第十三話 穏やかな日々
おはようございます。第二部です。
王に認められて王国に住む事になった勇者一行!
六人での共同生活! 一つ屋根の下!
しかも皆ミライトに好意を抱くハーレム状態!
しかしそこに忍び寄るシリアスの影……!
それでは第十三話「穏やかな日々」お楽しみください。
陽の沈みかけた夕方。
ミライトは閑静な地区に用意された家へと帰ってきた。
「ただいまー」
「あ! お帰りなさいミライト様!」
庭で洗濯をしていたキュアリが顔を上げて答える。
「あれキュアリ、今まで洗濯か? 珍しい」
「いえ、お昼寝してたレイちゃんが盛大にしてくれたので……。あはは……」
「そっか……。いつもいつもありがとな! キュアリが洗ってくれた服着ると、一日やる気が出るんだよな」
「! ミ、ミライト様のためなら……!」
シーツを洗う手に力がこもるキュアリ。そこに、
「キュアリ、ミライトが帰ったのか?」
「おうフーリ、ただいま」
台所に通じる窓を開けて、フーリが顔を覗かせた。
「お疲れ様ミライト。もうすぐ夕食の支度ができるから、先に風呂でも済ませておいてくれ」
「ありがとなー。それが楽しみで一日頑張れたよ!」
「なっ……!」
「あ、弁当も美味かった。ありがとな」
「は、早く風呂に行ってこい!」
顔を真っ赤にして窓を閉めるフーリ。
「あそこからでも分かる位に汗臭かったかな? 今日は移動魔法の輸送ばっかりだったから、汗はそんなじゃなかったけど……?」
自分の匂いを嗅ぎながら、首を傾げるミライト。
「ま、風呂に入ればいいや。ただいまー」
扉を開けると、配膳の手伝いをしていたナクルが顔を向ける。
「お帰りミライト。風呂は沸いている」
「ありがと。いつも悪いな」
「ミライトは外で我々六人分の食い扶持を稼いでいる。これ位は感謝に値しない」
「そんな事ないって。ナクルが風呂入れて待っててくれるから、疲れを気にせず働けるんだからな」
「ならいい。着替えは脱衣所に置いてある」
ナクルは配膳の準備に戻る。
「じゃ早速……、っとその前に……。ただいまー」
「みー!」
「おーご機嫌だなレイ」
「この時を待ちわびたぞミライトよ!」
「おうただいまナイク」
魔王が希望に出会ったかのように、顔を輝かせる。
ナイクとは、レイの命名の後、魔王では何かと不便という事で、全員で決めた呼び名だった。
女神は賛同したにも関わらず、『闇ちゃん』呼びを改めないが。
「今日は大変だったぞ! 昼寝をしていたレイが大洪水でな……!」
「キュアリからも聞いたよ。ナイクもお疲れ様!」
「みー! みー!」
「よーしこっち来い。……うん。お前もおっきくなってんだなぁ」
ミライトはレイを抱っこしながら、その重さを確かめる。
「あれから一ヶ月。最初は人の街に慣れてくれるか心配だったけど、今のところ問題はないな。ナイクのおかげだ。ありがとう」
「自らが選んだ道だ。お前達に迷惑もかけている。誉められる謂われはない」
「それでも俺は嬉しいからな。好きに言わせてくれ」
「……ふむ。人の身になった今、感情は食えなくなったが、感謝というのも悪くなかったかも知れんな……」
ナイクはそんな独り言を呟いた。
「だーぅ!」
「よっしゃ! 一緒に風呂入るかレイ」
「あ、すまんなミライト」
「ついでだついで! よーしレイ! 不死鳥ダーッシュ!」
「きゃーぅ!」
ミライトはレイの向きを変えると頭の上まで持ち上げ、そのまま風呂場へと走っていった。
「あ~、いい湯だなレイ」
「たぅたぅ!」
風呂の蓋の上に乗せたタライの中で、レイはぱちゃぱちゃとお湯を叩いて喜んでいる。
その肩にお湯をかけながら、ミライトは優しい声をかける。
「……キュアリが服を綺麗にしてくれて、フーリが旨い飯作ってくれて、ナクルが薪割りや掃除を引き受けてくれて、ナイクがお前を大事にしてくれて……」
「だー?」
「……お前もナイクもこの街に随分慣れて来たから、この幸せも、後少しなんだなぁ……」
「ぅぶ」
読了ありがとうございます!
シリアス「ふふふ、俺の出番だな!」
そだねー(棒)。
ちなみにミライト達の住む家は、庭付き二階建ての大きめ住宅。
一階は食堂、居間、客間、台所、風呂、トイレ二箇所。
二階には寝室が五部屋。
元は地方から来た貴族向けのゲストハウスみたいなものなので結構な豪邸です。
勿論家賃は無料。
おのれミライト!
魔王の人間名はあれこれ悩みましたが、ナイト(夜)とダーク(闇)を合わせてナイクとしました。
ナクルと語感が被ってしまったので、他にもスリープ(眠り)やらシープ(羊)やらキーワードを組み合わせてみましたが、シリープというおならポ◯モンみたいな名前が出た辺りで断念しました。
それでは次話もよろしくお願いいたします。




