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栄光なんて必要ない  作者: Izumi
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仲良しクラブ

重蔵が言っていた仲良しクラブの件だが、考える内に嫌な気がしてきた。

矢部晋三という政界においての最高権力者と、四葉重蔵という財界の最高権力者がメンバーなのだ。

二人が共通で所属する会合など調べても出て来なかった。

つまり非公式のグループであり、公になっていないという事は完全な趣味の世界の娯楽なのか、知られたくない組織なのかのどちらかだ。

娯楽の範囲であれば適当に顔を出せば済むだろうが、違った場合はそれでは済まないという予感があった。

だが重蔵から1億円という小切手を受け取ってしまった以上、断る事は出来ない。

今更叛意するには大金過ぎる。

高校生に1億なんて何を考えているんだ、と思ったが

それが重蔵の中の常識かも知れなかったし、叛意は許さないというメッセージかも知れなかった。




仲良しクラブは、重蔵の別荘で行われる日曜の昼のランチ会に淳を招待した。

淳の為に直近の駅まで迎えの車を差し向けるというサービスだった。

門に入ると何台もの高級な大型セダンが停まっていたが外からは一切見えない造りになっている。

大きなドアの前に案内され、ドアが開くと重蔵と矢部が淳を待ち受けていた。

部屋には大きな円形のテーブルがあり、そこには6人の男女が座っていて入ってきた淳に視線を移した。

全員が淳の上から下までの容姿をチェックしている。

表情は穏やかだが視線は鋭い。


緊張している淳に矢部が笑顔で淳の肩を抱きながら

「いらっしゃい。ようこそ桜会へ!」

重蔵も笑顔で淳を見ていた。


矢部が淳を席に案内し、淳が座り隣に矢部も座ると重蔵が

「それでは始めよう」と言った。

若い女性が立ち上がり話始めた。


「それでは始めさせて頂きます。

本日は貴重なお時間を割きご足労頂きましてありがとうございます。

ゲストがいらっしゃっておりますので、まず紹介させて頂きます。

国見淳様です。

現在、成城院大学付属高校1年生で15歳ですが、すでに帝国大学とアメリカのハーバート大学を卒業されていらっしゃいます。量子コンピューター開発で有名な国見博士のご次男であり国見防衛大臣の実弟であります。

IQは420でアメリカでは神の子とも称される方です。

アメリカ人の母に遺伝で肌や髪は日本人として珍しい色をお持ちですが、日本生まれの日本育ちでれっきとした日本男児でございます。」

矢部と重蔵を除く人間が「おお」という声を上げ拍手が沸き起こった。


「国見様は初めてで御座いますので、本日出席されている方々を紹介させて頂きます。

まず当桜会の代表幹事である四葉グループ会長の四葉重蔵様、同じく代表幹事である現内閣総理大臣の矢部晋三様、愛知自動車グループ社長の豊田昭雄様、国際政治研究所黒猫総合研究所代表の黒崎瑠璃様、財務省主計局局長の前田啓二様、帝都新聞社社主の渡部恒夫様、帝国大学総長藤田輝夫様、そして私、自衛隊情報本部分析部部長の財前美津子の計9名で御座います。」


『日本の中枢かよ・・・』

淳は驚愕していた。


「それでは、改めて【桜会】についてご説明申し上げます。

当会は現状の日本ついてあらゆる分野から多くの意見を聴収し、将来の国家繁栄に繋げる意見をまとめ政府に陳情し、より良い未来に向けて提言および行動をする事を目的にして活動しております。」


『違う・・・これは政府の上に位置する組織だ』

『なぜオレが呼ばれた?』

淳はメンバーの内容に少しビビッていた。


「本日は将来主役になる世代からオブザーバーとして国見様においで願いました」


『仲良しクラブのメンバー紹介じゃなかったのかよ・・・』


淳は感じていた嫌な予感が少し当たってしまったかも、と思った。

だが、まだ始まったばかりで全容が見えない。

判断は出来なかった。


この後は順次運ばれて来る料理を食べながら雑談形式に近い形で意見のやり取りが始まった。

愛知自動車の豊田社長はカーボンニュートラル政策について雇用や産業促進の部分から批判と意見を述べ、総理である矢部は意見をメモし考慮すると答えていたし、

国際政治研究所の黒崎代表からは中国の台湾進攻のリスクが発言され、もし戦争が勃発した場合に各国の取るスタンス予想を述べた。

自衛隊情報部の財前が戦争勃発の可能性について私見を述べていて、

帝都新聞社長渡部も戦争について言及し四葉重蔵は戦争の際の日本の立場について意見を出していた。

これについては矢部から憲法改正を視野に入れた法整備を考慮していると説明があった。

矢部総理からは韓国外交について問題点は無いか?と提起があったが、将来変化はあるかも知れないが現状では致し方無いという意見を全員がした。

だが財前から、韓国軍部が独断で暴走し戦争になった場合北朝鮮が参戦し南朝鮮を支配するリスクはある事が報告された。その場合の核兵器に対する懸念は現在の数倍に膨れ上がる。

韓国との外交問題は前回、淳と食事の際にも出た話題だ。

表に出すポーズとは裏腹に矢部は慎重に事を運んでいると淳は思った。

財務省前田からはパンデミック状況下における国家のプライマリーバランスについて説明があり、ついでに現在巷で話題の現代貨幣理論(MMT)についても言及し、同時に問題点も説明された。


