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救世の召喚者  作者: 五月 和月
41/51

41 ファンクラブ結成?

 フレデリカの到着を待つこと二時間。途中で一度セルジュさんから通信が入り、先に昼食を済ませた方が良いとの事だったので、カフェでそのままランチを頂いた。


 食後のコピオを飲んでいると、店に入って来た初老の男性が俺を認め、つかつかと歩み寄って来た。


「ユウト・マキシマ様でいらっしゃいますか?」


「そうですが」


「私、ランガート家の執事をしております、ランセムと申します。お待たせして大変申し訳ございません。フレデリカお嬢様をお連れいたしました」


 俺は立ち上がってランセムさんと握手した。


「いえ、こちらこそ突然ご無理を申し上げてしまって。ご足労お掛けしました」


「いえいえ、滅相もございません!お嬢様は、ユウト様とお会い出来ると知って、それはもう大変お喜びのご様子で」


「そうなんですか!?いや、実物を見たら幻滅するんじゃないですかねぇ」


「ご心配には及びません。ささ、お嬢様が外でお待ちですので」


 俺が店の会計に向かうと、ランセムさんから「それには及びません」と止められてしまった。なんと、セルジュさんが既に会計を済ませていたらしい。


 かっこいい!さすが貴族!明日ちゃんとお礼を言おう。


 カフェの外に出ると、護衛らしき騎士団の制服を来た若い男の横に、白に近い金髪を長く伸ばした美少女が立っていた。青くきらきらした利発そうな瞳が俺を捉えると、ぱっ!と花が開いたような笑顔になった。


「ユウト・マキシマ様!はじめまして、フレデリカ・ランガートと申します。どうぞ、フリッカとお呼び下さいませ」


 フリッカは、スカートの裾を摘まんで持ち上げ、左足を斜め後ろの内側に引き、右足の膝を軽く曲げた。こんなにスマートな「カーテシー」を見たのは初めてだ。


「あぁ、ユウト・マキシマです。急にお呼び立てして悪かったね」


「いいえ!とんでもございませんわ。ユウト様のお話は父から何度も伺ってます。いつかお会いしたいと思っていたのですが、まさか今日なんて夢みたいです!」


 ルル達は、あのカエラまでも、ニヤニヤしながら俺とフリッカのやり取りを見ていた。


 帝国では俺は英雄扱いされているようだが、未だにピンと来ない。あの貴族街入口の門兵たちに持ち上げられた時も戸惑いしかなかったが、こんな美少女から尊敬と憧れの眼差しを向けられると逃げ出したくなってしまう。


「そ、そう?見た目通りの普通の人間だから、どうぞお手柔らかに」


 執事のランセムさんは、そんな俺とフリッカの様子を微笑ましく見守っていた。一方、護衛の男は何だかソワソワしている。


「ユ、ユウト・マキシマ様!お会い出来て光栄です。私はフェルナンド・ランガート。フリッカの兄でございます。私の事はフェルノとお呼び下さい!」


「そうか!セルジュさんの息子さんか!はじめまして、ユウト・マキシマです」


 なんと!護衛じゃなくて、セルジュさんの息子さんだった!明るい茶色の髪を短くしていて、瞳はフリッカと同じ青だ。


「父から、フリッカがユウト様をご案内すると聞いて、居ても立っても居られず護衛役を買って出てしまいました!」


 俺はフェルノと握手した。


「お兄様、ズルい!わたくしも握手して下さい!」


 フリッカとも握手する。俺は後ろの四人を紹介した。妻のルル、アスタ、ユナ、カエラ。


「まあ!全員奥様でいらっしゃるのですか?」


 言い方が悪かったな。さすがにアスタはないだろう、見た目の年齢的に。


「いや、妻はルルだけだよ。他の三人は、うーん、仲間?いや、家族みたいなものかな」


 「仲間」では、何だか軽い感じがした。「友達」でもないし「恋人」でもない。「家族みたいなもの」が一番しっくりくる。


「っ!?か、家族?」


「あ、ユナは遠い親戚だったな」


「そ、そうよ。か、家族とは・・・違うわ」


 なんで赤い顔してるんだよ?親戚なら家族みたいなもんじゃないか。


「私は嬉しい・・・ユウト、さんに家族って言ってもらえて」


「みたいな、だからね?カエラ、そこ大事だから」


「ん・・・でも嬉しい」


「我はもう家族同然じゃからな。お主の娘みたいなもんじゃ」


「え?そうなの?」


「なんじゃ、不服か?なら妻でも良いぞ?我はどっちでも構わん」


 いや、俺が構うっつーの。なんで神様が娘や奥さんになるんだよ。


「まぁ!皆さん仲がとってもよろしいのですね。わたくし、羨ましいですわ」


「フリッカさんも、ルル達の仲間に入ります?『ユウト様を愛する会』に」


 ルルが変な勧誘を始めた。なんだ、その会は?いつの間に作った?


