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栄光なんて必要ない  作者: Izumi
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生きる意味とは

夕食が終わり、部屋に戻ろうとした淳をミアが呼び止めた。

「Jun, Have a seat here」(ここに座りなさい)

ミアの表情が少し硬い。


『何か怒られるような事したかな?』

言われた通りミアと旭が並んで座っているリビングのソファの向かい側に座った。

旭がウィスキーが入っているロックグラスを持って中の氷をカラカラと回しながら


「ケイか聞いたんだが、オマエこれからの進路を決められてないそうだな・・・」


『リコ先生から慧姉ラインでの情報か』

淳は瞬時に想像した。多分間違いない。

「うん。決めてない。」


淳が答えると旭は淳の顔を見て微笑みながら酒を飲み、

「考えてないのか?それとも考えているが決められないのか?」


「考えているけど、選択肢が多くて決められない。

もっと本音を言えば、特にやりたい事が無い。」

淳は神妙な表情で答えた。


「What options do you have?」(どんな選択肢?)

ミアが自分のグラスに旭の飲んでいる酒を注ぎながら尋ねる。


「亮兄の会社に就職、慧姉の秘書、四葉ホールディングス入社、矢部元総理大臣の秘書をしながら政治家になる勉強と準備・・・具体的にはこれくらい。」


淳が答えるとミアは鼻で笑ってグラスに口を着け、

「I see. 難しいチョイスね」

ミアの表情が柔らかくなった。

「実はジュンがまたいつも通りのんびり構えて何も考えてないんじゃないかと心配していたのよ。

でも安心したわ。ちゃんと考えているのね。」


淳は苦笑いした。


「つまり、オマエにとって魅力的なオファーが無く、オマエ自身でも特にやりたい事が無いって事だな?」

旭がグラスに酒を継ぎ足しながら言う。


「うん。マックスは祖国イスラエルの為になる仕事に就きたいと言ってたけど具体的にどうするってのは聞いてないし、ミランダはネット分野で天才だからそっち方面の仕事に就くとは思うけど何も聞いてない。けどオレは何に対してもイマイチ興味が湧かなくて・・・

