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文章のねじれ

 文章のねじれ


 これは特に短く簡潔なセンテンスで文章を書く……いわゆるラノベの文章で書いている人には起きにくいものです(絶対に起きないとは断言しない)。

 ごっちりもりもりに描写を盛る癖のある人はかなり高確率でねじれ文が紛れ込んでいるはず、暇な時に一度、チェックしてみるといいでしょう。

『ねじれ文とは』をざっくり説明すると、文章を骨格だけにしたときに不備のある文章のこと。

「何を言ってるんだお前は、日本語をきちんとした順番で並べているのにそんなことが起きるわけがないだろう」って思うでしょ、うん、思いますよね、普通は。

 実は俺ぐらい下手くそだと、こうしたねじれ文はめちゃくちゃ多いです。でも、下手くそだけではなく、かなり上手な人でもやはり執筆中はそこまで神経を使っていられないのか、ちらほら……

 実はこの『ねじれ』、相当ひどいものでない限り違和感を与えないため、気づきにくいという特徴があります。大体が完全口語で書くことが一般的となった今日の小説では、日常の会話で起きるような語彙の推測と補填が文章にも適用されるために、読む側も特には気にならないのでしょう。

 読者が気にならないならほっとけばいいじゃないか――いかにもそのとおり。なので、普通に文章が書けるレベルの人は、ここに書かれているのはあくまでも豆知識程度に考えてくださいね。


 さて、ねじれ文の例をあげましょう。


『長老が言うには、その大陸はここから海を隔てた向こうに存在している』


 ちょっとあざといけれど、説明のためなのでご容赦を。

 一目瞭然、長老が『言うには』なのですから、この言葉の締めは伝聞形になるはずですよね。


『長老が言うには、その大陸はここから海を隔てた向こうにあるのだという』


 もういっちょ行ってみましょうか。


『伝説の武具は盾や剣、脛あてや小手などがあるので、各地を旅することになる勇者も少なくはない』


 これ、分解不能ですよね。

 この文の主軸は『伝説の剣は少なくない』?

 違いますよね、『伝説の武具はいろんな種類があるので、勇者は各地を旅しないとすべてを手に入れることができない』というのが文章の趣旨ですよね。


 読んでくれた人はこれを『てにをは』の不備として取り扱うかもしれません。このパターンの指摘は実に多い。

 なぜなら『伝説の武具には盾や剣、脛あてや小手などが~』と直すだけで『には~などがある』というおさまりの良い形となり、前半が丸ごと各地を旅することになる理由として扱われるわけです。

 もしくは前半と後半、二文に分けろという人もいるかもしれませんね。


『伝説の武具は盾や剣、脛あてや小手などが各地に散らばって存在している。それ故に各地を旅することになる勇者も少なくはない』


 ふんわりと「この文章は勇者について書かれたのか伝説の武具について書かれたのか、わからないねえ」なんて言われるかもしれない。


『勇者は各地を旅することとなる。なぜなら伝説の武具である盾や剣、脛あてや小手などが世界各地に散らばっているからだ』


 このようにねじれを直す方法は一つきりではなく(詳しく知りたい人は複文とか重文とかを勉強してね)、かつ分かりやすいパターンでのねじれは書いてる最中にほとんど修正されてしまうため、実際に文章化された作品の中に残るのはプロですら見落とすほどの難問であり、それゆえに一般読者ではその原因を言語化することが困難なのです。


 例えば文章中に『私の夢が勇者になることでした』とかあったら明らかにおかしいとわかるけれど、『上がり框に腰かけている女は長い髪を恐ろし気に垂らして、幼い私の目がとても怖いものだとそれをとらえた』とか書いてあったらちょっと気づかないでしょう?

 読者の方も「長い髪の話をしているんだから、幼い私の目にはそれが怖く見えたって意味なんだな」って勝手に補完してくれちゃうから、特に問題視されることもない。当然指摘されることもない。

 ところで、この長い髪の文章、どこがおかしいか、あなたはわかりましたか?

 わかったけれど「指摘するほどでもないな」って思ったんじゃないかな。文章のねじれなんてその程度のことで、修正必須ではないです。


 問題なのは「どこがおかしいのかわからない、普通の文章じゃん」って思った人、「実に文学的な表現じゃないか」と思った人。

 こういった人たちは他の人から些細なねじれを指摘された時に「これは間違いではない!」ってブチ切れないように気を付けてくださいね。

 言語センスの鋭い人は、文章のねじれを『違和感』として感じ取る能力があるんです。それを言語化して作者にフィードバックできるかどうかは、また別の能力。

 とりあえず『違和感』があるから作者にお伝えしたよ、という無邪気な善意を頭から否定してブチ切れることの無いように、『ねじれ』というものがあるということを頭の片隅にでも入れておいてください。


 さて、ここまで三度に分けて話してきましたのは、あくまでも文章だけをチェックするための方法です。

 実は小説においての文章というのは『正確な情報伝達のためのツール』でしかありません。ただ、ツールであるからこそ、過大な描写や奇をてらった言い回し以前に正確さが求められるのは当然のことでしょう。

 ところが、この正確さというのが厄介で、学校のテストのように正解というものがなく、前後の文脈や話の流れによっては不正解も正解になり得る……つまり、『正しく伝わるならば何でもオッケー』。

 だからこそ、最終的なチェックは『他人』に委ねるべきなのです。自分の文章を自分で読んでは隅から隅まで理解できるのが当たり前、しかし基準が他人であれば『伝わったか』という確認ができるわけですね。ここ大事。


 だからこそ、言語感覚に優れた良き下読みさんを探してください。不備を言語化できるほどの能力を持つ下読みさんを求める必要はありません。言語センスが何よりも重要。

 ここに書かれた基礎中の基礎知識さえあれば、下読みさんが違和感として指摘した場所を丹念に見返して、きっと、自分で不備を見つけることができるはずです。


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