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救世の召喚者  作者: 五月 和月
29/51

29 みんなで作戦会議

「それじゃあ、今度は『リュウ』について教えて欲しい。言いたくない事は言わなくて良いからね。辛い時も、遠慮なくそう言ってくれ」


「はい。大丈夫です」


 マーラが気丈に答える。リュウは、この悲劇の元凶。マーラの嫌悪と恐怖の対象であるはずだ。しかし、どうしても聞いておかなければならない。


「マーラ、リュウは普通の人族かな?それとも『召喚者』かな?」


 マーラとルルが、はっ!と俺の顔を見る。アスタは苦虫を噛み潰したような顔をしている。召喚は次元の神であるアスタの管轄だ。責任を感じているのかも知れない。


「召喚者です。なぜそれを?」


 このユルムントにも、もちろん獣人好きな人族は居る。しかし、この世界では獣人は「当たり前」の存在だ。生まれた時から近くに居るのだ。


 だがリュウという男からは、獣人に対する異常な執着を感じる。十年以上に渡って獣人の子供たちだけを攫っては弄び続けている。まるでこれまで手に入らなかった事の埋め合わせをしているかのように。


 それにリュウは恐ろしい力を持ってるとマーラが言った。兵士たちも言いなりだと。見た目が人族なら、王族かそれに近い貴族か、そうでなければ力で人を言いなりに出来る召喚者しかいないと思った。


「ああ、なんとなくだけど。何回目の召喚とか聞いたことない?」


「えぇ、それなら十六回目って聞いた事があります」


 そ、そうなのか・・・聞いた事あるんだ・・・


 召喚回数が多いほど強くなるっていうのは、普通にこの世界で暮らす人々は知らない事である。おそらく興味もないだろう。


 興味があるのは、戦う可能性のある召喚者同士くらいだ。生き死にに直結するからな。


 マーラが知ってるって事は、結構有名なのかも知れない。どんな考えで召喚回数を言い触らしているのか分からないが、俺にとっては十六回と分かった事は大きなアドバンテージになる。


 あの前の魔王でも、召喚回数を知る者は居なかった。倒されて、元の世界に戻る直前に俺だけに告げたのだ。


「なるほどね・・・それで、リュウが戦ってる所とかはさすがに見た事ないよね?」


「戦いというか、一方的なのは見せられた事がありますけど」


 あるんかーーい!なるほど。リュウって奴がどんな奴か、だいたい分かって来たぞ。


 召喚者に限らず、戦いに携わる者においては、手の内を出来るだけ晒さないのが基本中の基本ではないか。少なくとも俺はそうだが。


 リュウは、アレだ。自分の凄さを見せびらかし、俺って凄いアピールをしたいタイプだ。


「あ、あのさ、ちょっと聞きたいんだけど・・・リュウの外見ってどんな?」


「えと、とても太ってます。背はユウトさんよりだいぶ低くて、私と同じくらいだと思います。あと、目が・・・私たちを見る目が、とても怖いです」


「ご、ごめんね・・・嫌な事思い出させちゃって」


「いえ、大丈夫です。私の知ってる事が、皆を助け出すために必要なんですもん」


 俺は別に、太ってる人や平均より背が低い人に偏見はない。その人自身が幸せであれば、他人がとやかく言う筋合いはないし、体型や見た目は個性の内だと思うから。


 ただリュウに関してはどうだろう?自分の強さ、凄さを必要以上にアピールするのは、それ以外にアピールするものがない事の裏返しではないだろうか。


 実際、十六回も召喚されれば強いのは間違いない。だが、強さとは何かを守る為にあるべきだと俺は思ってる。強さには責任が伴っていなければならないのだ。


「それで、どんな戦い方をしてたのかな?」


「見た目からは信じられないくらい素早いです。私の目では見えないくらい。武器も使わずに、相手を素手で殺してしまいました。あっという間でした」


「相手はどういう者じゃったのじゃ?」


 アスタが重々しく口を開いた。


「ガラムの街に昔から住んでいる貴族の息子とその仲間でした。リュウは街の施政に携わっていましたが、そのやり方が気に食わない、と・・・」


 マーラが十三歳の時。反リュウ派という集団がいて、リュウに物申した。屋敷の外の広場で、貴族の息子を筆頭に反リュウ派の者が数人でリュウに挑んだらしい。


 その結果は一方的な殺戮。返り血で全身を染めたリュウの姿を見て、それ以来逆らう者はいなくなった。


 十六回目の召喚者なら、数人の人族など敵ではないだろう。その程度の戦闘ではリュウの力を推し量る参考にはならない。


「なるほどねぇ・・・」


「ユウト様。そのリュウという雄は、自分に絶対の自信を持っているようです。そういう雄なら、こちらを見縊ってる内に難なく倒せるのではないでしょうか?ユウト様の力なら」


