第四十二話 スライムと問題
一日遅れてしまいました。ごめんなせい。グスン
「ワカバごめん!」
「えっ? えっ?」
突然のライムの謝罪に困惑するワカバ。
「実は、勝ったのは偶然で」
「はへ?」
何を言っているんだといった顔を見せるワカバ。
二人の間に少し沈黙の時間が流れる。
「そういえば、ワカバって武士が好きだったりする?」
自分で作った空気を変えようと、ライムが話題を出す。
その質問を受けたワカバはみるみる顔が晴れていく。
「うん! うん!」
首を何度も縦に大きく振るワカバ。
「そうなんだ。どのくらい好きなの?」
「好きっていっても、部屋にフィギュアがあったり、武士の枕があったりするだけだよ」
「へぇ」
そう、ワカバは大の武士好きなのだ。
普通の人ならそれを聞いて驚くかもしれない。普通の人なら……
ライムの部屋も同じようにスライムで埋め尽くされているが、それは通常の部屋だと思っている為、驚かない。
同じように、ワカバも自分は普通だと思っている。
「武将っていいよね。かっこいいし」
「だよね! でも他の人はおじさんっぽいとか言って」
「分かる! 私もスライムのことを最弱キャラとか言われてショックなんだよね」
二人が盛り上がっているのを偶然見ていた人物から溢れた一言。
「……」
は存在すらしなかった。
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ケンとワカバの帰りを心配そうに待つライム。
ケンは決勝戦で負けてしまったらしい。
「勝てたぞ!」
「勝ったよ!」
「よかった……」
笑顔で戻ってくる二人を見てほっと息を漏らす。
ケンは最初にライムとワカバが一緒にいた時は「まじかよ」と言って驚いていたが、今はすっかり馴染んでいる。
マイホームにはライム、ケン、ルイ、シュン、カール、クレイ、ワカバの七人が集まっていた。
ワカバ以外の六人は気軽に話を出来るような関係になっていて、その輪にワカバは最初は遠慮していたが、今となっては皆すっかり仲良しだ。
「それで、問題についてなんだけど」
ルイが全員揃ったのを確認すると、本題をきりだす。この七人にはある問題が発生していた。
それは、家問題。
今まではカールとクレイが我慢していた為、家問題は発生していなかったのだが、ワカバが加わったことにより、改めて解決策を見つけることになった。
「皆で一緒に住むことは出来ないの?」
シュンの言葉にカールは申し訳なさそうにに頭を掻く。
「男子陣と女子陣で別れるのはどうかな?」
「でも、それだとなんかパッとしないんだよな」
ルイは自らの意見の異議をわざとらしく納得する。
実は、この話し合い、陰で糸が引かれていた。
ルイ、カール、クレイ、そして事情を聞いたワカバの四人でライムとケンを二人で住むことにするといった話が行われていた。
「それじゃあ、ルイさんとシュンが二人でって言うのはどうかな? 二人なら上手くやれそうだし」
「でも、私がいない時、シュンが一人で可哀想だわ」
「二人じゃなくて皆でいたい」
シュンも偶然に上手い具合に乗る。
「そっか。でも、二人っていうのも経験が多くていいよね」
カールがその言葉を言うと、四人は一斉にハッと何かを思いついたように息を合わせる。
「「「「ライムとケンの二人っていうのはどうかな?」」」」
「えぇっ!?」
突然のことにケンは大声をあげる。
「良いよー!」
「ええぇっ!!??」
ライムの言葉に更に声をあげるケン。
「何が不安なことがあるなら今言ってもらうと助かるよ」
「いや、不安とかはないですけど」
カールは悟られないようにフォローも入れる。
カールはここまでの流れ作りなど、会話が非常に上手い。
「ライムは良いって言ってるけど、ケンはどうなんだ?」
クレイも上手く質問する。
「勿論良いですよ!」
「だってよ。ライム」
ルイのからかいの言葉に一気に赤面するケン。
「それじゃあ、これで決まりでいいかな?」
何か言う者は現れない為、その案は決定した。
「早速、新居を買いにいかないと!」
家は買うユーザーが多いので、どんどんとマップは拡大されていっている。
「でも、たまにはそっちにも遊びに行くから安心してね」
ルイはウィンクをすると、新居を買いに駆けていった。
「ライム、いいのか? 俺なんかと」
「なんでダメなの? 昔は家に遊びに来てたりしたじゃん」
「まぁ確かに」
「それより、私ダンジョン行きたくなったから行ってくるね!」
「突然だな。俺も行くよ」
「いや、一人でいかせて」
ライムの珍しい行動にケンは少し驚くが、気を利かせて言う通りにする。
ダンジョンに向かう道中、ライムは大きく深呼吸をして、自分の心臓部分を触る。
すると、いつもより格段に早く心臓がドクドクとなっていた。
読んでいただきありがとうございます!!
次回は決勝戦です(きっと)楽しみにしてて下さい!
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