四葉重蔵
四葉璃子は四葉重蔵の長男、四葉龍治の三女である。
父親はグループ内で御三家と呼ばれる四葉重工の社長であり、徹底的な帝王学を叩き込まれて育って来た。成城大学を卒業し龍造の命令で重工の平社員から社長に上り詰めた。
二男三女をもうけ既に全員が自立しており、四葉グループ内の会社に就職している。
兄弟で末っ子の璃子は幼い頃から祖父である龍造から可愛がられ、学生時代の成績が特に優秀だった事もあり、重蔵から将来を期待され一族も注目してきた。
子供の頃からの発想や発言・行動を見てきた重蔵はやはりグループ内で御三家と呼ばれる四葉物産の社長に就任させたいのだが一族内での反対意見があり、それを封じる実績を積ませる為に少子化が問題になっている教育産業に就かせた。
璃子は就任からまだ間も無く数字になる結果は出していないが、その教育方法は文科省官僚の中で注目されている。
大学から世間に大きく認められる人材を多数輩出すれば、世間の認知が上がり入学希望者は増加する。
大人数から見込みのある人間を絞り込み、選ばれた少数を相手に超高度な教育を施して、更に優秀な人材を輩出させ成城をブランド化する事がポイントだ。
ハイブランド化すれば単価が上がるのは必然で、その高騰化した単価を増収に繋げるのが本当の狙いだ。
「組織の利益を稼ぐのは何人いても上位5%の人間だ」
という重蔵の言葉から、その5%の人材を創るための学校だ!と璃子は親族が会した場所で述べていた。
淳が家を出てから、璃子は重蔵とリビングで向かい合って話をしていた。
「家に招くとは、よっぽどの生徒だな?」
重蔵が紅茶を飲みながら言った。
「さっき言った通り、彼は天才よ。13歳で帝国大法学部を卒業して15歳でハーバート迄卒業したわ。
日本ではアインシュタインかダ・ヴィンチの再来、アメリカでは神の子と報道されたわ」
「ほう・・・どこの国から来たんだ?」
「日本人の父親、スェーデン系アメリカ人の母親の間に産まれたハーフよ。国籍は日本で育ちも日本」
「そうなのか、あの出で立ちを見て日本人と思う人間はいないじゃろうな」
重蔵は大声で笑った。
「名前は何といったじゃろう?」
「クニミ君よ。国見淳」
「奇遇じゃな、さっき会っておった人間も国見という女じゃった」
「へぇ、そうなの。沢山ある苗字じゃないのにね」
「重工で次期戦闘機の話があって、龍治だけではチト不安な所があったからワシも同席したんじゃが、その時に来てた女が国見と言っていた」
「それ、防衛大臣の国見慧でしょ?私の高校からの友達よ」
「そうじゃったか!世間は狭いのぉ」
重蔵は又大声で笑った。どうやら機嫌が良いようだ。
「その大臣の弟よ、淳君は」
「ほう、優秀な血なのだな国見という家は」
「優秀よ。父親は量子コンピューターで有名な国見旭だし、慧と双子の兄は大学2年で起業して今や長者番付日本3位よ。」
「ほう!それは大したモンじゃな!だが長者番付に載るとは、まだまだ素人じゃな」
重蔵は日本の総資産に匹敵するような資産を持っている。だが決して表には出て来ない。
「それで、あの子はハーバートまで卒業してまた学生やっとるんじゃ?」
「家庭の教育方針らしいわ、なんでも今迄の生活で足りなかった物を補う為だって慧は言ってた」
「なんじゃ?その足りなかった物とは?」
「それは聞いてない。私としては超優秀な学生が入学してくるだけで充分だったもの」
それを聞いてまた重蔵が笑った。
「そうじゃな。で、今日は何故此処に呼んだ?」
「実は生徒間でトラブルがあって、彼はその被害者なの。
それを大々的に公にしてマスコミを集めて社会に対するイジメの問題提起にしたいとか言いい出したから取り止める様に説得したのよ。」
「それにしても、わざわざ私邸まで招く事もあるまい・・・」
「実は加害者は伸一君なの・・・龍太叔父さんの三男坊よ。
彼が言うには刑事事件の他に民事でも1億の損害賠償請求を出すって。
