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栄光なんて必要ない  作者: Izumi
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青天の霹靂

四葉重蔵の私邸で昼食をご馳走になっていた。

慧と璃子が久々に会ってランチをするという約束だったのだが、人気があって注目されている現職大臣が一般のお洒落なカフェで友達と楽しくランチ!なんて出来るはずがない。

警備の観点からも場所は著しく限定された。

璃子が母親に愚痴をこぼしていた所をたまたまいた重蔵の秘書に聞かれ、話が重蔵に伝わり・・・

「それならワシの家の中庭で会えば良かろう?矢部君も随分と褒めていたしな」

と、重蔵の邸宅の中庭に決まってしまった。

実際に矢部総理は海外からの客を重蔵宅の庭で接待し高評価を得ていた。

璃子は慧と色々と積る話もあったし女友達同士ならではの話や相談もあったので、なるべく身内とは関係ない場所で会いたかったのだが、一族のトップである重蔵にヘソを曲げられても後々面倒臭いので従う事にした。

ただ、話の途中に重蔵が現れて話題に入って来られると嫌だったので策を考えたのだ。

【淳を連れてくれば重蔵の興味は一気にそちらに向かうだろう】と考え、

慧に淳を連れて来るように頼んだ。

それを聞いた慧は璃子のアイディアを聞くと笑いながら名案!と受け入れて、淳も連れて来たのだった。



淳の家も元総理の邸宅だっただけあって相当に広いが重蔵の邸宅はもっと広かった。

中庭は森の様に木々が生い茂り、その中に屋根の付いたオープンコテージがあり丸いテーブルと椅子がパテーションで設置されている。

重蔵のイメージから純和風の日本庭園を想像していたのだが、ちょっとお洒落な国立公園の休憩所といった方が近いかもしれない。

「普段はね、ここでバーベキューとかしてるんだ」


璃子が笑いながら慧と璃子に説明している時にスーツの男が璃子の歩み寄り耳打ちした。

それを聞くと璃子は苦笑いし


「せっかちだなぁ・・・淳クン、お爺ちゃんが呼んでるって。」


すると慧が

「随分早いわね・・・もう少し後だと思ってた」

と爆笑しながら言った。


「なるほど・・・俺は対象から目を逸らすオトリって訳だったのか。おかしいと思ってたんだ、高校・大学時代の親友である慧姉と璃子先生が会うのに何故俺も?って」


淳は苦笑いしながら席を立ち、そのスーツの男に重蔵の所へ案内して貰える様にお願いした。

璃子と慧は淳に手を振りながら笑っていて、これからが本題!とでもいう様な雰囲気だった。

多分、他人には聞かれたくない二人だけの話がしたいだろうと淳は思った。

「慧姉に彼氏なんているのかな?」

ふと淳は思ったが、今は「重蔵が自分に何の話をしてくるのか」の方が気になった。


男は小さな森の反対側にある先程と同じ形のコテージに案内した。

重蔵の他にもう一人いる。髪の長い女の子だ。


「こんにちわ会長」

淳は重蔵の前に立つと笑顔で小さく頭を下げて挨拶した。

それを見た女の子はちょっと驚いていた。なぜ驚いたのか淳には分からなかった。

重蔵は手を挙げ、笑顔で頷き

「おう!元気じゃったか? まぁ座りなさい。ちょっと爺イの話し相手になってくれ」

淳は空いている椅子に腰かけ、視線を重蔵の隣に座っている女の子に向けた。


「紹介しよう、この子はワシの孫娘で璃子の従弟にあたる。」

女の子が立ち上がり、淳に軽く会釈しながら

三鷹結衣ミタカユイです。ユイと呼んで下さって結構です。」


淳も立ち上がり、会釈しながら応えた。

「国見淳です。それではボクの事もジュンと呼んで頂けますか?それにかしこまった言葉は苦手ですから、普通に話してください。」

結衣はクスっと笑い、

「わかった、淳君」

といって再び椅子に腰かけた。

「璃子はワシの長男の三女だが、結衣は長女の長女じゃ。

この前17歳になったんじゃが、淳君は15歳じゃったか?

