第十九話 想い、あふれて
おはようございます。残り二話で完結となります。
いよいよ明かされる勇者の思い!
何がミライトを幸せから遠ざけたのか!
その思いを変える事はできるのか!
キュアリ! フーリ! ナクル! 思いの力で打ち砕け!
それでは第十九話「想い、あふれて」お楽しみください。
「……俺、さ……」
ミライトはゆっくり話し始めた。
それはまるで隠した悪戯を白状するかのようで、後ろめたそうに、そして見つかった事に少し安堵するように。
「……俺の父さんが魔王を倒しに行って帰らなくて、旅に出ることになった。勇者である父さんの息子なんだから仕方ないと思ってた」
そこでミライトは共に旅した三人に目を向ける。
「でも皆は違う。キュアリには教会で任されてる仕事があったし、ナクルは修行を大事にしてた。フーリは遊び人として楽しく暮らしてた。それぞれの人生があったのに、友達だからと辛い旅について来てくれた」
その目には感謝と後悔が等分に揺れていた。
「だから俺は一日も早く魔王を倒して、皆を元の生活に戻してあげたかった」
「ミライト様……」
「魔王の脅威は無くなったけど、こうやって俺の旅に縛りつけてる……。それが嫌でさ……」
「それで早くこの生活を終わりにしようとしたのか……」
「ただ、すっごく悪いんだけど、俺、ここで皆と暮らすの楽しくて、幸せで、それで言い出せなかった。ずるいよな、俺」
「もっと早く言うべきだった」
ナクルの指摘に、ミライトはばつが悪そうに頭を掻く。
「そう、だよな。でも、いざ別れるって思うと」
「違いますミライト様!」
ミライトの言葉に、キュアリは激しく首を振る。
「え?」
「お前が言うべきだったのは、こ、ここで暮らすのが、た、楽しくて、し、幸せって事の、方だ!」
顔を真っ赤にしながらフーリは叫ぶ。
「でもそれは俺のわがままで……」
「私達も」
「えっ」
「私達も、そう、なの……」
ナクルの頬を涙が伝う。
予想外の反応に、たじろぐミライト。
「そうです! ミライト様と、レイちゃんと、ナイクさんと、フーリさんナクルさんと暮らすこの六人での生活が、……楽じぐで幸ぜなんでずっ!」
「今更やめるなんて言われたら、どうしたらいいのか、私には、分からない……!」
「ミライト……」
「さ、三人とも泣くなって! わ、悪かった! 俺が悪かったから!」
ミライトはどうしたらいいか分からず、おろおろする。
「全く。お前は皆に迷惑をかけながら、自分のわがままで旅をしていると思っていたのか」
ナイクは呆れたように溜息を吐く。
「我とレイはお前達に今迷惑をかけている。だがそれをお前は厭うか? 嫌々この場にいるのではないと、先程自分で言ったばかりであろう?」
「あ、あぁ……」
「それと同じだ。なぁレイ?」
「あー?」
ナイクは愛おしそうにレイの頭を撫でる。
「付き合いの浅い我でも分かる。お前達のお互いを思い合う気持ちは本物だ。我がレイを思う気持ちに勝るとも劣らない」
「ナイク……」
「だから自分を卑下するな。それは思いをかけてくれる相手を侮辱するに等しい。自分を愛されるに足る存在だと認識しろ」
「みー!」
「……あり、がとう……」
ナイクとレイの言葉に、ミライトも泣き出した。
「ミライト、様ぁ……!」
「ミライト……!」
「ミラ、イト」
「ありがとう……! キュアリ……! フーリ……! ナクル……! ありがとう……!」
四人は自然と肩を抱き合い、存分に泣いた、
「……泣けるわぁ」
女神も涙を流した。
「お前が泣くとはな」
「足の痺れが限界で……」
「……あぁ、お前はそういう奴だったな」
「でも、まだ終わりにはできない……」
「……女神?」
「ぅあー」
女神はナイクの言葉に応えず、真剣な眼差しを四人に向けていた。
読了ありがとうございます。
シリアス「女神が真顔になった! シリアスは後十話は戦える!」
……シリアス様も意外と脇が甘いようで。
さて女神の言う終わりにできない理由とは!?
後一話で解決できるのか!?
次話最終回!
よろしくお願いいたします。




