものだったけども
そして会社の仲間内で送別会が開かれた帰り際、
プレゼントの花束の死線から歩道に飛び込んできたトラックにひかれて呆気なく私は死んだ
目上に可愛がられて楽しい職場たったなぁ
婚約者には申し訳ない事になったなぁ
でも結婚はしてないから誰か好い人に恵まれますように
両親はもういなかったけど孫見せられなくて残念だ
みんなごめんね
そう思いながら意識は光に溶けた
くっ!
頭痛から目が覚めるとそこに金髪碧眼の少年やメイド服姿のお嬢様方が私を覗き込んで、ん?
私が倒れこんでいた?のかな?
とりあえず立たなくては……
と思ったがバランスを崩した私は少年に助けられた
助けられた支えてもらったのだけど、それでも私よりも背が高い……
え、あれ?何かが変
そばにいたお嬢様が私に声をかけてくれる
そして少年に頭をさげ、私を抱き上げてくれる
「お嬢様、おうちに戻りましょう、お医者様に早く見てもらいましょうね?」
少年は呆気にとられていたがお大事にと声をかけてくれた
メイドさん(と呼ぶことにした)の肩越しに見える少年へ頭を下げつつ馬車を止めてあるところまでの帰路を急いだ
馬車から見えるお城の景観に私はデジャヴを感じた
そしてまたもや私は意識を失った
それから数日ベッドの住人となった
メイドさんやお医者様、ご両親?等から、軽い記憶喪失なのでは?と説明を受け、色々聞いた
いわゆる異世界転生だった
お城の景観に覚えがあるのはある乙女ゲーのオープニングにあるからだ
そして最初にあった少年が第二王子で、私はその婚約者、そして、悪役令嬢というサファルローズ・フロスティ公爵令嬢なのだ
まぁ婚約者を決めるお茶会で粗相をしたので、婚約者候補に残ってるかどうか怪しい所なのだが
でも、婚約者確定かなぁ、数日後第二王子エルメオ殿下がお見舞いに来てくれたのだ
何度も
何故に??
そして婚約者に選ばれ、王妃教育等も始まった
マナー講習はきつかった
王子とは政略結婚でお互いに愛はない(設定)だったから今世の私達も付かず離れず、良くある結婚相手として愛そう支えていこうという情はあった
あったのだけどやっぱり乙女ゲーが始まると私達は疎遠となった
ヒロインの登場によって
でも私は勉強と王妃教育や執務補佐等で学園と王宮の往復しかできなかったので、ヒロインはいじめていないし、日頃から婚約者として影がつけられており、気の休まる場所はなかった
気が休まる縁は一つだけあったが
私はそれをギュッと握りこむ
卒業パーティーでそれは起こった
「サファルローズ、お前との婚約をエルメオ・ガティニアの名の元に破棄させて貰う!!
か弱い婦女子に暴言を吐き苛めるなど、おれの妻はおろか国母にふさわしくないからな!!」
自称か他称かわからないか弱い婦女子に腰をまわしながら、私を見下ろしている
ヒロインは顔を殿下の胸に埋めてはいるものの、愉悦を浮かべた口元に嫌悪感を感じた
なんとなく懐かしくもある
後輩にこういう子いたっけなぁ
昔を思い出していると宰相子息のレイガンが私の罪を羅列していく
彼、私の次席に連なる程の成績の持ち主なのに、何でちゃんと証拠集めとかしなかったのか
口頭だけじゃ駄目じゃない
お父上が嘆かれますよ
一応暴言、ならぬ苦言に対して迎撃させてもらう
上の爵位からしか声をかけない事や、名前の呼び方や許可の取り方、婚約者のいる相手に対しての適切な距離の取り方や貴族としてのマナーに関してだったのだが……
最初の「私が悪いの」はいい、「私が男爵だから」「~に愛されてるから嫉妬で苛めるなんて」「誰にも皆に愛される資格があるのに」「婚約者だからって彼を束縛しないで解放してあげて」等、自己愛強すぎる発言はどうなのだろう?
誑かされている殿下やレイガン、騎士団長子息のトマスもどうかとおもう
ごめんなさい、ゲームはほぼほぼスキップしてた記憶があるのでどんなシステムだったか覚えてないんですよね
対策らしい対策もしてないし、過労具合は前世の中間のヘルプで入った会社ぐらいのグレー感あったから、一女子に喧嘩吹っ掛けられなかっただけだからね?
