第六話 スライムと適当装備②
「ファイアーストーム!!!」
その声が聞こえた直後、瞬く間に周りにいるスケルトン達が一斉に倒れ、経験値へと変わった。
「へっ?」
ライムはビックリして、少し変な声を出してしまった。
「大丈夫?怪我はないかな?」
そこにいたのは、背は高く、髪はロングの美人な女性だった。
「は、はい。あの…ありがとうございます。」
まだ驚きが残っているのか、ライムは小さな声でそう言った。
「気にしないで。おっと、自己紹介が遅れたね。私の名前はルイ。君の名前は?」
「私はライムです。」
「ライムちゃんか〜。ライムちゃんは今何レベルなの?」
「えっと…14です。」
「レベル14で三層にいるの?二層に戻るの手伝うよ。」
このゲームでは一人で三層へ行くのは最低でも22レベルは必要だと言われている。
「いや、でも… 分かりました。お願いします。」
ライムはケンを驚かせたかったが、自分は実力が足りないと先程の事でよくわかった為、渋々その提案を受け入れた。
「な、なんてね〜大人のジョーク。三層一緒に頑張るぞー!」
「え?どうして…。」
「どうしてって、人数は多い方が沢山モンスター倒せるし?ただそれだけよ!」
ライムは満面の笑みで頭を下げた。
「ルイさんって優しいですね。」
そう言って笑うライム。ルイはフンッとそっぽを向いた。
二人が話している間にも、新しく現れたスケルトンはどんどんと二人に迫っていた。ラスは二人の行動に遅れることが予想される為、ライムはラスの召喚をやめた。
「いくわよ ライム。」
「はい!」
ルイが先導を切り、その後ろをライムがついていく様な形で二人は駆け出した。ルイは目の前に現れるスケルトンを倒さず、HPを少しだけ残すようにして、ライムに倒させる。スケルトンが群れている場合は自分で倒し、2体ほど残してライムに倒させる。
「はぁ、はぁ。」
この形を取って、ライムは30体程スケルトンを倒したと思われる。
「ライムは疲れたでしょ。休憩がてらに装備もみてきなよ。」
ルイはライムが装備を見る間、そこに近づくスケルトンを倒しているようだ。
ライムが一つ一つ確認していると、幸運な事にレア装備を獲得した。
七支刀〔レア〕
装備した時、ATK+26 MP上限+10
この武器はステータスはあまり上がらないものの、MPの上限を上げるという珍しい武器である。
「あの…ルイさん!レア装備出ましたよ!」
「全部あなたが貰っていいわよ〜。」
スケルトンを軽々と倒しながら、そんな事を言うルイ。
「本当ですか?ありがとうございます!」
その後も装備を見ているも、出てくるものは鉄の鎧や、短剣などのノーマルランクのみ。
残りの装備があと少しというところで、ライムはオレンジ色に光っている装備を見つける。ライムはすぐさまその装備の元へ駆けつけ、詳細を見る。
魔王覇鎧(兜)〔レジェンド〕
装備した時、 DEF+36
お供が魔王の場合、無敵状態を得る。
「は?」
ライムはこの装備を見て、つい声が漏れてしまう。
「無敵?スライムって魔王になるっけ?」
ライムは今までダンジョンや村で様々なお供を見て来たが、それでもパンサー以上に強いモンスターは見たことがない。それもそのはず、公式はお供のモンスターを獲得できるチャンスを一度も発表していない。ライムは頭をフル回転させたが、1ミリも分からなかった。ライムはルイの元へ駆け寄り、装備を全て獲得した事を伝えた。
ルイのサポートもあり、ライムはすぐに装備ダンジョンから出ることが出来た。
「今日は本当にありがとうございました!!なんてお礼すればいいか…。」
「そんな、お礼なんて。それじゃあ一つお願いしてもいいかな?」
「え、あ、勿論です!」
「私、大人なのにこんなにゲームやってて。だからまだフレンドがいないんだ。もし良かったらフレンドになって欲しいんだ。」
そんなルイの提案に、ライムは大きく首を縦に振る。
「勿論ですよ!こちらからお願いしたいほどです。」
二人はフレンド登録を済ませ、ログアウトをした。
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翌日 朝
茜は昨日起きた事を健に話していた。
「ルイ、どこかで聞いたような気がする…。ともかくルイさんって人がいて良かったな」
「本当だよ。しかもルイさんのおかげでレジェンド装備も獲得できたしね。」
「レ、レジェンド!?レジェンドってどう言うことだよ。」
その言葉を待っていたと言わんばかりに茜は言葉を続ける。
「それがさ…お供が魔王だと無敵になるんだって。それの事聞こうと思ってたんだよね。」
「あ、もしかして名前に魔王ってついてるやつ?」
「え、知ってるの?」
「有名だよ。レジェンドの中で唯一のハズレ装備って言われてるよ。なんたって、魔王なんかいないじゃん。」
「そう、だよね…。」
露骨に顔が曇る茜を見て、急いで健は口を開く。
「で、でもステータスは高いし、良いと思うよ!」
そんな風に励ましてくれる健に対し、茜は感謝の意を込めてハグをした。
「健ありがと〜!」
「バ、バカッ!離れろ!!」
今回も読んでくださりありがとうございます!
ルイの言葉で「大人なのに」とありますが、大人がゲームをやるのが悪い、と言うわけではありません。誤解を招く様な表現ですいません。
今回のいらない一点豆知識 茜と健の学校は割と頭が良い
(何故茜は頭が悪いのか…)
ブクマや評価をしてくださると、嬉しくて発狂します。