「まぁ!良いのですか!?」


「わ、私はそんな会に入った憶えはないわよ!」


「フフフ。冗談ですよ!もう、ユナさんったら本気にして!」


 ルルがユナを突いている。


「わ、私・・・入りたい」


わたくしも入りたいです!いえ、入ります!」


 カエラとフリッカが本気にしている。


「よし!それなら我の名の下で結成じゃ!入会の条件はユウトを好きな事!会の和を乱す行為は慎む事!以上じゃ!」


「アスタ、ちょっと待って!神の名の下にそんなもん作って良いの?」


「なんじゃ?お主も入りたいのか?」


「何で俺が俺を愛する会に入るんだよ!」


「ふん!別に良いではないか。自分で自分を愛せずにどうする?我が作ってやると言っておるんじゃ。光栄に思え!さて、誰が入会するのじゃ?」


「はい!ルル入ります!」


「ん・・・私も入る」


「わ、わたくしも!わたくしも入りたいです!」


「我も当然入るとして、ユナ?お主はどうするのじゃ?」


「わ、私?私は別に・・・は、入っても良いですけど」


「よし、決まりじゃな!ユウトを愛する会、メンバー五人で発足じゃー!」


 アスタが右の拳を天に向かって突き上げる。「おー!」と言いながら他の四人も拳を突き上げた。


 こうして、帝国帝都の貴族向けカフェの前で、俺の気持ちそっちのけで、俺のファンクラブが結成された。


 俺とフェルノ、ランセムさんは、盛り上がる女性陣を生温い目で見ながら唯々その場に立ち尽くしていた。





 それから、フリッカの案内で若い女性向けの服屋を回った。ファンクラブ効果なのか分からないが、初めて会ったフリッカも含め、皆がとても楽しそうだ。キャッキャ言いながら楽しそうに服を選んでいる。


 店員さんとフリッカが、それぞれに合った服を見繕ってくれている。これぞと言う服は試着して、わざわざ全員が俺に見せに来る。


「ユウト様、この服どうですか?」


「うん。ルル、凄く可愛いよ!」


「どうじゃユウト?」


「うん。アスタ、とても可愛いぞ!」


「ユ、ユウトさん・・・どう?」


「おぉ、カエラ。可愛いじゃないか!」


「ね、ねぇユウト。ど、どうかしら?」


「お、ユナ。とっても可愛いよ!」


「ユウト様!いかがですか?」


「フリッカ・・・可愛いね。って言うか君も買うの?」


 こんな調子で延々と続いた。俺は「似合ってる」「可愛い」をフル活用した。その結果、山のように服を買うハメになった。


 ランセムさんが会計しようとしてたので、ここは断固として俺が支払った。そのために魔石を換金して来たのだし。服までセルジュさんに甘える訳にはいかん。


 気になるお会計は・・・デデン!金貨三枚、日本円で三百万円也~!


