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栄光なんて必要ない  作者: Izumi
24/51

勧誘?面接?

「きみ、我が党に入党しないか?」

こちらを探る目つきをしながら向かいに座った矢部が淳を見た。



現総理である矢部から秘書を通して食事に誘われたので淳が応じたのだが、

目的は淳という人材の確保だった。

「なぜボクなんかを?まだ高校生ですし」

淳は単純に理由を聞いた。


「あと2年もすればキミも有権者だろう。

という事は、キミと同学年の人間も有権者になる。

だが、若い世代は政治に関心がない。選挙の投票に関しても同じだ。

そこでキミを若い世代に対してのスポークスマンになって欲しいのだ。

キミは大臣を姉に持つせいか政治の事を知っている、周囲から尊敬される学歴もある。

まず入党し世間に名前を売り、将来の党幹部、そして総裁になって欲しいと言うのが私の望みだ」

矢部は一気に話し、手酌で盃に酒を注いだ。


「まあこの話は、今日はここまでにしておこう。ただ頭には入れておいてくれ。」

矢部はニヤリと笑い話題を変えた。


「キミから見て今の韓国や中国、アメリカをどう思う?」

「なぜ国際情勢を?」

「キミが得意そうな話題だからさ。私の様な老人が高校生と話せる話題なんて本来なら無いからな」

そう言って笑っている。淳も笑って

「韓国に関しては別に・・・大人が子供の言う事にイチイチ真剣に取り合う事はないでしょうから。

それに、おそらく数年以内に経済的にキツくなるはずですから、その対策は練っておいた方が良いだろうな、とは思います。」

「ほう・・・根拠は?」

「根拠なんて総理なら想像つきますよね?なんか面接されてるみたいです」

淳が苦笑いしながら答える。

「韓国の主要産業である半導体事業は数年後に台湾に変わります。

故に現在の韓国に対する貿易黒字の2兆円は見込めない。財務省ならもう試算しているはずです。

そして世界最悪の少子化です。我が国よりも速い速度で進行しています。」

淳の答えに矢部は満足した様に頷いた。

「中国は?」

「大きなマーケットですが常にリスクが大きい。

もし外交問題で揉め事が起きた場合、戦略的で組織的な不買運動が始まりますから。

ですが現在は軍事力においてアメリカと渡り合える力を持っています。

ただし、この状態も長くは続かないと思います。

理由は一帯一路政策による財政悪化、少子化、現状を維持できるのも最大で30年といった所でしょう」

「よく勉強しているな。この分ならアメリカの事を聞くまでもないようだ。」

「なんなんですか?」

「いや、やはりキミは欲しい人材だ。外務省と内閣調査室からの報告とほぼ一緒だ」

「内調がボクと同じ程度じゃマズいでしょう。JICAはどうなんですか?」

「JICAを知っているのか?」

「ジャイカ、ジェトロを日本版CIAにしようと総理は尽力されているのはアメリカでは有名ですよ」

「アメリカで?」

「ボクの大学時代の友人がミリオタ(ミリタリーオタク)で、色々と聞かされていたんですよ」


ジャイカの正式名称は独立行政法人国際協力機構といい、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に扱う機関だ。

