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栄光なんて必要ない  作者: Izumi
23/51

テレビ

いつもの時間、夜10時頃に亮は帰宅する。

ダルそうにスーツの上着を出迎えた綾子に渡し、倒れ込む様にソファに座り込む事が多い。

今日は自分が筆頭株主で代表を務めているテレビ局の経営会議だったらしい。


亮がヤマトテレビの買収に成功したのは、プロ野球チームの買収に成功した後だった。

ネットの利用者を増やす目的で始めた計画の一貫である。

資本の小さなラジオ放送局がテレビ局の筆頭株主であるヤマト放送と大和テレビの関係の不自然さを発見した。会社四季報を読んでいる時に目に付いた物だったのだが、こんな物は誰でも見れば分かる。

何故誰も手を出さないのか不思議だったので周囲の意見を聞くと

「大手の会社だから財界から横槍が入り買収が失敗するのではないか」

という考えが圧倒的に多数だった。

なるほど・・・確かに自分の知らない財界という世界での関係性はあるかも知れない。

だがチャンスが目の前に転がっているのだ。リスク覚悟のチャレンジだった。

取引銀行を始めとしてあらゆる人間関係を使った。

ライバルである王志明にも頭を下げた。

何か月かの後、ラジオ局とテレビ局は亮に支配下になった。

像が鯨を飲み込んだ、と報道される程リスキーな賭けに勝ったのだ。

これによって亮はただのネット出身のチンピラではなくなり、時代の寵児・財界の革命児と呼ばれる様になった。

しかしその後、王志明も同様にテレビ旭日を買収しようとしたが失敗し、その後違う人間がTBCテレビを買収しようとしたがこれも失敗した。

現在でもメディア買収に成功したのは亮一人だけだ。


その大和テレビは長らく視聴率低迷を続けていたが、人事を一新し制作・編成の方法と価値観を変えた3か月後から好転していた。

減収のピークに人員を絞り込み少数精鋭にし給与を上げた。

視聴者の年齢層を重視し、見た目の数字よりも反響に拘った。

更に報道番組を徹底的にテコ入れし絶対に現場に行くというルールを作った。

内容も保守寄りになり、賛同と批判が極端にはなったが注目は大きくなった。

現在、トップの帝国テレビと平均視聴率を争える程度に回復している。

テレビ局の収入は広告収入であり、その電波の単価は視聴率が良ければ良いほど上がる。

視聴率は利益と直結する大事な評価なのだが、数字の拘りを捨て開き直りとも取れる英断を下した部分が亮らしい。



疲れてソファに沈む様に座っている亮の頭を、上着を掛けて戻ってきた綾子が

「今日も頑張ったんだね、お疲れさま。いつもありがとうね」

と、言いながら優しい笑みを浮かべ頭をポンポンした。

亮も笑顔になり、頭をポンポンした手を握って綾子を見上げた。


藤堂綾子はライバル局の看板アナウンサーだった。

世間の注目を集めていた買収真っ只中の亮に他局から単独インタビューを申込み、それを担当したアナウンサーが綾子だったのだ。

丸顔で目がパッチリとした童顔だが堂々とした体躯で30代以上の年齢層から圧倒的な人気があった。

帝国大法学部を優秀な成績で卒業しており、語学も堪能。

才色兼備という言葉を地で体現している様な女性だが、プライベートになると甘えん坊でメンヘラチックになる。

旭のお気に入りでミアからも自分の娘の様に扱われているし、慧も淳も心から信用し血縁の兄弟の様に付き合っている。

慧が防衛大臣に就任した時は歓喜で泣いていたし、淳が悪い事をした時は本気で怒る様子を国見の全員が見ているからであり、ミアが綾子に対して本気で怒るのも相手を想うが故の事だった。



「亮兄と綾姉はいつ入籍するの?」

いきなり淳がブッコんだ!

「え?どうしたのいきなり?なんで?」

綾子が笑いながら淳を見た。

「事あるごとに、パパとママが孫を見たいとか、慧姉がアイツら子供は絶対に可愛い!とか言うし、

結婚は紙に記入して届けるだけなんだから、この状況ならサッサと結婚すれば良いのに!って思って」

二人は顔を見合わせて苦笑いしている。

「まぁ、もう少し待て。今色々と調整してるから。」

「そうそう、結婚式は海外で身内だけでやるから。モルジブだよ!」

亮と綾子が取り繕う様に言い訳している。

淳は自分が何か悪い事を言った気になった。


「変な事言ったみたいでゴメン・・・」

「淳クン、なにも悪い事じゃないよ。時間作れない亮クンが悪いんだから!」

綾子に自分が悪者にされて亮は苦笑いしている。

「でもさ、オレ・・亮兄と綾姉が結婚してもこの家から出て行って欲しくないんだ。

だからもし出て行くなら結婚して欲しくない。」

この淳の言葉に綾子は涙目になりながら喜んだ。

「結婚しても変わらない。この家に住むつもりだから安心しろ。 つか、オレが金出して買った家だぞ!」

亮は笑った。


「そういえば、亮兄のテレビ局の関連で下請けの番組制作会社から学校を通して出演依頼が来たよ」

「は?淳に出演依頼?」

「うん、高校生が社会に関して不思議に思う事を質問したり、不満に思う事を陳情したりするんだって」

「へぇ・・・で、淳は出るのか?」

「うーん、出たら亮兄の役に立てる?」

「どちらでも・・・でも煽り方によっては盛り上がるかもな」

「璃子理事は学校の宣伝にもあるから出て欲しいんだって」

「そりゃそうだろうけど・・・」

すると綾子が亮の夜食を運んできた。お茶漬けだ。

「淳クンは、出たら何を言うの?」

「うーん・・・相手は政治家でしょ?憲法改正とか、台湾有事の際の対応とか、原発廃止後のエネルギー政策とか・・・まぁ無難な事言うかな・・・。」

二人とも声を出して笑い転げた。

「高校生が言う事じゃねーぞ」

「絶対、出演しない方が良いよー」

笑い転げている二人を見て、逆に出演したくなってきた。


「逆に、どんな事言えば高校生らしいんだよ」

すると綾子が

「いや、携帯代安くならないんですか?とか、大学も無償化して欲しい!とか」


これを聞いて、淳はやっぱり出演を断ろうと思った。

全然つまらなそうだったから。




だが、実は裏で既に璃子が出演を承諾してしまっていた。

翌日、璃子から半強制的に出演を知らされると、がっくりと気持ちが落ちてしまった。










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