第十四話 集う想い
こんにちは。
旅の果てに手に入れた穏やかな日々!
一見夢のような生活! 羨ましいぞ!
しかしミライトがこぼした衝撃の言葉!
正気かミライト! 仲間が黙っていないぞ!
それでは第十四話「集う想い」お楽しみください。
「ちょっとみんな緊急事態!」
突然現れた女神に、慣れ切った一同は大した驚きもなく流す。
「女神様? どうなさったのですか?」
「ミライトなら今レイと風呂に入っているから、もう少ししたら上がって来ますが……」
「それが問題なのよ!」
「話が見えない」
「今勇者ちゃんがお風呂でレイちゃんに話してたんだけど……」
女神の言葉に、全員に動揺が走る。
「ののの覗いたんですか!? みみみ見たんですか!? どどどどんなですか!?」
「ずる、じゃなくて、羨ま、でもなくて、は、破廉恥な……!」
「これはひどい」
「何だ、この二人の熱量は……」
身を乗り出すキュアリとフーリ。
ドン引きするナクルとナイク。
「この私が緊急と言う事態に、そんな呑気な事言ってて良いの?」
「た、大変!」
「確かにそれは異常事態だ……!」
「聴く」
「話してくれ女神……!」
「自分で言ってて何だけどすごい信頼感☆ じゃあ覚悟して聴いてね?」
女神はミライトの言葉を伝えた。
「なっ、ミライト、様……!」
「そんな、馬鹿な……!」
「可能性としては考えていた。しかし」
「私も予想はしていたけどここまでとはねー」
「……何をそんなに動揺している?」
ナイクの疑問に三人は勢い込む。
「だってそれは私達と別れる覚悟を決めているという事です……!」
「……それはこの生活がミライトにとって『いつでも失えるもの』だという事なのだから……!」
「望めばこの生活を続く限り続けることも可能。それを望まないという事は」
「……成程。我らとの生活は『その程度』という事か……」
ミライトに対する怒りに似た感情が、四人の中に燃え上がる。
「で、どうする?」
女神の言葉に、その炎は形を求めてうごめく。
「……どうするって、私はミライト様とずっと一緒にいたいです!」
「私もだ。ミライトに考えを改めてほしいものだが……」
「私も。ナイクはどう」
「どう、とは?」
ナクルの問い掛けに、ナイクが首を傾げる。
「今の私達との生活を望むのか、それともレイと二人で生きていくことを望むのか」
「……お前達には悪いが」
「……ナイクさん……」
「ナイク、まさか……」
キュアリとフーリの不安に、
「お前達なしにレイを育てていける自信がないのでな。まだまだ世話になるぞ。覚悟しておけ」
ナイクは笑顔で答える。
「……ナイクさん……!」
「そうと分かれば!」
「全員で協力し、ミライトがこの暮らしを続けたいと思わせる」
「レイのためにも、何としてでもな」
四人の意思が一つになった。
(楽しくなってきたわぁ)
煽った女神は密かにほくそ笑んだ。
「では明日ミライトが出かけたら、各自の仕事が終わり次第詳細を打ち合わせる」
「お洗濯、ささっと済ませます!」
「料理も手早くできる旨い物を厳選しよう」
「レイは抱っこしたままでいいな」
「おっけーね」
ナクルの言葉に、全員が頷いた。
「!? ……何だこの悪寒……」
「ぅー?」
ミライトは風呂場にあるまじき悪寒に震えた。
読了ありがとうございます。
シリアス「あれ!? 俺の出番はもう終わり!?」
悲しいけどこれ、コメディなのよねぇ。
さて火のついた乙女達の作戦の行方は!
それでは次話もよろしくお願いいたします。




