悪役令嬢ストロベリーはトースト王子に婚約破棄されてダイフク王子に出会う
ここは王子様の12歳の誕生日をお祝いするために開かれた舞踏会です。とつぜん、トースト王子の声がひびきました。
「ここにジャム公爵令嬢ストロベリーとの結婚の約束をとりけし、ナゴヤメシ伯爵令嬢アンコと婚約をむすぶ!」
ストロベリーは、とつぜん、婚約者の王子様がそんなことを言ったので、びっくりして叫びました。
「なぜ? 王子様。いったい、どうして?」
「ストロベリーは、アンコに、ひどいいじめを行った。そんな者は、わがブレックファスト王国の王妃にふさわしくない」
それから、王子様は、ストロベリーが行ったいじめの説明を行いました。
「ストロベリーは、マーマレードやピーナッツバターといっしょに、アンコの悪口を言い、仲間はずれにした」
たしかに、ストロベリーには、心当たりがありました。
たしかに、数週間前、ストロベリーはアンコに言いました。
「あなた、最近、トースト王子になれなれしくてよ? アンコなんてトースト様には、ふさわしくないわ。身のほどを知りなさい」
それというのも、ストロベリーは、婚約者のトースト王子をアンコに取られたくなかったからでした。
ストロベリーの友達のマーマレードやピーナッツバター、ハニーたちも、たしかに言いました。
「アンコがブレックファスト王国にいるなんて、おっかしーい」
「アンコなんて、ワガシ王国にいけばいいのよ。なんで、わざわざブレックファスト王国に来るわけ?」
「そうよ、そうよ。暗くてもさっとしたアンコなんて、おしゃれなブレックファスト王国には似合わないんだから。ナゴヤメシに帰ればいいんだわ」
あの時、アンコは、泣いて教室を出ていきました。たしかに、あの時、ストロベリーは、すこし悪いことをしてしまったかもしれないと思いました。
でも、翌週、学級新聞には、「アンコ、追放される」という見出しの記事がのっていて、「教室から追放されたアンコは、トースト様にだきしめられてなぐさめられていた」と書いてあったので、その時、ストロベリーの罪悪感は怒りに変わってしまいました。
さて、トースト王子のことが好きなストロベリーは、トースト王子に考え直してほしくて、言いました。
「だって、だって。どう考えても、アンコは、トースト様には、あいませんもの。ワガシ王国なら人気なのかもしれませんけど。ブレックファスト王国には、あいませんもの」
「そんなことはない。おれはアンコと結婚する。おれたちは、ふたりで、すばらしいブレックファストをつくるんだ」
そう言って、トースト王子は、アンコの手をとり、うっとりと見つめ合いました。会場にいた人たちは、拍手を送りました。
こうして、トースト王子は、ストロベリーとの婚約を解消し、アンコと婚約してしまいました。
パーティー会場の隅でストロベリーが泣いていると、だれかが声をかけてきました。
「泣かないで。ストロベリーさん」
「ほっといて。王子様に捨てられて、パーティーで恥ずかしい思いをさせられた、わたしのきもちなんて、だれにもわからないのよ」
「そんなことないよ。ぼくも悲しいんだ」
ストロベリーが顔をあげると、色白で、ちょっとふくよかだけど、やさしそうな男の子がそばにいました。
「あなたは、ダイフク? ワガシ王国からの留学生で、アンコの幼なじみの?」
「うん。アンコさんは、ぼくと一生いっしょにいるって小さな時に約束したのに。トーストくんと婚約しちゃうなんて」
ダイフクは、しょげかえっていました。
「あなたも、捨てられたのね」
「うん。でも、しかたがないよ。意外な組み合わせだけど、トーストにアンコは、とてもあうから」
ストロベリーは、会場の真ん中で、しあわせそうに踊るトースト王子とアンコを見ました。
トースト王子にアンコは絶対に似合わないと思ったのに、こうしてみると、なぜかとても良い組み合わせのように思えてくるのでした。
「悔しいけど、お似合いかもしれないわ。おもいこみで判断してはいけないということね。わたしは、もうここにはいられない。ブレックファスト王国を出ることにします」
すると、ダイフクは言いました。
「じゃあ、ぼくの国にくる?」
「あなたの国?」
「うん。ワガシ王国に来なよ。ぼくはもう国に帰るから。いっしょに行こう?」
実は、ダイフクは、ワガシ王国の王子様だったのでした。
こうして、ストロベリーは、ワガシ王国に留学に行きました。
そして、何年か後、ストロベリーはダイフクと結婚しました。
ふたりの結婚はワガシ王国の人々からとても祝福されました。人々は、みんな、ストロベリーとダイフクの組み合わせが大好きでした。
ワガシ王国の宮殿で、ストロベリーは、今は王様になったダイフクに、ほほえみかけました。
「最初は、わたしとあなたは絶対にありえないと思ったけど。でも、ふたりの相性は最高よね」
「うん。今は、ぼくは、ブレックファスト王国のふたりに感謝しているよ。おかげで、君という運命のパートナーと出会えたんだから」
ふたりは、ずっと仲良くしあわせに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。