 ルルにそう言われると、そんな気がしてくるなぁ。


「うん、そうかも知れない。ただ、警戒するに越したことはない。あくまでも目的は救出だ。それが無事終わったら、リュウのことはどうにかしたいと思ってるけど」


 はっきりとは言わなかったが、リュウを改心させるのは難しいかも知れない。リュウを殺さない限り、この悲劇は終わらないだろう。


「セルジュさんに言ったら帝国が動くかも知れないなぁ。なにせ自国の国民が攫われ、言葉に出来ない程の酷い事をされてるんだから」


「うむ。あのセルジュという男は義に厚そうな奴じゃったな。ユウト、国に任せるとどうなると思うのじゃ?」


「うーん。マーラの話を聞く限りでは、共和国が国ぐるみでやってる訳じゃないと思うんだよ。そこで帝国が動けば、下手したら戦争になるんじゃないかと考えてる」


 戦争は避けたい。兵士はもちろん、無関係な人々にまで犠牲を強いる。


「だから、俺たちだけで解決したいと思ってるんだけど」


「ユウト様がいれば、ルルたちだけで皆を助け出せます!」


 ルルが力強く言い切る。


「わ、私も、戦争になるのは嫌です・・・」


「うん。だから俺たちだけで動きたい」


「そうじゃな。お主と我とルルが居れば容易いじゃろうて!」


 それはちょっと楽観が過ぎる気もするけど、アスタの力も借りる必要がある。


「それで、出来るだけ早く助け出したいんだけど、二つ問題があると思ってるんだ」


「ほう。二つとは何じゃ?」


「一つは首輪だ。これをどうにかしないと屋敷の外に連れ出せない」


「マーラさんにやったように、ユウト様が壊してしまえば良いのでは?」


「うーん、やっぱりそうなっちゃう?」


 壊すのが面倒とか言いたい訳ではない。いや、確かに面倒は面倒だ。首の周りにぴったりシールドを張って引き千切るのは俺だって神経を使う。それだけではなく、気になっているのは時間である。


「他に方法がなければ仕方ないんだけど、百人前後の首輪を外すのは結構時間がかかると思うんだよねぇ」


「お主は既に一回やっておるじゃろう?次からは、ちょちょいのちょいじゃろ?」


 そうか。そんな風に思われてるのか。自慢じゃないけど、俺って割と手先は不器用な方なんだよ?老眼だし・・・ってあれ?そう言えば、最近は近くの物を見るのが苦じゃなくなってるな。


「まぁ、首輪は最悪一つずつ壊すという事で、もう一つの問題は、救出した後、囚われていた獣人たちをどうするかだ」


「前の子供たちのように、家族の元に帰すのでは?」


 ルルが、そうするのが当たり前ですよね?といった風情で聞いてくる。


「うん。最終的にはそうだ。傷ついた心と身体を癒すためにも、家族の傍が一番だと思うからね。俺が言ってるのは、救出した直後の事だよ。リュウの屋敷から直接、一人一人家族の元へ転移する訳にもいかない」


「どこかに集めて、それから家族の元に帰すという訳じゃな?」


 救出しても、皆が健康で元気という訳ではないだろう。むしろ全く逆で、怪我や病気、そして心の問題で、皆深く傷ついているのではないだろうか。


 出来るなら、それを少しでも癒してから家族の元に帰したいのだが・・・


「家族の元に送り届けるまで、多少の時間が必要じゃないかと思うんだよ。家族は皆帝国にいるだろうから、帝国に拠点を造ってもらうか・・・」


「ルルたちの所が良いと思います」


「それは魔属領、ってこと?」


「はい。帝国だと、面倒を見るのは人族がほとんどですよね?それより、同族が面倒を見てあげた方が良いとルルは思うんですけど・・・」


 ふむ。一理ある。ただ、医療体制はどうなんだろう?


「ルル、魔族領では、怪我や病気の治療はどうしてるの?」


「治療師がいます。魔族の中でも珍しい、治癒魔法を使える者です。それで無理な場合は他に助けを頼む時もあります」


 そうだったんだ。俺も使えない治癒魔法を使える魔族が居るとは。それならある程度安心できるな。


「マーラ?マーラはどう思う?」


「私も同族の所が良いと思います。昨夜はルルちゃんが傍に居てくれて、凄く安心出来ましたし」


「あそこには、色んな種族がおるんじゃろ?それぞれの種族で面倒を見て貰うのが良いのではないか?」


「そうか。そうだな。そこはジャン婆さんとアルさんに聞いてみようか。あと、長年囚われた上に酷い扱いを受けて、記憶が曖昧な人も居ると思うんだ。その場合は、セルジュさんに頼んで家族を探して貰おうと思うんだけど」