そうなったら、、マスコミはこの事を面白可笑しく取り上げるわ。絶対に学校の名前も公表するし、加害者が四葉の人間だとバレる・・・。
四葉は身内に甘いとか批判されたら、痛くない腹まで探られる事だってあるでしょ?」
「それはそうじゃが・・・伸一の身から出た錆、龍太の教育不足じゃ」
「そうなんだけど、學校の評価に直接影響はあるだろうし、四葉の家の事も何か探られそうで・・・」
「その程度じゃ四葉はビクともせんよ」
重蔵は笑ったが、今度は大声では無かった。
「まぁ思い留まってはくれたから良かったけど」
「ほう、何故じゃ?」
「伸一君は退学処分、慰謝料として100万。関わった生徒達は停学処分って条件を出したんだけど、慰謝料無しで決着したわ」
「1億欲しかったんじゃなかったのか?」
「1億はマスコミに取り上げさせる為の撒き餌よ。お金は要らないから、自分の将来に何かあったら助けてくれって言われたわ」
「ほう・・・・伸一は退学か・・・仕方無いのぉ。四葉という物を分かっておらん。
龍太が望んでおった四葉製薬に就職の話は無しじゃ・・・だがその生徒は若いのにナカナカじゃな」
「可愛い事言うなぁって思って、それは約束した」
「そうでは無いぞ。オマエは将来四葉の中核を担う人間じゃ。その人間に借りを作らせたのじゃ。
100万なぞ受け取るバカはおるまい。100億でも200億にでも化ける約束手形じゃ。」
「そうね、お爺ちゃんの言う通りだと思うわ。でも、私だってバカじゃない!彼がその手形を100億にするなら、私はそれを利用して1000億は稼いで見せるわ」
璃子がそう言って笑うと重蔵は嬉しそうに
「そうじゃ!それでこそ四葉の女王になる女の言葉よ!期待しておるぞ!」
大声で笑っている龍造は、来て良かったと思った。
その時重蔵の付き人が携帯電話を龍造に差し出した。
「重工の龍治社長からです。」
重蔵が電話を取り、
「どうした?何かあったか?」
「はい先程の次期戦闘機の件ですが、どうも構想が少し飛躍しているなと思いましたが、どうやら四葉大臣は、なんでも弟の意見を参考にしたとか・・・それで、果たしてこのまま進めて後々支障が出ないものかと・・・」
「あの構想が弟の意見を参考に?
馬鹿もの!次期戦闘機は開発だけで2兆円の国家プロジェクトじゃ!製造ともなれば2500億以上の売上になるんじゃぞ!もっと勉強せんか!」
「そうですよね・・・四葉大臣には私から話をします。」
「バカもの!オマエじゃ!オマエが勉強不足なのじゃ!あの構想は既に他国で開発し実戦配備の為にテスト段階まで進んでいる技術ばかりじゃ!更に四葉独自のアイディアと技術プロットを付け足さなければロッキードに太刀打ちできぬわ!他国の戦闘機開発を勉強し直せ!この馬鹿者が!」
重蔵は怒鳴って電話を付き人に突き返した。
『それにしても、あの構想をあの子も考えたとは・・・』
重蔵は四葉淳という子に興味を持った。
「ママ。今日はね四葉重蔵っていう人に会ったんだ。だから遅くなった。」
家に着くとリビングで、淳がミアに迎えを要らないと言った理由を説明していた。
それを聞いた綾子が
「四葉重蔵って、あの四葉グループの?」
「そう、ウチの学校って四葉グループだからさ」
「え?凄い! そんな偉い人が学校に来ちゃうんだ!凄い学校だね!」
本当は来てないが適当に話を合わせた。
トラブルを知られたく無かったからだ。
そこへ慧が帰って来た。
「慧さん、聞いて下さい。淳君が今日、四葉重蔵に会ったんですって。あの四葉重蔵ですよ」
少し興奮している綾子に慧はサラっと
「私も今日、四葉重工に行った時に会ったよ。」
淳は少し驚いた。滅多に人前に姿を見せない人間を一日で姉と自分が会ったという偶然の出来事に。
淳は慧に
「なんか紳士っぽい人だよね」
「そう?会議の席中だったから黙ってたけど、私は少しオッカネー爺だ、と思った。」
慧の言葉に淳は笑った。
璃子さんと話してる時は全然怖そうに見えなかったんだけどな・・・
淳は重蔵の顔を思い出していた。




