第三十九話 スライムと三試合目
「げっ、次の相手は魔法使い……だよね」
準決勝の相手は女性で、ゲームやアニメでよく見る杖を持っていた。
戦闘職の中でも、種類はいくつかあり、使用している武器によって獲得出来るスキルは変わる。
よって、剣を長い間使用しているユーザーは剣のスキルを、杖を長い間使用しているユーザーは魔法のスキルを多く獲得している。
ライムは現実世界で、運動神経が高い方ではないので、魔法を避けることが出来るかが心配だった。
「準決勝 ライムVSミナ」
「更に増えてる〜」
観客席の人数は二試合目の2倍程になっていた。ライム本人は準決勝だからだと思っているが、実は違う。
三分の一程のユーザーはライムの〝ファイアーボール〟を聞きつけて見に来ているのである。
「あの子だ」
「本当か? あの可愛い子がそんなスキルを持ってるとは」
「まぁまぁ見てなって」
観客席ではそのような会話があちこちで行われていた。
「スタート!」
「〝ファイアーボール〟」
「〝ウォーターカット〟」
スタートの合図とともにライムは〝ファイアーボール〟を放ち、ミナという女性はあらかじめライムの対策をしていたのか、〝ウォーターカット〟という炎属性に有利な技を発動する。
二つの技がぶつかると、砂埃が起こり、会場は静寂に包まれる。
「すげぇ」
観客からはそんな声が漏れる。
砂埃が収まると、二人は一歩も動かずに立っていた。二人の技は互角だったようで、相殺された。
「やった! 少しは強さを確認できた」
ライムは一撃で倒せなかったことに喜びを覚える。気合を入れ直し、ミナに向かって走り出すが前から複数の魔法スキルが飛んでくる。
「っぶな! ってまだくるの?」
間一髪のとこで魔法スキルを躱すが、その後からも次々と飛んでくる。
「これじゃあ攻撃が出来ない」
躱すことに精一杯なので、近づくどころか、どんどんと後ろに押されていってしまう。
ライムは勝利への戦略を躱しながら考える。
「何か、弱点があるはず。魔法……魔法」
頭の中で必死に考え一つの戦略が思い浮かぶ。
その戦略は簡単にいうとひたすら耐え続ける、ただそれだけ。魔法系のスキルはMP消費が高く、いつかはMPがなくなり、スキルを発動出来なくなる。そのタイミングを突く、という戦略だ。
しかし、いくら耐え続けても、ミナはスキルを撃ち続けている。その理由は姿を隠していたお供にあった。
ミナのお供はフェアリー。攻撃性能はお供の中でもダントツで少ないが、フェアリーの仕事は主に回復である。
なので、ミナがいくらMPを使い続けようが、フェアリーで回復出来てしまうというのだ。
「まず、あの子をどうにかしないと」
それに気が付いたライムはすぐに〝体当たり〟を発動する。
「させるか!」
ミナはお供のフェアリーに攻撃をさせないと言わんばかりにラスに集中砲火を浴びせる。
しかし、ラスの〝体当たり〟は必中。どんなに攻撃を浴びようとも体当たりを食らわすので、フェアリーは見事にラスの攻撃を受け、体力の少ないフェアリーは退場する。
「今ならいける! 〝疾風突き〟」
ミナが焦っている際に一瞬だが攻撃が止む。その隙にとライムはスキルを発動し、ミナに攻撃を当てる。更に、距離を詰める事にも成功したライムはそのまま他のスキルを発動しようとするが……
「〝近傍爆破〟!!」
「えっ」
ミナは最後の切り札のスキル〝近傍爆破〟を発動する。
このスキルは自らのMPを全て、そしてHPが1になってしまうのを代償に自分の付近を一斉に爆破するというものである。
ライムもこのスキルを受けてしまえば、一撃でやられてしまうことは間違いなしだが、直前でラスがライムを庇うように飛びかかる。
「これは流石にあの子も終わったか?」
スタートの時と比べて数倍大きな砂埃が起き、観客席からは一切何が起こったかが伺えない。
数秒後、闘技場内には二人のユーザーが倒れていた。しかし、その内の一人はゆっくりと立ち上がり、もう一人の倒れているユーザーへ歩み寄る。
「あの子、どうして耐えたんだよ?」
「知らねぇよ」
観客は混乱しているユーザーも多々現れた。
ライムはラスのお陰でなんとか生き残った。しかし、シンプルにラスに庇われただけでは普通は生き残らない。
ラスの〝食いしばり〟は一度だけ倒されてもHPが1で耐えるという効果を持っている為、ラスは転移されずにライムを庇い続けた、というわけだ。
「ありがとうございました」
ライムはお礼をしながら、トドメを刺した。
観客席からは「ウォー!!」と盛り上がる声が聞こえてきた。
庇う場面で理解ができなかった人の為に(自分の書き方が下手でごめんなさい!!)
通常、ラスはスキルを受けるので、村に転移をされる。よって、ライムもスキルを受けてしまい、倒されてしまう。
しかし、ラスは食いしばりによって、倒されない為、ライムはスキルを受けずに済んだ。 です!
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そして、人生初の短編「愛月さんは理解不能!」を書いたので、そちらも見て下さると嬉しいです!
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