第九話 繋がる思い、すれ違う想い
こんばんは。
魔王に迫る滅びの時!
しかもその原因は赤ん坊!
その事実を知った勇者一行はどうするのか!
それとローストチキンはどうなるのか!
それでは第九話「繋がる思い、すれ違う想い」お楽しみください。
「成程、そういう事だったのか……」
説明を聞いたフーリは沈痛な面持ちで頷いた。
「人の負の感情を糧にしている高位魔族は、逆に人の希望や活力に弱い。それはこれまでの旅で明らかだ」
「そうそう。だから『常に勇気を持ち諦めない者』である勇者ちゃんが必要なのよねー」
女神の言葉がそれを肯定する。
「つまり生きようとする本能のみの存在である赤ん坊は、勇者以上に魔族の天敵、という事になる」
「魔王の部下の疲弊は寝不足ではなかったという事。しかし魔王だけ無事だったのは何故」
ナクルの疑問に、フーリは少し考えて答える。
「……多分だけど、闇のバリアがその影響を防いでいたんじゃないか?」
「……おそらくそうであろうな」
魔王はその言葉に頷く。
「じゃ、じゃあそれを宝玉の光ではぎ取ってしまった今は……」
キュアリの言葉に、魔王は手を握ったり開いたりしながら自嘲気味に笑う。
「あぁ、もう魔法は殆ど撃てん。身体も動いて二割程度だな」
「一週間でそこまで……!」
絶句するキュアリに代わって、ナクルが疑問を向ける。
「一つ疑問。魔弟らの様子で、赤ん坊による悪影響には気づいていたはず。なぜ自分達の命より赤ん坊を優先したのか」
「……分からぬ。だが夜と闇を司る精霊だった頃の何かが引っかかったのかも知れぬな」
「夜と闇には、子どもを寝かせる仕事もあったもんね~」
女神の明るさも空気を変えるには至らない。
しばしの沈黙の後、意を決してフーリが口を開く。
「それで……、あとどれくらい、その……、持つんだ……?」
「……おそらく赤ん坊に触れていれば、明日は迎えられないであろうな……」
「そんな……!」
あまりに近い終わりに、キュアリが悲鳴に近い声を上げる。
「じゃ、じゃあこれから赤ちゃんはミライト様に任せれば……!」
「何を言う。貴様等は我を滅ぼしに来たのであろう」
「それはっ……。そう、ですけど……!」
倒すべき魔王に諭されて、キュアリは言葉に詰まる。
「それに、滅びるならば貴様等との戦いの果てより、赤ん坊を抱きながらが良い」
「でも、でも……!」
その時、玉座の間の扉が開いた。
「たーぃ!」
「おーぅ戻ったぜー」
ミライトと赤ん坊が元気よく入って来た」
「み、ミライト様……!」
「……ミライト……」
「……」
「……戻ったな」
言葉を失う三人の間を抜けて、魔王がミライトへと歩み寄る。
「おう。フーリ、昼飯何?」
「あ、その、ミライト……」
事情を知らないミライトの明るさに、フーリは告げるべき言葉が見つからない。
「赤ん坊、こちらに来い」
「まー! まー!」
「俺らが呼んでるから魔王って覚えたのはいいけど、これだとママになっちゃうな」
「やっぱり闇ちゃんがお母さんねー」
「よーし、じゃあ魔王のところに行ってこい」
ミライトが赤ん坊を魔王に渡そうとするのを、
「だ、ダメです!」
「えっ」
キュアリが手を広げて阻む。
ミライトは驚きで固まった。
「まー! まあああぁぁぁ!」
「キュアリ」
「でも、でも……!」
赤ん坊の泣き声に、ナクルが優しく肩に手を置く。
しかしキュアリは目に涙を浮かべながら首を振る。
「まあああぁぁぁ! まあああぁぁぁ!」
「よーしよし。今魔王のとこに行けるからなー」
「……ミライト、実は……」
「フーリ」
ナクルの『代わろうか?』という視線を、首を振って優しく振り払う。
「大丈夫。ちゃんと、話すから……」
「何だ? 昼飯失敗したのか?」
「お肉は綺麗に焼けました!」
空気が少しだけ綻んだ。
読了ありがとうございます。
綺麗に焼けました、つまりKY!
ミライトに懐いているはずの赤ん坊が、魔王の元に行こうと泣き叫んでいましたが、これはさほど珍しくありません。
前話で女神が「勇者ちゃんは刺激だけど、闇ちゃんは安らぎ」と言っていた通り、同じように懐いているように見えても、求めてるものが違ったりします。
刺激の人は楽しいけど疲れる、安らぎの人は落ち着くけど退屈。
今赤ん坊はミライトとの散歩が楽しかったけどくたびれて、魔王の安定を求めているのです。
職場で懐かれた子とたっぷり遊んだ後、お母さんに抱っこされてる赤ん坊が無表情になっているのを見ると、「リラックスしてるんだなぁ」とより可愛く感じます。
それでは次話もよろしくお願いいたします。