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栄光なんて必要ない  作者: Izumi
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ギャルトーク?

「本音を言おう。」

重蔵が空を見ながら呟いた。

視線が右斜め上な事から、おそらく嘘はない。


「後継者じゃ、ワシの。四葉グループ売上85兆円、関連会社5000、従業員数100万を束ねこの国の未来を託せる人間を探しているのじゃ。」


太平洋戦争後、GHQが創った過度経済力集中排除法によって四葉グループはズタズタに切り刻まれた。

だがグループ間の結びつきは強く、仲間が金曜の昼飯を一緒に食べる親睦会が始まった。

親睦会では元四葉グループの社長達が集まって情報交換をしたのが始まりで、それが金曜会。

金曜会に出席できるのは上位15社のみ。

現在はそれが四葉の意思決定機関になっていて、重蔵は金曜会唯一の最高幹部。

つまり重蔵こそが四葉の頂点なのだ

その金曜会トップの決定的な後継者がいない。それが重蔵が抱える一番の悩みなのだ。


「璃子センセのお父さんじゃダメなんですか?たしか四葉御三家の四葉重工の社長さんだと聞いていましたが・・・」

「あ奴は飾りじゃ・・・四葉のトップはいくら優秀でもサラリーマンじゃダメなのじゃ・・・」

重蔵は下を向いた。

「よいか淳クン、組織が大きくなればなる程人間が増える。他人より上に上がろうとすればミス無く大きな功績が必要で、そうなると変な人間関係やリスクを嫌う事なかれ的な人間が多くなってしまう。それでは組織は硬直し伸びなくなってしまう。

徳川幕府がそうじゃったように、皆上役の顔色を伺い自分の地位を脅かす物を排除しようとする。

小さな企業には無い、大きな企業独特のモノじゃ。

四葉はこの国の根幹を成している組織じゃ、その組織が硬直してしまうという事は日本そのものが硬直し没落してしまうという事なんじゃ。

ワシの代でそれは出来ん!断じて許されん!

そんな時に天才児と呼ばれる少年がワシの前に現れた。

能力の優秀さ、物事の本質を見抜く素質、政治的センス、あとたった10年程度ワシの傍で勉強すれば四葉100万人を束ねていける。世界とも渡り合えると確信させる人間じゃ。

この先短いワシがどんな手段を使っても四葉に入れたいと思うのは自然な事じゃろうが!」


淳は黙って聞いていた。

そんな風に思って接していただなんて・・・


「ただ、キミはまだ若いし生まれたての赤ん坊と同じ位の可能性と選択肢がある。

ワシはキミを諦めんし、今回結婚が上手くいかなくても違う方法でキミに選んで貰える様に努力は続けるよ。」


「ただ結衣は良い子じゃ、あの子を悪く思わんでくれ」


「結衣さんは後継者になれないんですか?」

淳が聞いた

「確かに優秀じゃ、そして璃子も本当に優秀でセンスが良い。

じゃが女じゃ。

今の時代、確かに優秀な女性は増えている。男を凌ぐ能力を持つ者も少なく無い。

じゃがのう、日本だけでなく世界を見ても大企業のトップは皆男じゃ。

まだ女が100万の人間を束ねられる時代では無いのじゃ。

もし璃子と結衣どちらかが男じゃったら、ワシの総てを渡しておったろうな」


「結衣さんはボクとの結婚は了承してるんですか?」

「結衣は知らん。ただ、言えば従うじゃろう。キミは結衣が抗えない魅力を持っているからな」

「なぜそうと?」

「あの子はキミがアメリカにいる時に興味を持った様じゃ。そして今回、キミが姉君に申告した次世代戦闘機に関する定義にも感心しておったからな」

「なぜボクが創った事を知っているんですか?」

「キミの姉君が防衛大臣に就いて僅かな時間であそこまでの仕事を出来るのが不思議でな・・・ちょっと裏を取ったんじゃ。F3戦闘機は我が四葉重工がメインで開発する事が決まっているからな」


「男性で有望な人材はいないんですか?」


「探してはおるが現在はいない・・・皆サラリーマンばかりじゃからな。

ホンマ自動車を見ろ。創始者が死んで2代目、3代目までは何とか良かったが現状はどうじゃ?