涼兄みたいな野望はないし慧姉みたいな使命感も無い。

で、どうしたら良いのか少しなやんじゃって・・・。」

淳の本音だった。


「sense of mission ! (使命感)そんな事を言うなんて・・・ジュンが成長しているわ!」

ミアは淳の言葉を聞いて喜んでいる。淳がまた苦笑いになる。

俯き加減でグラスを見つめている旭も嬉しそうだった。


「オマエの人生だ。納得するまで考えればいい。」

そいう言って旭はグラスの酒を一気に飲み干し、空いたグラスに酒を注いだ。



「人生かぁ・・・ねぇ、人間ってなんで生きるの?」

淳が思い立った様に旭に尋ねた。

旭は酒を注ぎ終えると淳の顔を見た。

ずっと微笑んでいる。ミアも笑顔だ。


「天才と言えどまだ15歳、当然そんな事だって考える時期だよな」

「Meaning of Life ! 生きる意味って事ね」

旭とミアは微笑んだまま顔を見合わせた。


「笑わないでよ。成城院に入った頃から頭の中にあるんだ。

みんな何の為に生きてるんだろ?って」

淳が少し照れながら言った。


「オレの個人的な考え方でいいか?」

「うん。パパの意見なら興味ある。」


旭がグラスを手に持ったグラスを見つめながら話始めた。

「人生に意味は無いとか、生きる事に意味は無いというヤツもいるがオレはそうは思ってなくてな・・

生物学的な見地からすれば、生物が生きるのは種の保存が絶対的な目的だ。

人間も生物だから例外では無いだろう。

だが、人間は脳が発達し他の生物にはない感情を持つ。

その中でもプライドとか自己肯定感とか・・・

高度に発達した豊かな文明に生きる本能以上の欲望と言えるかも知れない。

つまりその中で、そんな事を考えられる時間が出来たという事だ。

原始の時代は天敵から身を守ったり食べる事で精一杯だったろうからな。


種の保存の為に子供を作り育てる。

それはどんな生物にも共通する行為だ。

しかし人間と他の生物とは一線を隔す決定的な違いがある。


知能だ。

火を制し道具を創造できる事が決定的な違いだ。

科学を生み出し長期に渡ってそれを進歩させてきた。

何世代にも知恵は伝承され高められてきた。


人間独自に生きる意味があるとするなら、前世代から受け継がれて来たモノを次世代に伝える。

但しただ伝えるだけでは意味が無く、前世代より高いレベルに高めて伝える。

それが人間の生きる意味だとオレは思っている。

少なくてもオレがやっている量子物理学という研究はそうだ。

そして慧が従事している政治という仕事も人々の生活をより豊かに高めるという意味では同じだと思う。

オレの次世代といえば、子供である慧であり亮であり淳だ。

その次世代の人間の成長をサポートしているのがミアだ。

現代社会の様々な次世代に向けての研究者をサポートしているのが亮だ。

だからと言ってオマエにオレの研究を受け継げと言うつもりは無い。

やりたい人間がオレの研究を土台に新たなステージに上がれば良いと思う。

オマエはオマエのやりたい事、前世代が作り出したものを受け継ぎ新たなモノを作りだせば良いと思う。

それにオマエが吸収した知識を使って前世代からの難問を解決しても良い。

長年に渡って数学の悪魔と言われたフェルマーの定理を証明したワイルズの様な生き方も素晴らしいと思う。


そこで話は最初に戻るが・・・

一番大事な事は、オマエがどの分野のどんな事に興味を持ち挑戦意欲が湧くかという事だ。

幸いオマエは人よりも賢く生まれ可能性という意味では人よりも多くの選択肢を持つ。

その才能はオマエだけのモノなのだから好きなモノに自由に使えば良い。

自分で決めるのだ。他人の意見に惑わされてはいけない。

なぜなら、オマエの人生はオマエだけのものであり失敗しても他人が保証してくれる事なんてあり得ないからだ。」


旭は持っていたグラスを口に付け一気に酒を飲んだ。

ミアは淳を見ながら微笑んでいた。


久々に説教を食らった気分だ。

叱られたという事ではない。講義を聞いた気分だ。


「アナタを高校生に戻したのは、そういう事を考えて欲しいからだったの。

生き方を模索し自分の価値や意義を考えて欲しかった。

一般的な常識を身に付けて、人間の集団生活や思考・感情・心理も知って欲しい。

誰かを好きになって恋愛もして欲しい。

考える時間が足りないならもう一度大学に入っても良い。

子供の将来を想う親として当然の感情だと想うけどね。」

ミアが手に持ったグラスを見つめながら柔らかい表情で言った。


「わかった。もっと色々考えてみる。

ありがとう。パパ、ママ、俺は本当に二人の子供に生まれて幸せだよ」

本音だった。



そこにエッガー一家がリビングにやって来た。

セオもマリアもミランダも揃っている。

そして何だか畏まっている。


「what`s wrong ?」

ミアが戸惑いながら尋ねた。


「ずっと世話になっているが、そろそろ引っ越そうかと思ってな・・・。」

セオドアが少し寂しそうな笑顔を浮かべている。


「なぜだ?何か不自由な事があれば何でも言えといつも言っているだろう・・・何かあったのか?」

旭が驚いた表情でセオドアに言った。

「水臭いじゃない?マリアもセオも親友だと思っているのに。

マリアはここの生活が楽しくてずっと一緒にいたいって言ってくれてたじゃない?」

ミアも驚いていた。

マリアはも寂しそうな顔をしている。

ミランダは・・・目を真っ赤に充血させて何かに耐えている様だった。

淳はこんなミランダを初めて見た。

以前PMCに拉致されそうになった時でさえこんな表情はしなかったのだ。


















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