結局彼らは私や彼らの婚約者達の反撃でHP0のシオシオになった所で、陛下ら大人達が入場され、ヒロイン共々貴族牢に放り投げられる事に
パーティーは終わり後日
非公認の王妃とのお茶会の名の元に、彼らの婚約者、いや、元かな?わからないけど彼らを赦す事はなさそうだし……あ、彼女らとのお茶会が始まりました
そこにはフラりというていで、陛下がいらっしゃり、陛下と王妃が頭を下げられました
どうやら彼ら有責での婚約破棄となるそうです
エルメオは王籍を抜かれ廃嫡で実りのない領地へ飛ばされたご様子
側妃腹の第一王子もいますし、王妃様のお子第三王子もいらっしゃいます
このお二人がいらっしゃるのに何故傲ってしまわれたのか謎な所
ゲームが始まる前はそんな所は微塵も感じませんでしたが、いつからは妄執を孕んでいらっしゃったのか
自分の忙しさはあるとはいえ、乙女ゲームの強制力という建前に、彼を見ていなかった事は悔やまれます
お茶会は各々彼女達の願いをひとつだけ王命で叶えさせてもらうと陛下直々に約束され家に戻る事になりました
私は帰る気になれず、王宮の庭園で休ませていただくことにしました
「(せっかく王妃教育頑張ったのになぁ)」
私はあの日の四阿にいこうと思いました
そして四阿の椅子に腰掛け、手にしていたボタンを眺めながら溜め息をつきます
「頑張ってみたのですけど、ね」
小さな私の小さな初恋だったのかもしれません
私はその頃王妃教育が嫌で、此処で小さく蹲って泣いてました
フラりと現れたその人は、大きなその手で私を撫で、四阿から覗く青空とその先を見つめながら、私を慰めてくれました
大事な方の為に頑張りたいのだと、彼を支え頼ってもらえる自分になりたいのだと、その人は語りました
それが陛下なのだろうと思いました
陛下は素敵な方で、前世からの性癖であるオジ専観点から見ても素敵な方でしたので、私も頑張ります!と小さな手をグッと握りしめた記憶があります
「私も貴方のようになりたいです、今日の決意表明の為に何かいただけないでしょうか?」
あぁあの日が懐かしい……
四阿の別方向から人影が見えました
私はすぐに立ち上がりカテーシーしました
「久しぶりだね、サフィちゃん……僕の息子達が失礼をした悪かったね」
レイガンの父である現宰相のレガリア様です
年の老いもありますが此度の事で更に窶れられたご様子です
「そうか、まだ持っててくれたのか」
私の手元のボタンを見て懐かしく微笑まれました
私はボタンを慈しむようになでます
「私の宝物ですの、挫けそうになった時もありましたが、何度コレに救われた事か……私の大事な縁です」
「隣にすわっても?」
私はこくんと頷きました
本来ならば婚約者や夫婦としか並び座る事はないのですが、彼は息子の同級という幼馴染みの子のように接して下さってるのと、私を励ます為にだったのでしょう
私をあの日のように撫でてくださいました
私は声を出さずに苦しさを覚えながら涙を溢します
婚約破棄があった日から出てこなかった涙です
くぅくぅと、絞り出すように嗚咽を溢しました
家族が抱き締め会うようにレガリア様は私の肩を抱き寄せられました
彼も思う所があったのでしょう
幼きレイガンを産み落としたその日に儚くなられた奥様と、此度廃嫡されるレイガンを、唯一の家族を失うのですから
暫く私達は肩を寄せあっていました
触れる肩がとても暖かく思いました
少しづつ涙の代わりに胸が苦しくなっていきます
離れたくないなぁと思いました
ハンカチで涙を拭いそして彼の手を握ります
「これからお互い大変ですわね」
自身を鼓舞し、彼を励ます為に赤みの残るその顔で微笑みました
あぁ離したくないなぁ
もうひとつの手を更に重ねました
「レガリア様には後継者がいらっしゃいませんがどうなさいますの?」
私の手を振りほどくでもなく苦笑され
「親戚から養子をとらないと、とは思ってる……けど」
まだお心が決まってないご様子
私は今しかない!と思いました
握ったその手の甲に口付け、乾かぬうちに想いを打ち明けます
「レガリア様はまだまだお若く、私にも婚約者はおりませぬ!私に貴方のお子を宿らせていただけませんでしょうかっっっ!!!」
勢いそのままにのめり気味に顔を近付け彼の瞳を見つめます
自分の子供と同じ年の娘からの告白に戸惑われてるご様子です
推すしかない!!