 帰る家を明確にイメージ出来れば、アスタの力を借りて直接転移出来る。しかしイメージ出来なければその方法は使えない。


「うむ。帝国にも、それくらいの働きはしてもらうべきじゃろうな」


「よし。じゃあ早速ベルーダに行こうかな・・・もういっその事、四人で行った方が良いかな?帝都に残る意味もあんまりない気がするし」


「そうですね。ルルは長距離転移に慣れましたし、アスタ様ももう大丈夫ですよね?」


「うむ」


「マーラさんは・・・少し気分が悪くなるかもしれないけど、行ってしまえばゆっくり休めますから」


「私の事は気になさらないで下さい。ユウトさん達に従いますので」


 という事で、四人で魔族領ベルーダに戻ることにした。俺は赤竜亭の受付に行って世話になった礼を言い、チェックアウトを済ませた。





 アルさんの家の前に転移した。いつもここでお世話になってます。


 アルさんは出掛けているようだ。奥さんのリンさんとルルの弟妹たちに、マーラを紹介して帝都土産をどっさり渡す。リンさんは恐縮してたが、弟のカルとトル、妹のリリは大喜びしてくれた。


「「「ユウトお兄ちゃん、ありがとー!」」」


 この歳で「お兄ちゃん」はこっ恥ずかしいな。嬉しいけど。


 ルル、アスタ、マーラをアルさんの家に残し、俺は狐人族のジャン婆さんの所に転移で向かった。


「おやおやユウト様。少し見ない間にお若くなったように見えますね?」


「本当?ルルにも言われたんだけど・・・なんでだろう」


「ほっほっほ。きっとこの世界が性に合うのではないですかねぇ」


 ジャン婆さんに言われてハっ!とする。性に合ってるのは間違いない。日本でサラリーマンしてた時のような、ずっと残るような疲れも感じないし、気力が満ちてるような感じがする。


 案外、この世界のストレスフリーな環境のおかげで、見た目が若返ってるのかも知れないな。


 まぁ、俺の事は置いといて、と。


「実は、魔族領にお願いがあって来たんだ」


 俺はジャン婆さんに獣人の子供たちが攫われている事、彼女たちを助け出したいと思ってる事を伝えた。そして、救出後にこの魔族領で彼女たちの面倒を見て欲しい、と。


「きっと、心と身体が深く傷ついてると思うんだ。最終的には家族の元に帰したいんだけど、どれくらいの時間が掛かるか分からない。その間、魔族領の同族と過ごすことで、少しでも癒す事が出来ればと思って。お願い出来るかな?」


「ユウト様。アルからも話は聞いております。我々が出来る事なら何でも協力いたしますよ」


「そうか、良かった。面倒事を押し付けて悪いね」


「お忘れかも知れませんが、ユウト様は魔王様なのです。ユウト様は、ただご命令すればよろしいのですよ?」


 おっと。魔王として召喚された事、綺麗さっぱり忘れてた。だからと言って、頭ごなしに命令するなんて考えたくもないな。


「いや、命令なんてとんでもないよ。やりたくない事を無理矢理してもらおうなんて思わないから。とにかくありがとう」


「いえいえ、お礼を言うのは我々の方です。ユウト様は同族を救おうとして下さってるのですから。では早速、各種族の族長に伝達しておきます」


「あ、俺が転移で行って来ようか?」


「それには及びません。これがありますからな」


 ジャン婆さんはそう言って、手の平に乗るくらいの透明なキューブを見せてくれた。


「それは?」


「思念伝達の魔石でございます。各族長は皆持っております」


 そんな便利な物があるのか・・・


 この世界で一番不便な事、それは遠く離れた者同士で意思の疎通が出来ない事だ。これがあれば、その問題が一気に解決するではないか!


「ただし、これはあまり遠くに思念を送れません。思念を受け取った族長が、次の集落の族長に伝達するという方法で必要な事を全体に行き渡らせるのです」


 リレー方式なのか・・・しかし、改良すれば長距離通信も出来るんじゃないかな?


 まぁ、俺には魔道具を作る才能なんてこれっぽっちもないので、そうなれば良いなーと思っただけである。


「なるほどね。じゃあ、救出した獣人の受け入れは任せるよ」


「はい。ユウト様、お気をつけて」


 俺はジャン婆さんに再び礼を言って家を出た。


 狐人族の集落に来たついでに、ちょっとだけドラゴに会いに行こう。貸し出されていないパンゴル達が集められている場所に向かう。


 居た!ドラゴも俺を認めて、遠目にもソワソワしてるように見える。


 正直、パンゴルなんてどれも同じに見えるのだが、二週間以上共に過ごしたドラゴだけは見分けが付くのだ。


 歩み寄って行くと、短い前足で地面を引っかきながら、俺に向かって「きゅーっ!」と鳴き声をあげた。くぅっ!可愛いじゃないか!


 俺はドラゴの首を抱き、反対の手で目と目の間を撫でる。ドラゴは気持ち良さそうに目を細める。まさかケモナーの俺が、でっかいトカゲを愛でる日が来るとは。


 今度来る時は、バナナもどきのジョールを山盛り持って来るからな。


 一頻りドラゴと戯れ、後ろ髪を惹かれつつ一時の別れを告げ、俺はアルさんの家に戻った。


次回からいよいよ救出作戦開始です!

いつもお読み下さり本当にありがとうございます!

また宜しくお願い致します

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