雑談というにはあまりにも高度で濃密な議論であり、淳の知識で議論に加わる事は出来なかった。

ただ・・・最後に将来の国の在り方について意見を求められた時は自分の意見を少しだけ述べる事ができた。

現在、世界の総てが抱えている収入格差からの分断危機についての話である。

資本主義の限界とも言われているこの問題に対して解決策を見出す事が世界に対する日本の貢献なのではないかと述べた。

出席者は頷き拍手をした。

淳はこのメンバーに認められた気がして嬉しかった。


会議は休憩無しで3時間以上の議論であったが、退屈する事なく時間の経過は速かった。

つまり楽しかったという事だ。

話が終わると、出席者がそれぞれ淳の所に来て改めて自己紹介してくれたが


財務省の前田を見れて淳は嬉しかった。

財務省主計局は日本のエリートの最高到達点であると認識していたからだ。

その主計局局長とはエリート中のエリートなのである。

どんな人間なのか常々見てみたかったのだ。


生産台数世界一となった愛知自動車工業の豊田に会えたのも感激した。

優しく穏やかで対する人間をアッと言う間に自分のファンにしてしまう様な雰囲気を持つ人間だった。経済における自動車セクターはGDPで世界6位。2017年の時点で1400万人の労働者を直接雇用している重要な産業だ。その業界の世界ナンバー1である人間と直接話せて素直に嬉しかった。


国際政治学者の黒崎はテレビでもよく見かけるが、思っていたよりもずっと美人だった。

気が強そうで意見をキッパリ言う印象だったが、話す時の物理的距離が近くとてもドキドキさせられた。


帝都新聞社主の渡部まで淳に握手を求めてきてくれた。

新聞社だけではなく、テレビ局・ラジオ局・プロ野球球団・プロサッカー球団等を持ち、戦後の日本文化と芸術に多大な貢献をし日本のフィクサーの一人だと言われる。

一介の新聞記者から大物政治家の信頼を得て昇進を重ねてトップまで駆け上がったジャパニーズドリームとも言うべき存在だ。


帝都大学総長、藤田の顔は覚えているが藤田も淳を覚えていた。

お互いに顔見知りであるが、親交は無い。

だがちょっぴり懐かしかった。


そして一番驚いたのは自衛隊情報本部の財前だ。

自衛隊の中で若い女性が幹部として抜擢される事は前例がない。

情報本部分析部は情報の集積・分析・調査・研究が任務であり情報本部の中で最も重要な機関である。総合防衛計画・統合警備計画を作成する為の情報もここを通過し、特別編成される部隊の運用に関する情報もこの部署で扱われる。

そんな部署の部長なのだ。

おそらく特別優秀なのだろうと思った。


そしてそれぞれ全員が桜会の入会を勧めてきた。

自分の何が良かったのかは分からないが、嬉しいのは間違いない。


最後に矢部と重蔵が来て、

「何も事前に説明しなかったが、気を悪くしてないかい?」

「こんな場所まで呼んで悪かったかのう・・・」


「いえ、楽しかったです。将来にたいする漠然とした不安が少し解消した様な気がします。

呼んで頂いてありがとうございました。」


重蔵が

「キミ、桜の会に入会せんか?出席した他のメンバーもキミに興味が湧いたようじゃし、好評じゃったよ」

矢部は

「キミがこれから取り入れていくであろう膨大な知識から形成される意見を桜会で述べて欲しい。

実は次世代の人間の為に意見交換しているが、肝心の次世代の人間が少ないのが問題なんだ」


即答は避けたが興味は湧いている。


「質問があります。この会は公表されていませんが、今後も公表しないんですか?」


すると矢部が

「会の性格上、公表しない方が良いと思っている。それぞれの業界人や自称知識人、ジャーナリスト、政治家等々、文句を付けたがる輩は山ほどいるからね」

矢部は重蔵と笑い合った。

「秘密結社のノリですか?」

矢部は腹を抱えて笑い、重蔵も大声で笑ったので周囲の人間は驚いて3人を振り返った。




淳はこの会に入会してみようと思い始めた。

もしかしたら将来自分のやりたい事が見つかるかも知れないと思ったからだ。


「入会する事で家族に迷惑は掛からないでしょうか?」

「絶対とは言い切れないが、世の中に絶対はあり得ない。

そういった事が無い様に全力でサポートするよ。私と四葉会長が約束しよう」

矢部が答えた。

政界と財界のトップ二人が保証してくれるなら少しは安心できる。



「実は会長に早速相談がありまして・・・」

「ん?なんだ?」

「頂いた1億円をどうしようか困っているのです」

「そうか・・・キミでも1億だと余すのか・・・。キミの実兄は金に対しての知識はかなりのモノだと思うが・・・。ワシより兄に相談するべきなんじゃないか?」

「家族に1億貰ったなんて言ったら大事件になりますよ」

「そうか・・・じゃワシに預けてみるか?悪い様にはせんぞ」

「いや、大金過ぎるのでお返ししようかと思います。」

「バカを言いなさんな。キミの将来に倒する投資だと思っておいてくれ。」



結局、小切手は重蔵の手に戻るが預かり一任するという形になった。

想定外の金だ。どうなってもなんとも思わない。



将来の事は予想が着かない。

ただ、理由は不明だが何となく明るく開けてきた様に感じた。




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