表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
栄光なんて必要ない  作者: Izumi
26/51

事件後

事件の翌日、淳は璃子に招かれ四葉邸にいた。

他の人間に絶対に聞かれたくない内容の話だ。一番安全な場所だと璃子が判断したのだ。

話は当然昨日の話になり、淳は経緯の説明を求められた。

説明と言っても、呼び出されいきなり殴り掛って来られた以外に説明のしようが無い。

相手に聞いた方が良い、と言ったが両方から話を聴いて事実関係を確かめてから処置を検討すると璃子は言った。

相手は多人数のうえナイフはおろか銃まで持っていたのだ。

「検討もクソも無い、犯罪なんだ」と淳は心の中で罵っていた。


「璃子先生。世界で一番銃を保持してる人間はどんな奴だと思いますか?」


「軍隊でしょ?つまり軍人。」


「残念。違います。世界の銃の60%を所持してるのは一般市民です。

37%が軍隊、残りが警察です。ちなみに報道で騒がれている反政府組織とか宗教的武装集団なんて0.1%程度・・・。

普通の人間が銃を持つと自分が強くなった気がして他人に対して暴力的になるのは先生にも想像つくと思います。

つまり暴力と無関係な一般市民なんて極少数という事です。」


「淳君は何が言いたいの?」


「日本でも反社会的勢力を始めとして銃は流通しています。

四葉の人間であるなら拳銃なんて望めばいくらでも手に入るでしょう。

ボクはそんな四葉の人間と敵対する立場になりたくないのです。

拳銃のような絶対的暴力を相手にしたく無いというより、ルールを無視して容易に拳銃を手に入れられる組織と対したくない気持ちの方が強い。」


璃子は黙っていた。

父親が社長を務めている四葉重工は政府公認の兵器製造会社だ。

戦闘機・洗車も設計、製造している。オートマティックの拳銃やマシンガンなんて簡単に造れる。

一般市民でも拳銃が手に入るのだから四葉の人間なら尚容易だという淳の理屈は理解できる。


淳は続けた。

「ボクの希望は、二度と四葉の人間からチョッカイを出されたくないという事です。

ですから判断を璃子先生にお任せすると言ったのです。

何とかして下さい。ボクに直接手を下した人間は怖くありませんが、その背後にある四葉グループが怖い。」


「四葉はグループとして個人を攻撃する事は無いわ」


「その保証は?四葉はこの国の根幹を支えている組織です。

話を無かった事にするなんて簡単だと思いますが。」


その時、コンコンとドアがノックされた。


「入るぞ」

現れたのは四葉重蔵だった。

淳はビックリしたが、璃子はもっと驚いていた。


「近くまできたので寄ってみたが、国見クンが来ていると聞いたのでな」

重蔵は穏やかな笑顔を浮かべて言った。


「会長、お邪魔しています。」


「今日はどうしたんじゃ?生徒を自宅に入れるという事は・・・また人に聞かれたくない話か?」

重蔵は冗談で言ったが、璃子の顔を見て冗談では済まない事だと察した。

璃子は立ち上がり、インターホンで重蔵の飲み物を頼んだ。

使用人がコーヒーを運んで、部屋を出て行ってから事の次第を説明した。


「なるほど・・・淳君には申し訳無い事をした。グループのトップとしてお詫びする。」


淳には重蔵が自分に頭を下げている姿に驚き、返って申し訳なくなってしまった。

日本最高とも言える権力者が高校生の自分に頭を下げているのだ。


「で、今後四葉が国見君に対して危害を加えないという保証なのだが・・・

ワシが保証するんで任せてもらえんか?」


そう言うと懐から携帯電話を取り出し、秘書に電話した。

「ワシだ。これからグループ会社総てのトップにメールで良いから連絡して欲しい事がある。

いいか?・・・」


重蔵は前回の四葉伸一の件を含めて今回の暴力事件の内容を電話で話し、今後同様の事があった場合は厳重な処罰を与えると伝えた。

20分後、璃子の携帯が鳴りメールを確認すると、重蔵が言った通りの内容が送られて来ていた。


「これでも、また何かあればワシは引退だな」

そう言ってから、もう一度淳に頭を下げて謝罪した。


淳は恐れおおくて、向かいあって頭を下げていた。


「璃子よ・・・前にオマエが言っていたアイディアを早く実行しろ。

