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漢字の閉じ開き

 漢字の閉じ開きのルール


 厳密に「これ!」というルールは、実は存在しません。

 しかし今はスマホやパソコンといったツールで文章を作成するといった特性上、無駄な漢字変換が多くなる傾向にあります。

 つまり少し古風な言葉づかいでつまった文章を書くと漢字使用率が爆上がりして画面内が文字でぎっしりと埋められた感がするという、アレです。


 これを防ぐためには『手書きであった場合、自分はこれを漢字で書くだろうか』という意識を持つことが大事です。

 とはいえ執筆中はそんなことに気を使っていられないほどにテンションが上がってしまうというのも事実、よって書きあがってからのチェック時に、まずは漢字の使い過ぎから見直してみるといいでしょう。

 まず最初に、現代の文章の常識では「開いて書くべき」である漢字が閉じていないかを確認しましょう。

 これはワードや一太郎で文書作成をしている場合、文書内の検索をする機能で簡単にチェックできます。


 まずは簡単なルールをひとつ。


 ――常用漢字以外は基本的に開きで


 つまり難読漢字を使いすぎるなということですね。

 このときの指針となるのが常用漢字です。

 尤も、いちいち常用漢字表に照らし合わせて漢字の閉じ開きを考えるのは大変ですよね。それに締め切りなど決まっていたら、いちいち漢字の一字にまで気を使ってもいられないでしょう。

 それに作家というものは自分が身につけた漢字知識をひけらかしたい生き物であるのも道理、ここぞという決め所で難読漢字や画数の多い漢字が出てくるのは演出のうちであり、許容範囲だと私は考えています。

 良くないのは地の文すべてを埋める勢いで常用外の漢字が使われ、現代文であれば開かれていることが当然であるはずの「尤も」や「然し」までが閉じられている文章。

「尤も」も「然し」も、その読み方は常用外であり、本来は開いて書くものです。さらに細かいことをいうと、読書に慣れていない一般人の、いったいどの程度の人が、この漢字をするりと読めることでしょうか。これらは『読んでもらえない可能性』が高い漢字なのです。

 逆に「薔薇」などはネット上でよく見かける漢字であり、常用外であっても読んでもらえる可能性が高いでしょう。文章中に使っても特に問題はないと思われます。

 つまり基本は「日常生活の中で見たこともない漢字の使い方をするな」ということですね。

 古い文豪の小説などでは「尤も」も「然し」も出てきますが、今どきの小説を読んでいるときはまず見かけないでしょう?

 これは読者が読めなさそうな漢字は開いてしまおうというルールがあるからなのです。


 さて、例として「尤も」「然し」をあげましたが、そのほかにも「殆ど」「暫く」「随分」などの副詞は基本的にはひらがなで書きます。

 スマホやパソコンの変換任せにしていると、自分ではひらがなにしたつもりが漢字で書かれていたりする場所でもあります。

 ワープロソフトの文中検索機能を使ってうまくチェックしてみましょう。

 ちなみにこの逆で、古風な文章を目指して「尤も」を使っていたのに、一か所だけ「もっとも」になっていたら、これは表記ゆれですよね。この場合はひらがなの「もっとも」で検索をかけてチェックしましょう。

 副詞の場合は他に近しい誤字パターンが存在しないため、一括変換も可能です。


 次の開きで書くパターン。

 少し難しいですが動詞では漢字で書くけれど補助動詞では開くもの。

 代表的なものが「下さい」ですね。

「飲み物を下さい」「愛を下さい」という場合は、これは動詞ですよね。しかしこれが「飲んでください」「愛してください」だった場合、これを補助動詞と言います。

 これは少し難しいので「ください」の前に「飲み物」「愛」などの実質的な物が有れば閉じ、「飲む」「愛する」などの動詞がついていたら開きだと決めてしまえば、ほぼ作業的に処理することができます。



 えー、最後のパターンが、これ、マジで俺じゃなくてちゃんと国語の勉強した人に説明して欲しいんだけど……複合動詞の後ろは開く。

 ただしこれ、「開きの場合が多い」程度に覚えておくといいかも。

 というのも、日本語には二つの言葉を合体させて作られた元とは違う意味を持つ言葉(複合語)というのがたくさんあるので、どれが複合動詞なのかを考えちゃうと、とてつもなくめんどくさいことになるのです。

 それに「食べ終わる」とか、「話し始める」とか、漢字で書いても違和感ない場合が多いし。

 俺レベルのど素人が気を付けるのは「付く」「切る」あとは「~てみる」「~ておく」のように本来の動作とは違う用法になる場合のみ。具体的には「思いつく」「気づく」「思いきる」「言いきる」など。

 例えば「付く」っていうのは、本来は何かが何かにぴたっとひっついた状態を指すわけですよね。それが『気+付く』の形になると、気持ちが何かにぴったりと密着するわけじゃなくて、「気づく」っていう一個の動詞として使えちゃうわけでしょ。

 同様、「言いきる」というのも『切る』の意味は本来の『カットする』じゃなくて『言う』を強調する補助的なパーツとして使われる。ただし、意味的にほとんど変わりない「言い尽す」だと、『言う』も『尽くす』も本来の意味どおりの使われ方をしているから、絶対に開けとは言われない。要するに「元の意味とは違ってしまう部分は開き」って覚えた方が早いでしょ。

 なんでそんなことになるかというと、漢字が表意文字であるために目で見たときに……みたいな難しい理屈があるんだけど、そこは俺、国語の先生じゃないので解説はご勘弁を。


 ともかく、文面が漢字だらけになってしまう人は特に注意して、せめて『本来ひらがなで書くべきところ』を見直すだけでもだいぶ違うのではないかと、そう思うわけです。


 ちなみに、以上いろいろ言ったけれど、日本語は生き物であり、前後の文脈や漢字の置き方によっては必ずしもひらきである必要はないと判断されることもあります。

 かえせば前後の文脈や漢字の置き方によっては「ここは開きじゃないと絶対に読みにくいよ」という場所もあるわけで、誰かに漢字の閉じ開きを指摘されたときにすべてを「好みの問題」で片づけてしまうのはやめましょう。

 あとは自動変換をあまり信用しすぎないことです。所詮は機械的な処理であるがため、誤変換はどうしても起きます。本来人間の目であれば「これでは美しくない」と思うところをチェックしてくれるようなこともありません。

 最終的に信頼できるのは生身の人間の感性なのです。


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[一言] 姐さん、勉強なりまっす!
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