「わっ、私、陛下から何でも王命をもって願いを叶える許可をもらっていますの!!」
……暫く無言の時が過ぎました
手は繋いだままですし、きっと彼の頭脳の中で色々駆け巡っているのでしょう
私は待ちます
レガリア様が深く息をはきだしました
「宿すということは孕むという事だろう」
食い気味に返事をします
「はい、年が逆であれば難しいですが、旦那様が頑張ってくだされば第二子までは頑張れるかと思います」
「あ、気がはやいですね、旦那様っていっちゃった……えっと……駄目、ですか?」
とどめの上目遣いで彼を見上げます
「貴方の眉間や目尻、頬に刻まれる皺とともに私の想いを刻ませてほしいのです
きっとこれからの貴方もどんどん素敵になっていく
私は貴方の隣でみつめていたいのです」
彼は折れるように頷きました
「熱烈すぎるな……参った降参だ
僕はどうやら君を傷付ける言葉を選べないようだ」
「あの時の小さなレディが、こんなにも美しく華開くとはな……」
私は彼の手にボタンをのせます
「あの時もらった種が芽吹いただけです」
彼の手にのせられたボタンを彼は撫でてくれました
薔薇を象った飾りボタンは少しの蒼を残し地金の金色が鈍く光っています
共は蒼色に彩られた薔薇が色褪せる程、私は握りしめ、身につけてきました
私の大事な縁です
「王命ならしたかがない、か」
彼は私の手の甲にキスしながらニカッと微笑まれました
「王命というのは癪すぎる、な
サファルローズ・フロスティ公爵令嬢殿、この老いぼれレガリア・フレイヤードと婚姻していただけませんでしょうか?」
感動に胸が震えます
私も彼の手を取り返事をします
「はいっ!
これからの時を私と一緒に生きて下さい
私は貴方の隣で頑張っていきたい
貴方の隣で貴方か守ろうと頑張ってきたこの国を支えていきたいです!」
あの日、私は頑張ろうと思った
貴方の頑張る姿を、苦しい采配に苦しんできた姿を、私は知っている
あの日のように私達は何度も自分達の決意をその場に願った
あの日以来逢うことはなかったけども
この蒼薔薇のボタンが結び繋ぐから
その後
私達は王命の政略結婚として婚姻を結んだ
結んだことになった
一応殿下との結婚も進められたけど、誰かをのかせてまでの婚姻となると、やっぱり悪役令嬢じゃん……ということになっちゃうし、彼らの婚約者への愛の重さも半端ないことを知ってる
何故か私も(同性なのに)睨まれた事あるし
でも王命教育や政務補佐とかちょっと王家の彼是に足を突っ込んではいるから、下手な相手に嫁がせる訳にも行かないとなるのはわかってた
前にもいったように私はオジ専……ならぬ年上を恋愛対象とするきらいがある
初恋と言えば父だったし、身内以外でいうならレガリア様や陛下に恋をした
なので私は幸せである
「なんで母上はあんなジジィ(むぐっ」
「黙れ馬鹿兄」
長男ヴィルフレイドの口を次男レクシアが塞ぐ
ちっ、旦那様の素敵な所を余すことなく語って見せようと思ったのに………
まぁ小一時間ではすまない事は既に認知されているので彼らは話題を変えてくる
「今度は妹かな、俺妹が欲しい!バカ弟いらない」
「黙れバカ兄貴、あ、でもボクも妹がいいです」
「妹か~妹がいいか~じゃあちゃんと女の子に優しくしてくれる紳士にならないとね?」
私は側にあった本を取り出す
「勉強頑張るカッコいいお兄ちゃんは何処かなぁ?」
「わ、やだ」「あ、お父様!!」
私は大きくなったお腹撫でながら、部屋に入ってきた旦那様に抱き付く兄弟を眺めた
旦那様は彼らに軽くキスをし、私を抱き締め額や頬にキスをくれる
私達を眺めるのは青い空と蒼薔薇が咲く四阿がある庭園
今日も優しく蒼薔薇の縁が私達を包む
ザマァは本編にあまり関係しないので、書いてません
王子はサフィが忙殺されて放置されてる間に兄弟間のアレコレで病んでいったっぽい
レイガンは親の愛を知ることなく育った事で病んだのかな
後の子らも親だったり兄弟だったりの確執をヒロインに付け入られ甘く泥々に絆され帰れなくなったんでしょう、多分
ヒロインは多分転生者で逆ハー狙いのお花畑(毒花)頭の子
多分その後強くてニューゲームした(お察し)のだと思います
サフィに影はついてましたが、他の婚約者にはついてなく、若気の至りという観点もあったので、婚約破棄騒動の対応については後手後手でした
婚約破棄後、陛下と……というのも見かけたので、宰相様と♡♡♡
というお話になりました
前世でも年上に可愛がられるので恋愛志向年上好きで、陛下や宰相らと会うのをモチベーションとして色々頑張ってました
結婚までは、宰相とその秘書といった感じになります
ビジネスパートナーっぽい心地よいバディ感を経て恋人へとスライドしてく感じでじわりじわりと
因みに他の婚約者が望んだ王命は、王宮の文官として働きたいとか、(実は転生者)お金と一等地もらって前世のスイーツ復元して見せるぞ!とか、居座る叔父らを排斥して爵位を取り戻してやる、とか、ほのぼのだったり苛烈だったりしたご様子です
女の子つおい