第十六話 玉砕
おはようございます。
女神の作戦がいよいよ実行される!
鈍感ミライトに女の武器!
相性が悪過ぎないか!
そしてタイトルでオチが見えてないか!
それでは第十六話「玉砕」お楽しみください。
夕方。
「ただいまー」
『!』
ミライトの帰宅で女達が動き出す。
「さぁまずは僧侶ちゃん! じゃ、手筈通りに!」
「は、はいぃぃぃ……!」
緊張の面持ちのキュアリ。
「続いて一気に畳み込んでね賢者ちゃん!」
「引き留めたい気持ちがあればできるできる私はできる恥ずかしいなんて思うな感情を捨てろ作戦の成否は私にかかっている失敗は許されないだからためらうな私!」
自己暗示のように呟くフーリ。
「武闘家ちゃん、そっちはー?」
『万端』
風呂場から答えるナクル。
「闇ちゃんは赤ちゃんと一緒に待機! この先は教育上良くない展開になるかも知れないから」
「よく分からんが分かった」
「……ぅぁ……。まー?」
「あー、腹減った。今日のご飯何?」
(今だ! ミライト様!)
キュアリがミライトに突進する!
「お、キュア」
「~~~っ!」
「リ……?」
「~~お帰りなさいませっ!」
不意の抱きつきからの赤面上目遣い。今のキュアリに繰り出せる最強のアプローチ。
だったが。
「おう、ただいまキュアリ」
「ふぇっ!? ……ふにゃぁぁぁ」
限界いっぱいだった羞恥心に頭を撫でられた喜びが重なり、キュアリは膝から崩れ落ちた。
「あれ? どうしたキュアリ? 疲れてるのかな? とりあえずソファに寝かせて……」
「ぁぅぁぅ……、しぁわせぇ……」
キュアリを軽々と抱き上げると、ソファに寝かせるミライト。
その背後から、
「みっミライトお帰り!」
「わっ! ふっフーリ!?」
抱きつき身体を密着させるフーリ!
「おおおお疲れ様! おふっお風呂にするか!? ゴゴゴご飯にするか!? そ、それ、とも……!」
「じゃあ風呂で」
「わた……ファッ!?」
口籠もって決め台詞を言えない間に選択され、フーリの頭は真っ白になる。
そこに。
「いつもクールなフーリがこんな風に寄ってきてくれるの、何か嬉しいな」
「う、嬉……!?」
思考の空白に滑り込んだその言葉に喜びが爆発し、フーリも膝から崩れ落ちる。
「あれ!? フーリも!? とりあえずこっちのソファに寝かせて……。大丈夫か? 水でも持ってくるか?」
「へ、へぇきへぇき……。おふりょ、いってきて……」
それでもフーリは最後の力を振り絞って、次の策へと繋げる。
「そうか? 汗だけ流したら水持って来るからな」
脱衣所に入るミライト。
「お帰り。背中を流す」
そこにはタオル一枚のナクル!
「あぁありがと。でも今キュアリとフーリが具合悪いみたいでさ。汗だけ流すからまた今度な」
「……分かった」
服を脱ぎ、風呂場に向かうミライトを見送って、ナクルはゆっくりと服を着て、静かに膝から崩れ落ちた。
「で、この作戦、どうなったら成功なのだ女神。……女神?」
ナイクが女神に目を向けると、そこにはお腹を抱えて笑いを堪える女神の姿があった。
「……おっおも、面白……! こんなに完全にスルーされるなんて……! 最高……!」
「お前悪魔か」
読了ありがとうございます。
さぁ戦犯は誰だ。
①初心すぎる僧侶キュアリ
②防御力皆無の賢者フーリ
③強引さの足りない武闘家ナクル
④鈍過ぎる勇者ミライト
⑤作戦立案者である女神
実質二択。
それでは次話もよろしくお願いいたします。




