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左手で口端のひげを抜きながら三面鏡の扉を磨く
左手で口端のひげを抜きながら三面鏡の扉を磨く
三面鏡を通して映るのは、無精髭の生えた自分自身だ。
概念の核とは、分解不可能な根本概念を意味する。
ここでの三面鏡は、個別者の有機的肉体を光学的に複製するもので、詩的に言うなら、人格的な意志の分離を意味する。
人格を個の識別子とするのは現代においては不都合が生じやすいが、時代ごとの認識により核とされた対象は多層化し、法解釈も概ねそれに基づく。当時の法では、「人格を複製」することで「個が分裂」したと考えることは、それほど特殊な感覚ではない。
物理的に髭を抜くと当時に、無精髭の生えた穢れを切り離し、それを磨き清める。これは単純な内省という以上に、当時の感覚では、理性的な客観視の《《戯画化》》であった。




