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栄光なんて必要ない  作者: Izumi
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デート 3

ミランダへの拉致未遂事件の二日後、セオドア・エッガーのオフィスの応接室に

CIA東アジア担当でケースオフィサーであるデヴィット・エスパーが訪れていた。

事件の背景を説明する為だ。

コーヒーを運んで来た女性秘書に30分間誰とも繋がない指示を出し、秘書が部屋から出て行った瞬間に部屋の雰囲気が変わった。


「今回の件ですが、ただの人身売買組織ではありませんでした。

拘束できた奴はサウスコリアのPMCのメンバーです。」

エスパーがコーヒーを飲みながら話を始めた。

セオドアが少し驚いて

「韓国にPMCなんてあったのか?」


PMC・・・Private military company 民間軍事会社と呼ばれる民間の営利武装グループだ。


「エッガー氏ともあろう者が・・あるんですよ。しかも以外に数も多い。

あそこの軍は徴兵制でしょ?退役後に仕事が無い人間を吸収して大きくなっています。

若者の失業率が30%近くまで上がっているから、当然といや当然なんですがね」


「なるほど・・・で、そいつらが資金獲得の為に人身売買のアルバイトをしてるって訳か?」


「そんな感じです」


セオドアはソファから立ち上がり窓のブラインドを明けて

「取り敢えず、事件はここで終わりか?」


「いくつか気になる点もありますが・・・

娘さんがあの店に入ったのは偶然ですよね?個人を特定して拉致するなら前もって誘導計画を練るのが普通です。つまり単なる事故だと思われます。」


「そうか、それならまだ・・・」


「以前あった中国の安全部の件ですか?」


「そうだ。また中国が裏で絡んでいるのかと思ったんだ。」


「なるほど・・・だが今回は違います。 娘さんに対しての中国安全部の情報はエージェントが収集して本部の情報分析官がチェックしていますし何か動きがあればすぐ連絡しますよ。」


「そうだな・・・頼む」


セオドアはCIAに対して多額の寄付を行なっている。

娘の安全に対しての投資であるが、それを盾に将来のCIA入りを既成されるのを防ぐ意味もある。

アメリカ軍全般の武器に関するアビオニクスを設定したのがセオドアだった事でも、上層部がセオドアに関しては敬意を払っている。


「ところで・・・一緒にいたジュン・クニミですが・・・」


「ジュンがどうかしたか?」


「銃を所持している事はご存じですか?」


「銃を?」


「スミス&ウェッソン社製、M&Pボディガード380 という銃です。

手のひらサイズの小さい銃でアメリカの法執行機関でも採用されている銃です。

500ドルちょっとで買えると思いますよ。」


「で?ジュンが銃を持ってる事で何かあるのか?」


「いえ、それに対しエッガーさんが何も思わなければ良いのです。我々にとっても助かる事ですので」


「それじゃ、ベレッタ92でも買ってプレゼントしておくよ」


ベレッタM92はイタリア製の拳銃でアメリカ軍を始めとする世界中の軍隊や法執行機関で広く使われている。CIAの公式拳銃として有名だ。


「我々と同じ銃ですか?いっそ彼がCIAに入ってくれたら話は早いのに・・・」


「どんな事でも可能性はある。リクルーターに頑張らせる事だな」


やっと張り詰めた空気が緩んだ。







淳が学校から帰宅すると、玄関でミランダが出迎えた。


「ミランダ・・・もう大丈夫なの?」


「おかえり、ジュン! もう大丈夫、元気になったよ」


事件の翌日から学校を休んでいたのだ。

身体より精神的ダメージの方が大きい。

淳が自室へ行き制服から着替えてリビングに行くと、ミランダが待っていて


「ケーキを焼いたの!食べてよ!」


テーブルにはシフォンケーキが紅茶と共に置いてあった。


「この前、守ってくれたお礼ね」


椅子を引いて、淳に座るように促す。

淳が座ると、ミランダも自分の分を持って来て向かいに座った。


「ジュン、本当にありがとう。もしジュンがいなかったら今頃はどこかで奴隷になっていたよ」


「前にナイトになれって言われたからな、クラヴマガ習って良かったよ」


ミランダと初めて会った時、ミランダが言った言葉を思いだした。


「すごくカッコ良かったよwww」


「ありがとう、でも笑いを堪えながら言うセリフじゃないぞ!馬鹿にしてるのか?WWW」


少しケーキを食べてからミランダが

「実は、前にもこんな事があってね・・・」


ミランダはアメリカで中国情報安全部の諜報員に拉致されそうになった事、その後も狙われ続けているらしい事を打ち明けだした。

淳は以前セオから事情を聞いて知っていたが、ミランダの話を顔を見ながら聞いた。


そしてミランダは最後に、淳を覗き込む様に顔を見て

「Will you continue to protect me?」(これからも私を守ってくれる?)

と、言った。

淳はその可愛さにドキっとした。今まで感じた事の無い気持ちである。

「I will to continue to protect you」

男らしく、ちゃんとミランダの目を見て約束した。


すると・・・

「よかった!まだ行きたい店が沢山あるんだ!一緒に来てね!ちゃんと護ってね!」

そう言うと、ケーキを美味しい!と言ってパクついていた。




総理官邸、矢部晋三総理大臣は政務秘書官から受け取ったジェトロからの報告書を眉間に縦皺を寄せて目を通していた。

韓国のレポートである。

報告書によれば、韓国内では反日感情の高まりによって日本との開戦論が噴き出てきたと言う報告だった。

重大なのは、韓国経済を支える財閥の中にもそう唱える人間が複数いて、その人間が軍のスポンサーである事で、軍部と密接な関係筋が開戦論者だとすれば話が拗れると面倒な事になりそうだった。

なにせ大衆迎合大国である韓国だから、世論が高まれば現在の政府には抑えきれない。

軍の暴走に政府が乗っかる事も絶対無いとは言い切れないのだ。

対して国内の公安からは日本国内において、嫌韓感情から韓国に経済制裁を加えるのが妥当だとする意見が70%に上がっていると報告が来ている。

党内にも急進派は韓国との国交断絶を望む声を出している。

この状態で何かのアクシデントが起き、どちらかの国民の死亡事故が起きた場合、一気に開戦論が高まり国交断絶だけでは済まない話になるかもしれない。

日本憲法において戦争は出来ない事になっているが、集団的自衛権の行使により先制攻撃は可能で、それを機会として韓国軍が侵攻してくる可能性まであった。

開戦しても勝利はするだろうが、勝利といっても何人が犠牲になるか分からない。

現在でも韓国でビジネスをしている日本人は少なく無いからだ。


国は復興できるが人命は戻らない。


現状の口喧嘩なら問題は無い、ただ実力行使だけは阻止しなくてはならない。

矢部は関係正常化の手段を探るが、日本が折れる事だけはできない。

それこそ火に油を注ぐ結果になりかねない。

韓国はどんな事をしてくるだろう・・・

要人拉致・誘拐のうえ裏交渉を条件にしてくるケースもあるかも知れない。


実は、もう既に実行されて失敗した事を矢部は知らない。


アメリカが重要視しているミランダを日本で拉致し、アメリカの機嫌を損ねたくない日本と交渉する案を韓国政府は考えていた。

できれば韓国政府が事件に仲介し日本に対して恩を着せる事が出来ればベストだと。

そこで国家情報院が民間の軍事会社を使い実行したのが、ミランダ拉致事件の真相だったのだ。





深夜、淳の携帯が鳴りミランダからラインが届いた。

新宿のフルーツパーラーの場所が送られてきて、

【来週日曜!昼】としか書いていなかった。






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