今日は元々結衣と久々に会う予定だったのじゃが、淳クンもいた方が話が弾むんじゃないかと思ってな。」

重蔵が紹介してくれた

「お二人の話に・・・ボクが同席してよろしいのでしょうか?」

「話は由衣の進路についてじゃ。もう終わったし、それに爺ィより歳の近い方が話も弾むじゃろう?」

「お爺ちゃん、私と二人じゃ間が持たないってこと?」

「そうでは無くて、そっちの方が楽しいじゃろ?それにオマエにも淳クンを紹介しておこうと思ってな。噂の天才児じゃぞ」

重蔵の言葉に結衣が表情を変えて見直した。

「ああ・・・キミが飛び級でハーバートまで卒業したっていう日本人。

てっきり北欧系の方かと勘違いしてて、日本語が上手だなって驚いたんですよ」

それでさっき驚いていたのか・・・淳は納得した。

「ボクは日本人の父とスェーデン系アメリカ人の母を持つハーフです。外見は殆ど母方の遺伝だと思います。最初から日本人と見てくれる人なんていませんよ」

淳が苦笑いしながら説明した。


清潔感のある女性だ。

通った鼻筋、大きな目、なんとなく体育会系のイメージで気が強そうだ。

2歳年上と言っていたが・・・落ち着いた雰囲気もあるがそれ以上に元気そうな感じで不思議な印象だった。


「淳クン、キミは紛れもない天才だと思うが結衣もなかなかじゃぞ」

「そうなんですか?ちなみに高校はどこなんですか?」

「あ、私高校生じゃないのよ。成城院大学の一回生なの。キミと同じ飛び級よ」


淳は少し驚いた。重蔵はニコニコしている。

「それにしても・・・15歳でハーバート卒業なんていうからもっとガリ勉で頭でっかちのモヤシみたいな人間を想像してたんだけど全然違うのね。背も高いイケメンだし・・・凄いモテそう」

結衣は淳の頭からつま先まで見て値踏みしている様に見ながら言った。

「モテてませんよ。学校じゃ腫物とか珍獣扱いで友達なんて2人しかいないくらいです」

「なるほど、自分達と違う生き物って意味ね。高校生じゃ無理か・・・」

結衣はケラケラ笑った。


「丁度良い、二人の天才に聞いてみたい事があるのじゃが・・・」

重蔵の言葉に二人とも振り返った。


「この国の未来についてじゃ。二人とも理想の国家とはどんな国を思う?」


結衣は

「そうねぇ・・・イデオロギーで答えるなら中道右派ってところかな?

穏健保守って所でバランスをとって政治するのが良いんじゃない?

国家安全保障の面でも経済でも一番良いんじゃないかと思う」

「なるほど・・・」


重蔵が頷き淳に視線を移した

「中道政治には同意します。ですが国内・海外の情勢において中道の考えは揺れます。

現在の日本は中道左派をメディアが主導してる様に感じていて、海外では常識となっている事でも右翼と批判されていると思います。どの程度右側に傾けるのかのバランスが重要かと思います。」


「なるほど、まさかイデオロギーの面で答えて来るとは思ってなかったが矢部クンあたりが喜びそうな答えじゃな」

二人の答えに満足した様に重蔵は笑った。


「ちょっとトイレ行ってくるね」

結衣がいきなり立ち上がり席を外した。


「どうじゃ、結衣をどう思った?」

重蔵が声を小さくして淳に尋ねてきた。

「優秀な人なんでしょうね・・・あんな人が沢山いるんでしょうから四葉って家は凄い!」

淳は四葉という一族を本当に凄いと思った。

日本という国を支えている一族だ。こうでなくてはダメなのかも知れないが。


「そうじゃなくて! イイ女だろう?」

「えっ?そこですか?」

淳は意表を突かれた。イデオロギーの話から急に俗な話に飛ぶとは思ってなかったからだ。

「はぁ・・・素敵な人ですよね。チャーミングだしキュートだし」

やや苦笑いしながら答えた。

「結婚せんか?」

「はぁ?」

「結婚せんかと問うておる!」

「いや、ですからイキナリ過ぎて・・・」

「まあ確かにいきなりっじゃったが・・・でも可愛いし頭も優秀じゃろ?」

「そうですけど・・・」

「じゃ、よかろう!」

「いや、そうじゃなくて・・・」

「なんじゃ、好きな女でもおるのか?」

「いや、いません。ですが・・・」

「じゃ、よかろう!」

「ダメです。結婚なんて青天の霹靂です!考えた事も無かった・・・」

「じゃ、考えろ!」

「なぜ急にこんな話を・・・?」


一息おいて重蔵が話出した。













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