生徒の管理を徹底しなければ、四葉の未来は暗くなる。」

重蔵が言うと、璃子は頷き早急に発表し実行すると答えた。



「ところで国見君、キミは矢部クンにレポートを出したんだって?」


重蔵の言葉に淳のガードが思わず上がった。


「レポートというか・・・お食事をご馳走になったのでお礼のつもりで書きました。

何故ご存じなんですか?」


「矢部君とは長い付き合いでね、仲が良いんだよ。

この前、昼飯を食った時に伝染病の話になってね。その時にキミのレポートに元気を貰ったと言っていたんだ。」


淳のレポートはコロナの感染対策について各国の状況と日本の状況を対比した物だった。



海外諸国に比べて日本の対策は劣っている物では無く、高レベルでは無いがマスコミが騒ぐ様に絶対に失敗例では無いという物だ。

コロナに対して医療崩壊が起きるとマスコミは煽り、確かに感染者は増えているが世界と比べるとさざ波レベルであり、病床数は世界一だ。

だがそれでも医療崩壊の可能性が大きくなっている。患者数は少なく病床数は多いのにだ。

原因は地域間格差であると淳は結論付けた。

感染者が急増している地域から他地域へ患者の搬送が行われていないからである。

当初は議論されていたが、油断からか現在ではその議論はされていない。

地方首長の判断ひとつなのだが、感染者を受け入れる側の住民が反対していた事が大きい。

ワクチンについても触れていて、接種率は比較的に低いが感染率が低かった為に製造側が感染者が多い方に優先して供給するのは当然なのだ。

世界世論も考慮すれば、日本っが強硬して確保に走らなかったのは賢明な判断だったと結論づけている。

感染度合を考慮し敢えて順位を付けるとすれば日本は平均の中に位置している。

世界84か国でワクチン確保数は71位と下位だが、感染率を加味すれば45位なのだ。

ワクチンの副作用を煽っておいて厚生省が消極的だと批判するマスコミにも原因はあるとも書いてある。

そして緊急事態宣言の効力についてだが、行動制限を一番行ってないのが日本でオックスフォード大学発表の資料をみると日本の行動制限は世界最低なのだ。

海外諸国は状況を見ながら制限レベルを引き下げてきたが、それでも日本よりもそうとう厳しい。

原因は平常時に憲法改正に議論が進まなかった事にあると淳は推測している。

その為に有事になってから対策が出来無いのだと。

通常の民主主義国家でも憲法において非常事態条項があり一般人の行動を強制的に制限できるのだが、日本の非常事態宣言では私権制限を本格的には出来ず強制は不可能なのだ。

更に経済面においてだが、失業率上昇は世界最小である。

財政支援の額と経済の落ち込みは反比例するが、経済支援の大きさは世界トップクラスであり経済の落ち込みの少なさも世界トップクラスなのだ。と・・・

最終的に、感染対策と経済の両立として考えた場合日本の政策は優等生の部類に入るのではないか、というのが淳のレポートの最終結論だった。



「矢部君は本当に喜んでいたよ。理解してくれる人間がいたと、しかも高校生が!だと」


「少しでも役に立てれば書いた甲斐がありました」

淳がニコリとして応えた。


「その時に出た話なんだが・・・ワシや矢部君が作っている仲良しクラブがあってな、そのメンバーにキミを紹介したいと矢部君が言い出してな・・・どうじゃろう、機会を作ってくれんかのう」


璃子がピクリと反応した。


淳は先程から重蔵に謝罪とはいえ頭を下げさせている。

その申し訳なさから重蔵の申し出を断る事は出来なかった。

淳は内心面倒に思ったが、仕方ないとも思った。


「承知しました。それでは会長の都合の良い時に」


「おお、ありがとう。矢部君も喜ぶぞ。日時は後でワシの秘書から連絡させるのでヨロシクな」




この日はこの話で終わった。

後日、淳の家に重蔵から直筆で謝罪の手紙が秘書によって届けられ、慰謝料として1億円の小切手が同封してあった。

1億円というのは、前回淳が口に出した金額だ。



慰謝料ってより口止め料だな・・・


学校でのトラブルは親や家族が心配するので伝えて無かった淳にとって、この小切手をどうするか悩みの種になった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