第十一話 スライムとマイホーム
今回はケンのメイン回です。
シーズン2が始まり、様々な物が追加された。それにより、多くの人が喜びの声を上げた。それはケンも例外ではなかった。
ライムが来る1時間程前の20時頃、ケンは一人でマネーダンジョンへ向かっていた。
「3万マネー、早く貯めないと。」
アップデートにより、家が50軒程ズラリと並んでいるマップが新しく現れた。そしてその家はユーザーが3万マネーを消費する代わりに、マイホームとして使うことが出来る。
家は中々大きく、一つの家に五人は少なくとも入れる大きさとなっている。
「急げ!ライムと住む為に。」
ケンは自分で言っていながら、恥ずかしくなる。
マイホームを買うと、一人で住むことは勿論、更にフレンドと同棲することも可能となる。
ケンの目的はマイホームを買い、ライムと同棲する事である。
「ケン、どうしたの?HPとMP大分減ってるけど。」
21時頃になり、ライムと合流するケン。しかし、ケンはダンジョンから帰ったばかりなので、HPやMPが少なくなっている。
「え、あ、これは…前から回復するの忘れてた〜!」
ケンはライムと同棲したいからダンジョンへ行ってました、などとは言えず誤魔化す。
「ふ〜ん、ちゃんと回復してね。あ、ポーションないなら私のあげるよ。」
「大丈夫だよ。自分のあるよ。」
二人はその後、恒例となりつつある、経験値ダンジョンに向かい、ライムは一足先にログアウトをした。
「ここから!がんばるぞケン!!」
ケンは自らを鼓舞し、再びマネーダンジョンへ足を運ぶ。
マネーダンジョンは経験値ダンジョンの様に時間制限などはない為、行き放題となっている。
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「健、昨日何時に寝たの?」
「えっと…0時くらいかな。」
茜と健はいつもの様に登校をする為に、合流をする。しかし、健の目の下には大きなクマが出来ていて、その事を茜に突っ込まれてしまう。
「テスト勉強でもしてたの?」
「そ、そうだね。」
「そっか、私も勉強しないとだな〜。」
健は茜の頭の悪さに救われていた。
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「あと、2千マネー。今日までには…」
ケンは焦りながら、モンスターを倒していた。
新マップという事もあり、家は日が経つにつれ、次々と買われていった。
そして、先程ケンが確認したところ、残っている家の数は僅か2件となっていた。明日にもなればその2件は買われる可能性が高い為、今日中に買うしかない。
「溜まった!急げ!」
ケンはマネーが3万貯まったのを確認すると、新マップである住宅街へ駆け出した。
家を購入するには、その家の目の前まで行ってサインなどをする必要がある。
「間に合った!やったぁ…って危な!」
ケンが残っていた家の目の前まで行くと、幸いな事にまだ購入されていなかった。ケンは残り軒数を確認すると、残っている家の軒数は一軒となっていた。
「よし、これでライムを」
「あ!!」
ケンはすぐに家の前にある看板にサインをしようする。しかし、その後ろで大きな声が聞こえて来る。
ケンが振り返ると、そこには小さな男の子が立っていた。
「もう、ダメだ…。」
その男の子はそう言うと、泣き出してしまった。
「え!?どうしたの?もしかして…君もこの家を??」
「…うん。」
男の子は鼻を啜りながら、そう答える。
「そっか。」
ケンは家をこの子に譲るべきか悩む。そして意を決すると、口を開く。
「君、この家の買い方は分かっているかい?」
「うん。」
「じゃあ、やってみよっか。」
「え?」
男の子はケンの言葉に、驚く。
「君に譲るよ。」
「いいの?」
「勿論!」
「お兄ちゃん、ありがとう!」
男の子は先程の涙を浮かべた顔から、満面の笑みへと変わっていた。
「ケン、どうしたの?なんか元気ないよ。」
「いや、気にしないでくれ。」
「本当に?相談に乗るよ。」
「だからなんでも…いや、実はな」
ケンは悲しみを抑えきれず、ライムに今までの事を話した。しかし、話す際には、「ライムと住みたかった」とは言わずに、「家を買いたくて、どうせならライムと一緒に住もうとしてた」と言う。
「そう…だったんだ。言ってくれたら良かったのに。」
「すまんな。」
ケンは自分に呆れる様にハハと笑う。
その二人の元に、偶然ルイが通りかかる。
「あら、貴方達。こんな所でどうしたの?」
そしてケンは、ライムと同様に、今まであった事をルイにも話す。
「そうだったのね。もしかしたら私、当てがあるかも知れないわ。」
「どう言う事ですか?」
ライムは首を傾げる。
「最近、ライムちゃんと同じ様に、助けた男の子がいてね。その子が家買ってあげるって言って聞かないの。だから同棲をしようって話になってたのよ。」
「ルイさんは人を助けるのが好きなんですね。」
「仕事柄、つい助けちゃうのよね。もし、その子が良ければ4人で同棲とかどうかな?」
「良いんですか?」
ルイの言葉に、ケンの顔が少し晴れる。
「その子が良ければ、ね。今から会う約束だから、そこで聞いてみましょう。」
そして、ルイは村の端の方向へ向かう。
暫く歩き、待ち合わせ場所に着くと、一人の男の子が立っていた。
「君!?」
「お兄ちゃん!?」
同じタイミングでケンと男の子は声を上げる。
「あら、知り合いなの?」
「はい、先程話した男の子です。君、名前を教えてもらっても良いかな?」
「うん。僕の名前はシュンだよ。」
「シュンか。俺の名前は」
「お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ!!」
「そ、そっか。」
ケンはシュンに少し照れる。
「シュン、一つお願いがあるんだけど…」
ケンはシュンに4人での同棲を申し出る。
答えは二つ返事で返ってきた。
その後、ライムとシュンの自己紹介が始まると、ルイがケンの側に近寄る。
「ケンって中々大胆なのね。」
ルイはケンの耳元でそう呟く。
「ち、違うですよ!!」
ケンは動揺して、変な日本語を喋ってしまう。
「そうですか。あー、青春っていいなぁ〜!」
ルイがケンの顔を見ると、真っ赤に染まっているのが、すぐに分かった。
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「いや〜、健が家を欲しいなんて思いもしなかったよ。気づかなくてごめんね。」
「いや、こちらこそ黙っててごめん。」
「それはそうと、今日テストだね。」
「うん……………ん?」
「どうしたの?」
「忘れてた!!最近ずっとモンペアしかやってなかったし。」
「いや〜健もそう言う事はあるんだね。」
「そう言う茜はどうなんだ?」
「何を言っているの?私はいつも通りノー勉だよ!!」
キメ顔でそう言う茜。
テストの結果、茜はいつも通りの点数。
健はいつもの二分の一程の点数となった。
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今回のいらない一点豆知識 ルイの仕事は山岳救助隊
(物凄いかっこいいゾ!)