 まぁ、この店は地球で言う所のハイブランドだからな。そんな店でこれだけ買ったのだから、むしろ安いのかも知れない。


 頑張ってくれた女性陣を慰労する事も目的だったので、大いに買い物を楽しんでくれて良かったよ。


「さあ、腹も減ったし、そろそろ宿に戻ろうか」


「そんな!せっかくお会い出来たのですから、ぜひ家へいらして下さい」


 フリッカが縋るような目を向けて来る。


「旦那様からも言付かっております。ぜひ屋敷へ、との事でございます」


「五人もお邪魔して迷惑じゃありませんか?」


「そんなご遠慮は無用ですよ!さ、家へ参りましょう!」


 フリッカが勢いで腕に抱きついて来る。


「あ、赤竜亭に一言言わないと」


「問題ございません。別の者が断りを入れに参りますので」


 ランセムさんの、落ち着いているが有無を言わさぬ声。これはどうしても屋敷に行かねばならないらしい。


「そ、そうですか。皆、セルジュさんのお屋敷に向かって良いかな?」


 ルル、アスタ、ユナ、カエラの同意を得てセルジュさんの屋敷に向かう事にした。





 屋敷へはセルジュさんが所有する二台の馬車で向かった。


 御者を除いて八人いるため分乗したのだが、フリッカがどうしても俺と一緒に馬車に乗ると言って聞かないので、俺たちの方は六人。割とぎゅうぎゅう詰めである。


 お馴染の貴族街入口の門を抜け、馬車に揺られる事十五分。まさに「お屋敷」と呼ぶに相応しい、貴族街の中でもかなりの大きさを誇る立派な屋敷に到着した。


 馬車は屋敷の玄関近くに寄せられる。すると中から玄関が開けられ、ずらりと並んだ執事とメイドたちに迎えられた。


 なんと、三人の執事の中に獣人の男性が居る!犬人族か狼人族だ。そして、十人のメイドさんの中に、四人も!猫人族が二人、兎人族が二人。


 なんだ、セルジュさんもケモナーだったのか!貴族のお屋敷に招かれて少し緊張していたのだが、獣人たちを見て我が家のような安心感が湧き上がる。


 だが、対する獣人たち、それに人族の執事とメイドさんたちは緊張した面持ちである。


「伝説の英雄、ユウト・マキシマ様ご一行様、ようこそランガート家へ」


 人族の執事の一人が重々しく口を開いた。


「お招き頂きありがとうございます。英雄なんてそんな大した者じゃありませんから。どうか固くならず、普通にして下さい」


「そうじゃ!こやつは、ちーっとばかり強いだけの普通の男じゃからの!」


 アスタが「わーはっはっはっはー!」と高笑いすると、皆度肝を抜かれた顔になったが、それで緊張が解けたようだ。


「旦那様はもうすぐお帰りでございます。それまでに夕食の支度をいたしますので、別室でしばらくお寛ぎ下さいませ」


 猫人族のメイドさんがそう言って案内してくれた部屋は、俺たち五人とフリッカ、フェルノの七人がゆったり出来る部屋だった。


 別の人族のメイドさんが淹れてくれた紅茶を飲みながら雑談していると、セルジュさんが帰って来た。


「やあ、ユウト殿!ルルにアスタ、それに・・・こちらははじめましてだね?セルジュ・ランガートと申します。うちの娘と息子にはもう会ったね」


「ユナと申します。ユウトの遠い親戚に当たります」


「カエラです・・・えと・・・私は・・・」


「カエラは竜族で、イート・ペインを使える子なんです。救出された獣人たちの心の傷を癒してくれました。ユナは治癒魔法の使い手で、病気や傷を治してくれたんです」


 口下手なカエラに代わって説明し、ユナについても補足した。


「そうなのか!二人とも、本当にありがとう。帝国騎士団副団長として感謝申し上げる」


 セルジュさんがユナとカエラに向かって深々と頭を下げる。二人は慌てた様子で「そんな!」とか言いながらあわあわしていた。


「あ、そうだ!セルジュさん、カフェはご馳走様でした!」


「はっは!気にしないでくれ。それより、服の方も遠慮しないで良かったのに。こちらが呼び出したのだから」


「いえいえ。彼女たちには、俺が買うと言って連れて来たので」


「そうなのかい?まぁ、何かあったらまた言っておくれ。さて、待たせたね。夕食を頂くとしよう」


 俺たちは食堂に案内された。いっぺんに三十人くらいは食事出来そうな巨大なテーブル、一脚一脚が目の玉が飛び出そうな金額と思しき豪華な椅子。


 セルジュさんが貴族と言うのは知っていたが、これ程のお金持ちとは知らなかった。


 俺たち五人は俺を真ん中にして横並びに座り、向かい側の俺の前にセルジュさん、フリッカとフェルノはセルジュさんを挟んで座る。そして次々に運び込まれる料理の数々。


「今日は、妻と長男が不在なんだ。ユウト殿が我が家に来たと知れば、きっと二人とも大いに悔しがるだろうな」


わたくし、兄様に絶対自慢しますわ!」


「今から悔しがる兄様の顔を見るのが楽しみですよ」


 セルジュさん達にとって、このような食事は日常茶飯事なのだろうが、俺たちは違う。見た事もない食材、豪勢な料理に、俺でさえ目を奪われる。


 ルルとアスタはもう料理に夢中だった!ユナも口に運ぶ度に目を丸くし、カエラなどあまりの美味しさに少し涙目になっている。


 俺は料理もさることながら、ワインの美味さに舌を巻いていた。日本ではワインなんか数えるくらいしか飲んだ事がないが、これは美味い。


 芳醇な香り、適度な酸味、舌に残らないさっぱりとした甘味。料理にも合っている。


 明日は皇帝との謁見だと言うのに、あまりのワインの美味さにしこたま飲んだ。俺だけじゃなく、八人全員でわいわい楽しく語り合いながら、しこたま飲んだ。


 そして、セルジュさんの好意に甘え、その晩は屋敷に泊めてもらった。


いつもお読み下さりありがとうございます!

明日も19時~20時に投稿予定です。宜しくお願い致します!

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