サラリーマン根性を持った人間がトップにつくとああなる。良い商品を生み出せる土壌が無くなるのじゃ。対して愛知自動車はどうじゃ、5代目になるが血縁がトップに立ち政府と対立しながらでも良い商品を送り出しているじゃろうが!そういう事じゃよ。」


老人の願いとは卑怯だと淳は思った。

心情的に断れない空気を造るからだ。

ただ、そう思ってくれる事は嬉しかったし感謝もした。


「結衣さんとの結婚は別にして考えてみる事にします。

それから・・・高い評価を頂いて、本当にありがとう御座います。」


「ああ、前向きに考えてくれ。」


そう言い終わった時に結衣が帰って来た。

重蔵も淳も表情を作り変えて結衣を見た。

丁度料理が運ばれて来た。

中華四川料理のコースだ。

「結衣のリクエストじゃ、淳クンは辛い物大丈夫か?」

「あ、辛い物好きなんですよ。ありがとうございます」

すると重蔵がニヤニヤしながら

「料理の好みは一緒か・・・可能性はあるのう」

結衣はそれを聞いて

「何の話?淳クンと好みが一緒だったらなんなの?」

「ボクと結衣さんが性格的に合うかどうかって話ですよ」

淳はそう言いながら箸を持った。






璃子はマシンガンの様に次々に言葉を放っていた。

慧は頷きながら、イタリア料理のコースを口に運ぶ。

学生時代から変わらぬ光景だった。

璃子が話し慧が聞く、落ち込んでいる時は励まし、悲しんでいる時は慰め、喜んでいる時は共に笑った。

慧は感情を表に出すタイプでは無いが、不思議と璃子には分かり絶妙のタイミングで声を掛ける。

話を聴いて、慧よりも悲しみ怒り喜ぶのが璃子だった。

お互いに親友と呼べるようになってもう13年経つ。


「聞いた?アンタの弟ってこの前ウチの者と喧嘩して拳銃まで持ち出されてるのよ」

「はぁ?知らんけど!なにそれ?」

「聞いてないの?最初に私の従弟にあたる奴が淳クンを生意気だって仲間連れて殴る蹴る。で淳クンが私達に言って来て、また同じ奴に殴られたから今度は証拠だして来て。やった生徒は退学。

その後、それを気に入らないって別の従弟が淳クンを締めようとしたんだけど、今度は返り討ちに遭いそうになって武器を出したのね、そのなかに拳銃もあったって話なんだけど・・・」

「あいつ一切そんな事言ってないんだけど」

「隠してたか・・・言ってヤバかったかな」

「璃子から私に伝わるとは想定外だったんじゃない?帰ったらちょっと締めるわ」

「あはは、でもウチの爺ちゃんから慰謝料で1億貰ってるから、そっちの方がヤバい話かな」

「はぁ~!何それ!1億?絶対締める!」

「あはは、私の生徒だから程ほどにね。それに淳クン1ミリも悪くないから!」

「まぁ、本人詰めて事情聴いてからだな・・・」

「にしても、淳クンってイケメンだわ~、アンタの弟じゃなかったら私ちょっと考えちゃう所だった」

「我が弟ながら、かなりのハイレベルよね。でもアンタまだ彼氏いないの?」

「いないよ!寄って来ないし、来たって四葉っていったら逃げる奴多いし、四葉って聞いて寄ってくる奴にロクな奴いないし・・。ケイは?例の彼氏どうなってるのよ?」

「アレは・・・実は別れちゃって。大臣ってネームにビビったんじゃないかな」

「そんな奴別れて正解だよ!」

「だよね、だよね!さあ親友を慰めてよ!」

「慰めるって言っても、私もいないから一緒じゃん!惨めになるから止めよこの話。」

「あはは、ホントだよね」

「私達に寄ってくる男は大馬鹿者かよっぽど優秀か両極端だから仕方ないよね」

「どっちも問題あるから、一人の方がいいじゃん!」

「確かに!でも寂しいからやっぱり彼氏欲しい!」

「言うな!惨めになる!」

二人は本当に楽しそうに笑って話していた。

「でもさ弟だけど、こんな彼氏いたらなぁって思う事はあるよ。」

「だろうな。可愛いもん。意外と逞しくて頼り甲斐あるし」

「あいつ学校でモテてるの?」

「それがさ、全然モテないのよ。異星人って思われてるんじゃない?」

「普通にイケてるけどなぁ」

「きっと姉が怖いって思われてるのかもな・・・当たってるけど」

「やめろ!」

「淳クンってきっと年上キラーなんだよ。だから同年代にはモテないんだ」

「どうだろ?マザコンチックなとこはあるけど」

「私からみたら、シスコンも入ってるけどな」


女同士、しかも親友二人だけの会話だ。

時間などアッと言う間に過ぎて行く。

今日は慧も璃子もストレス解消と気分転換になった日だった。





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