ジェトロは日本貿易振興機構、日本企業の海外販路つくる機関だ。

矢部はこの2つの機関を統合し更に外務省国際情報統括官組織と防衛省情報本部を加えて日本版CIAを創設しようとしていた。


「そんなに有名なのか?」

「いえいえ、普通の人間は知らないと思いますよ。そいつはモサド候補生ですから」

「モサド?イスラエルが誇る世界最高の諜報機関か」

「中国やロシア、北朝鮮など隣接する国に核があると、その脅威に対して情報の重要さが大きくなるんだ、矢部は素晴らしいリーダーだ!と絶賛してましたよ」

矢部はそれを聞いて声を上げて笑った。



矢部が淳を欲しいと思い始めたのは、四葉龍造と会食した時だ。

「面白い子供がいる。手元に置いて育ててみたい」

という言葉を聞いてからだ。

頭が良いのは勿論だが発想が良い、というのが理由だった。

調べてみると防衛大臣に任命した国見慧の実弟であり 

飛び級で帝国大を12歳、更にハーバート大を15歳で卒業している。

日本始まって以来の天才児だ。

父親は世界的な理工博士、兄は日本屈指の実業家、母親はアメリカ人の元モデルという家族構成にも興味が湧いた。

慧に話を聴くと、次期主力戦闘機の基本構想概念のヒントを貰ったと言っていた。

CIAのエスパーも淳の事を知っていて、どんな分野でも将来の日本に小さくない影響を与える人間だ、と言っていた。

それらの話を聴いて、将来の日本の為に自分の持つ総ての知識と人脈を与え政治家として育ててみたいという欲求だった。


「キミは天才と言われているが、天才によくある知的欲求みたいなモノは無いのか?」

矢部が淳に聞いた。

「知りたい事は沢山あります。でも僕より優秀な人達が色々な分野の色々な事を解き明かしてくれるでしょう。ボクは飽きっぽい性格なので集中する時間があっても持続する事が苦手なのです。

しかも比較的短気ですので答えを求め何年も同じ事を求めて作業を継続する事が出来ないのです」

「なるほど・・・将来はどうするつもりだ?希望や夢はないのか?」

「いまの所、思い付きません。ですから高校生からやり直せと親に言われて学校に通っているのです」

矢部は笑った。淳苦笑いをしている。



やはり面接のようだ、と淳は感じていた。

そしてその意味を推測できなかった。

自分は何を探られているのだ。そして何が目的なのだ。


矢部が言う

「だが・・・やはり韓国はうるさく感じる。キミが総理ならどうする?」

「韓国経済を破綻させる事は簡単です。日本銀行が市場に出しているショートのドルを引っ込める。

そして韓国に対してドルを出さない。韓国のドルは総て日銀のドルですから、それを止めてしまえば韓国にある銀行の殆どがデフォルトに陥ります。日本が本気になった時の恐怖を植え付けてやるのです。中国がサードの件で韓国に制裁した様に。

ですが、それでは根本的な解決にはなりません。

韓国の戦後補償請求はすべて貧しさが原因です。財閥や大企業で働いている人間との収入格差も問題の原因の一つです。そして最大の原因が歴史認識です。政治利用されていますが、一番はこの教育の是正させる事でしょうね。

ですから、新設したデジタル庁と文科省が中心になり、韓国だけ歴史認識が世界と違うと訴える事が必要だと思います。

ただボクなら・・・韓国人が求めている心からの謝罪の印として、全員に日本国内のみで使用できるクーポン券をプレゼントし日本に招待します。全額が経済対策になりますし、来日しないで攻撃している韓国人に対して日本の魅力をアピールできます。少なくとも現在の反日勢力と呼ばれる人間の数は減ると思いますよ。要は飴と鞭です」

そう言って淳は笑った。


「ほう・・・」

矢部は四葉龍造の独特の発想をするという言葉を思い出していた。

確かにこんな発想をする官僚はいない。

官僚なら「それじゃキミが責任を持ってこの件を担当してくれ」でいいのだが、相手は民間人で高校生だ。民間人を登用するのはまだイケるとして高校生に任せるのは流石に世論の理解は得られないだろう。

矢部は益々自分の手元に置いておきたくなった。


「キミは政治に興味は無いのか?」

「姉が大臣なのでそれなりにはあります。でもそれ以上でも以下でもありません」

「そうか・・・キミが政治家になって我が党に入ってくれたら私も安心して引退できるのだがな」

「買い被り過ぎです。ボクにそんな器量はありませんよ。それより姉を宜しくお願い致します。」


「時間だ。今日はこれくらいにしておこう。だが、私は諦めないからな」

秘書にせかされ矢部は次の予定に向かった。

淳は矢部の第3秘書が車で家まで送った。


政治家ね・・・

淳が部屋に戻って不意に出た言葉だった。

一番面倒な仕事だろ?


15歳の高校生に勧誘なんて、人材がいないのかと思ってしまう。














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