前へ目次 次へ 92/111 隔り世の対岸の道向こうの知らない人に見覚えがある 隔り世の対岸の道向こうの知らない人に見覚えがある 幽世(かくりよ)の対岸とは現世(うつしよ)、つまり此の世のことだ。道路を挟んだ暗いショーウィンドウに映った自分の姿を眺める情景。 認識に関わる《《経験》》とは、時に主観ではなく実存を意味する。つまり推測ではない、ということだが、その根拠は「見覚えがある」という程度の曖昧なものに過ぎない。鏡ならぬガラス窓に映る薄暈けた分身は、客観視した自己の不確かさを描いたもの。 .......